[2018_12_10_01]関電「原発ごみ」の中間貯蔵先が福井知事選も絡んで迷走する事情(ダイアモンドオンライン2018年12月10日)
 
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関電「原発ごみ」の中間貯蔵先が福井知事選も絡んで迷走する事情

 現状、関電を含め電力各社は使用済み核燃料を各原発施設内の使用済み核燃料プールに貯蔵している。政府の方針でこれらの使用済み燃料は青森県六ヶ所村の再処理工場で加工してリサイクルすることが決まっているが、まだ本格稼動していない。
 そのため、電力各社は、再処理工場が稼働するまで一時的に使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設を確保する必要がある。

● 「地元は受け入れない」と現職知事

 西日本の電力業界の雄である関西電力は“宿題”を終えずに年を越すことになりそうだ。
 関電は原子力発電所で発生する使用済み核燃料を保管する中間貯蔵施設について、「2018年中に具体的な候補地を示す」(岩根茂樹社長)と明言していた。この宿題の締め切りを守れそうにない状況にあるのだ。
 関電の原発が11基も立地する福井県の西川一誠知事は「原発は良いが、原発の“ごみ”までは地元は受け入れない」というスタンスで、中間貯蔵施設は県外で整備するよう求めていた。これは歴代知事の方針を踏襲している。
 西川氏の要請に応える形で、岩根社長は期限を自ら区切ったのには、理由があった。特に高浜原発はあと約9年で燃料プールが満杯になりそうなのだ。
 関電は発電コストの安い原発のおかげで販売電力量を伸ばしている。中間貯蔵施設を早く整備しなければごみを入れる場所がなくなり、稼ぎ頭である原発を動かせなくなってしまう。
 関電は、13年から関電エリアで中間貯蔵施設の立地候補地になってもらおうと、説明会を各地で延べ7000回以上行ってきた。しかし、中間貯蔵施設はいわば“迷惑施設”。受け入れを表明する自治体は現れなかった。
 そこで、東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電に救いを求めた。東電と原電の合弁会社であるリサイクル燃料貯蔵(RFS)は、再処理工場に近い青森県むつ市に中間貯蔵施設を建設中。関電はこの施設を利用させてもらえないかと感触を探ったのである。
 しかし、その動きが今年に入って一部報道で明らかになり、地元のむつ市長が激怒。記者会見を開いて、関電の使用済み燃料の受け入れ拒否を明言した。むつ市が受け入れを同意したのは、あくまで東電と原電の使用済み核燃料であって、そもそも苦し紛れにRFSに便乗しようとする関電の“ごみ”を受け入れる義理はないからだ。
 それでも電力業界関係者の多くは「関電の実質的な選択肢はむつしかない」と見る。RFSが整備に費やした期間は約20年。関電が今から新たな中間貯蔵施設を、高浜原発の使用済み燃料プールが満杯になる9年ほどで整備することはできないと考えるからだ。

● 対立候補は地元受け入れ容認姿勢

 実現性を加味した業界の共通認識をよそに、今になって新たな選択肢が浮上した。19年4月に行われる福井県知事選で有力候補者の一人である杉本達治氏は、県内に中間貯蔵施設を整備するのを容認する姿勢を見せているという。中間貯蔵施設を整備することで、新たな仕事や雇用が生まれ、福井県にお金が落ちるからだ。
 現職の西川氏は5期目を目指して出馬を表明している。自民党はこれまで西川氏を支援してきたが、今回は西川陣営と杉本陣営に分かれて戦う保守分裂選挙になる見通しだ。「西川氏への多選批判は根強く、ほぼ互角の勝負になる」と地元関係者も現状、予測をつけがたい戦いとなる。

● 候補地明言が支持陣営の表明に

 通常の選挙ならば、地元企業は現職を支援するのがセオリーであり、「年内に県外の候補地を示すことは西川氏を応援することにつながる」と電力業界関係者。しかし、杉本氏が当選すれば、県内に中間貯蔵施設を整備する選択肢が生まれる。
 年内に候補地を明らかにすることは、どちらの陣営につくかを表明するようなもの。落選する側についてしまえば、今後の原発運営に影響する。故に、関電は決めるに決められない状況といえる。
 もっとも、県外候補地にしたいむつ市との交渉も、県内整備を間に合わせるのもタフなもの。判断が遅れるほどに状況は厳しくなる。
 9年ぶりに前年を上回る販売電力量の獲得が見えていて、久方ぶりに“我が世の春”を謳歌している関電だが、19年春をのんびりと待っている場合ではない。
 (「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)

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