[2018_12_17_02]30年の原発比率20%目標 原発推進企業の半数が「達成できない」(ニュースソクラ2018年12月17日)
 
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30年の原発比率20%目標 原発推進企業の半数が「達成できない」


原発の未来を悲観 8割が「50年の基幹電源は再エネ」

 大手電力会社や重電機器メーカーなどで組織する「日本原子力産業協会」が「2050年の主力電源は何になっていると思うか」と会員企業に尋ねたところ、79%が「再生可能エネルギー」と答えたことがわかった。「2030年度に原発比率20〜22%の政府目標を達成できるか」との質問には50%が「達成できない」、40%が「わからない」と回答。「達成できる」と答えたのは10%と少数派で、原発推進の企業でも世界的に再エネの普及は止められず、原子力の将来には悲観的である現実が浮き彫りになった。
 政府は2018年7月、新しいエネルギー基本計画を閣議決定した。2014年4月に策定した前の計画から4年ぶりの改定。「エネルギーを巡る国内外の情勢変化を踏まえ、2030年、更に2050年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性を示すもの」(経済産業省)で、再生可能エネルギーを「主力電源化」と明記する一方、原発は「依存度は可能な限り低減していく」としつつ、エネルギー安定供給を支える「重要なベースロード(基幹)電源」と位置づけ、再生エネ22〜24%、原子力20〜22%などの電源構成は従来を踏襲した。
 今回のアンケートの回答で、2030年度の政府目標を「達成できない」とした理由としては、「原発の新設・リプレース(建て替え)が見えない」が48%、「再稼動が遅れている」が33%、「国民からの信頼回復が進まない」が16%だった。同協会の高橋明男理事長は 11月29日の記者会見で、「福島の原発事故から7年半が経過したが原発は9基しか動いていない。このスピードでは(主力電源や政府目標を達成するのは)厳しいと会員企業は思っているのだろう」と述べた。東京電力出身の高橋理事長は記者の質問に答える形で、大手電力ら原発推進企業の本音を代弁した形だ。
 政府目標を達成できない理由として最も多かった「原発の新設・リプレースが見えない」について、同協会は「政府の原子力政策が不透明」と指摘。国民世論に配慮して原発の新設・リプレースに慎重な安倍政権に対する不満を露にした。政府の目標(20〜22%)を達成するには、30基程度の原発の再稼動と、このうち3分の1程度の原発については運転開始から40年経過した時点で、さらに20年の運転期間の延長が必要と同協会は主張している。
 同協会は財界の重鎮である元経団連会長(新日鉄住金名誉会長)の今井敬氏が会長を務め、理事には三菱重工業、日立製作所、東芝エネルギーシステムズなど主要プラントメーカーが名を連ねる。調査は同協会が原子力燃料メーカーや大手ゼネコンなどを含む原発関連の会員企業365社に6〜7月に初めて行い、大手電力11社を含む254社から有効回答を得た。調査結果を見る限り、会員企業は原発推進企業としての将来的な願望はそれとして、コストダウンが進む再エネの普及には抗しきれないという現実を直視する必要は認識しているようだ。

岩城諒 (経済ジャーナリスト)
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