[2018_09_08_04]社説:北海道全停電 一極集中のもろさ露呈(京都新聞2018年9月8日)
 
参照元
社説:北海道全停電 一極集中のもろさ露呈

 北海道で起きた地震の影響で一時、道内全域約295万戸が停電する「ブラックアウト」に陥った。日本の電力会社で初めての重大事態だ。被災地の市民生活や経済活動に大きな影響が出ており、早期の完全復旧が求められる。
 停電の引き金になったのは道内電力需要の半分程度を賄っている苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所(厚真町)の緊急停止だ。この結果、他の発電所も連鎖して一斉にダウンした。
 道内最大とはいえ、たった1カ所の発電所の不具合がなぜ全停電につながったのか。
 家庭や工場に電力を供給する際には発電量と使用量を常に釣り合わせる必要がある。バランスが崩れると周波数が乱れ、周辺機器の故障を引き起こすからだ。
 苫東厚真の停止で管内の発電量が急減し、需給バランスが崩れた。このため稼働中の他の発電所も自動的に次々と停止した。
 本州から電気の融通を受ける送電網も機能しなかった。停電で変換装置を動かすための電気が調達できなかったのが原因だ。
 非常時には電力を供給する地域を絞り、需給を調整し、停電の範囲を最小限に抑えるといった改善策が必要ではないか。
 北海道電力は復旧に全力を尽くした上で、道内全域停電に至った経過を十分に検証すべきだ。
 今回の停電は、大規模発電所に頼る一極集中型の脆弱(ぜいじゃく)性という重い教訓を突き付けた。
 北海道電は発電所が一斉停止するケースを検討していなかったという。実効ある対策を求めたい。
 こうした事態を回避するために電源配置の見直しやバイパス整備、本州も含めた連携網や需給調整機能の強化も急務だ。
 東日本大震災後は原発停止の影響もあり、国内で火力発電への依存が高まっている。
 他の電力会社は自社管内での全域停電発生は想定できないとする。ただ、本州では電力融通も比較的容易とされるが、東西の周波数が異なり容量に限界もある。
 南海トラフを震源とする地震や津波の懸念される地域で大規模停電が起きないとは限らない。電力供給体制を含め停電リスクへの備えは十分か、あらゆる場面を想定し、対策を万全にする必要がある。
 今回の地震では医療機関が外来患者の受け入れをやめ、道路の信号機も止まった。インフラの中でも電気の重要性を改めて思い知らされた。都市圏ほど停電には弱い。電源の分散、連携強化が急がれるのは北海道だけではなかろう。

KEY_WORD:IBURIHIGASHI_: