[2018_12_20_03]柏崎刈羽原発でケーブル火災 非常用電源ケーブル焼損を深刻に捉えない東電は大問題 同様の接続ケーブル火災の可能性 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)(たんぽぽ舎2018年12月20日)
 
参照元
柏崎刈羽原発でケーブル火災 非常用電源ケーブル焼損を深刻に捉えない東電は大問題 同様の接続ケーブル火災の可能性 山崎久隆(たんぽぽ舎副代表)

 2018年11月1日、東電柏崎刈羽原発でケーブルが焼けた。非常用電源設備から7号機に6900ボルトの電力を送るためのもので被覆材が焼け、内部の導体が露出した状態だった。このケーブルは普段は通電しないが、設備試験のために9月から通電していたという。
 発火した場所は地下の洞道(トンネル)内。
 非常用の設備にありがちな、常用設備ではないため欠陥があっても気づきにくく、試験で動かしてみて損傷が見つかる例の一つである。
 これが本当に非常事態でケーブルが燃え、通電不能となっていたら如何に危険なことか、想像力の乏しい東電にも、さすがに分かるであろう。いや分かってもらわないとならない。しかしどうやらそうでもないらしい。
 このケーブル洞道火災について、柏崎市も問題視し、11月13日に「柏崎刈羽原子力発電所のケーブル火災に対する要請書(櫻井雅浩市長名)」を出し、16日には約1時間の説明会が市庁舎内で開かれ、市長、危機管理監、消防長、消防本部、署員、防災、原子力課員、東電側は設楽親所長らが出席した。
 しかし説明内容については十分なものではなく、疑問点の多い説明内容となっている。
 東電は12月1日に規制庁に対しても文書と口頭で説明を行っているが、それもまた十分な解明が出来ていない。
 ここでは、二つの説明会に提出された文書を元に、問題点に迫っていく。

1.ケーブル洞道火災の原因調査は難航中

 「今回の事象を引き起こした原因は何か。」これは市も規制庁も問うたことだ。
 しかし説明はなかった。原因と言うからには、何故発火したのか、何故他のケーブルも巻き込んだのか、といった点が重要だが、それについては「検証中」として結論を出していない。柏崎市には外形的な事実を述べている。
 それによれば、荒浜側の緊急用高圧電源盤から5,6,7号機に送られる電源ケーブルはそれぞれ3本づつあり、今回発火したのは7号機に向けて送電していたもの。
 そのうちの一本の接合部が何らかの原因で損傷し、抵抗値が高まったために温度が上がり発火、そのため隣接するもう一本のケーブルの被覆も燃やして2本の導体がむき出しになった。その過程で双方間がショートしたため発火したものと推定したという。

疑問点その1.何故ケーブルは損傷したのか、これは未だ調査中。
疑問点2.損傷して発熱しても発火は抑えられないのは何故か。
疑問点3.自身が加熱されていない隣接ケーブルの被覆が何故燃えたのか。
疑問点4.隣接ケーブルとの間でショートしていたというのであればアーク放電火災があったことも考えられるが、そんな高温で炎上するまで警報などはなかったのか。
 現場で調査したが損傷した接続部の現場観察等では原因の特定には至らず、詳細な調査が必要としてケーブルの損傷部の分解調査を行うために11月15日から切出しを行い19日から分解調査に着手している。
 なお、11月30日付けの規制庁に提出された文書では、もう少し進んで「接地線取り付け部で、本来接地線に流れるはずの充電電流が、接地線から半導電層に流れ、この半導電層が高抵抗であることから発熱に至ると推定。」と記述している。
 どうやらケーブルに取り付けていた銅製のアース線の接地不良から、電気を逃がせずケーブルが加熱、長時間にわたり加熱が続いて2本の難燃性ケーブルの被覆が炭化、長時間経過した後に発火したと考えているようだ。詳細説明は来年になるという。

2.同様の接続ケーブル火災の可能性

 同じようなケーブル接続構造を持つのは、6900V以上の高圧ケーブルでは発電所構内で合計95箇所あるという。
 高圧ケーブルは輸送時にケーブルドラムに巻き付け現地で敷設する。このときのケーブルドラムの巻き線長が1本のケーブル長になる。これを超えるケーブルを敷設する場合には接続部を設ける必要が出てくる。
 原発内部にある接合部は、今回のような使用済核燃料冷却用電源として使われているケーブル、バックアップ用各種ケーブルなどで71箇所あり、順次点検を行っているという。
 しかし過去に同様の火災が発生したのかとの柏崎市の問いについて、東電は回答していない。

3.洞道内の他のケーブルへの影響は

 同じ洞道内に敷設している送電用ケーブルは全て難燃性であるという。
 なお、送電用以外のケーブルは「所内通信用ケーブル」「屋外火災感知設備用ケーブル」「洞道内の照明設備、排水設備、換気設備、火災感知設備等のケーブル」である。
 これらのケーブルが難燃性であっても送電用ケーブルは発火した。その影響で他のケーブルが燃えることはないのだろうか。
 東電は「難燃性ケーブルの場合は、一度着火しても自己消火する特性を有しており、また周辺の火災からの延焼もしにくい特性を有しています。」とするが、「過電流により保護回路が動作し、遮断器を開放し事故電流が遮断されることで、ケーブル事故箇所の加熱を停止することができます。」とも説明している。
 しかし「今回の火災においても、過電流により保護回路が動作、遮断器を開放し、ケーブル事故箇所の加熱を停止した結果、自己消火しています。」とはいうが、燃えたケーブルは2本で、自己消火まで長時間かかっている。「事故電流を検出し遮断することにより、延焼し火災が広がっていくということはないと考えています。」は評価としては甘過ぎる。
 なお、柏崎市の質問「難燃性だからという説明は、大量の煙を発生させ、消防の出動を引き起こした今回の事象を鑑みるとき、安全をも安心をも担保するものではないと考えるが、いかがか。」については「現状では、ケーブルに難燃性のものを使用することで、火災の広がりを抑えるという対応をしております。
 しかし、ケーブルが「難燃性であるから、必ずしも火災が発生しない」というわけではありませんので、火災の発生を未然に防ぐため、今回の火災に対する原因究明と対策を実施していきます。」との答えに留まり、事故電流検出で自己消火できるとの現状認識との乖離が見られる。

4.通報体制

 毎度のことだが今回も通報遅れが発生している。
 第一報において行政機関と報道機関への一斉FAX通報に問題が生じ、一部に送られていなかった。「当番者が、火災発生時の対応フローの記載事項を見落としたことによって、新潟県、柏崎市、刈羽村及び発電所運転検査官他へのFAXが未送信となりました」という。
 これは7月にFAX機の宛先データ設定の更新作業を行った際に、誤って設定したことが原因というが、宛先設定後のテスト送信も行っていないうえ今回のFAXが適切に送信されたことを確認してさえいなかったという。 やはり東電の体質、姿勢が問われなければならない。

5.非常用電源のケーブル焼損を深刻に捉えない

 今回は大規模火災にはならなかったから、難燃性ケーブルが防火対策において有効性が確認されたと言えるだろうか。 洞道内のケーブルの配置を見ると、同じケーブル支持金具に5、6、7号機向けの6900ボルトの回線が並んで敷設されている。そのうちの7号機用三相線の内の2本が燃えた。5、6号機用ケーブルも巻き込んでいたら、単一故障で2基以上の原発が危険にさらされる想定外の事態になる。
 また、東電の「事故電流を検出し遮断することにより、延焼し火災が広がっていくということはないと考えています。」との柏崎市への回答には、目を疑う。
 このケーブルは非常用だから、遮断して火を消したことで非常用電源を喪失したことになる。それを「対策だ」と言われても困る。
 すなわち、非常用電源の喪失事故として東電が事故を深刻に捉えていないことを示している。
 これでは、柏崎刈羽原発が福島第一原発事故の教訓を生かして電源系統の強靱化を図ったなどとは主張できないことを指摘する。 (了)

 (2018.12.16発行「脱原発東電株主運動ニュース」  No279より了承を得て転載)

KEY_WORD:FUKU1_:KASHIWA_: