[2018_08_30_01]トリチウム水「放出反対」 福島の漁業者ら多数 初の公聴会(東京新聞2018年8月30日)
 
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トリチウム水「放出反対」 福島の漁業者ら多数 初の公聴会

 東京電力福島第一原発で保管中の放射性物質トリチウムを含む水の処分方法を巡り、政府の有識者会議が国民の意見を聞く公聴会が三十日、福島県富岡町で開かれ、地元漁協の代表者や個人ら十四人が意見を述べた。政府が有望視する海洋放出について、県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は「漁業に壊滅的な打撃を与え、これまでの努力を奪う。風評被害を引き起こすのは必至だ」と訴え、計十三人が反対した。 
 福島第一原発で発生し続けている汚染水は、放射性セシウムやストロンチウムなどを除去後、さらに多核種除去設備(ALPS(アルプス))で浄化。ただし、水とほとんど性質が同じトリチウムは取り除けない。また、トリチウム以外の放射性物質も法令の排水基準を上回るレベルで残っている。
 トリチウム水は約九十二万トン(八月二十三日時点)を敷地内のタンクに保管中で、今後も年五万〜八万トンペースで増える見通し。一方、敷地の空きは少なく、タンク増設は百三十七万トン分が限界とされる。
 意見を述べた十四人のうち、海洋放出を容認したのは一人だけで、他の十三人は反対か慎重。「石油備蓄に用いる十万トン級の大型タンクで長期保管し、放射能が減るのを待つべきだ」などの意見が多かった。
 この日、政府担当者は、海洋放出や蒸発による大気放出など五つの処分方法に関し、二年前の別の有識者会議で費用や社会的影響を検討した結果を説明。法令の基準以下の濃度までトリチウム水を薄めて海に捨てる海洋放出は約三十四億円で、最もコストが低いとされた。
 原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志(とよし)委員長は「現実的な唯一の選択肢」として、政府と東電に早期決断を促している。
 公聴会は三十一日も福島県郡山市と東京・千代田区で開催。いずれもインターネットの動画中継がある。
 (宮尾幹成)

<トリチウム(三重水素)> 放射能を帯びた水素で、酸素と結合してトリチウム水になる。普通の水と分離するのは難しく、福島第一原発の汚染水を浄化している多核種除去設備「ALPS(アルプス)」でも取り除けない。放射線(ベータ線)は比較的弱く、人体に入っても大部分は排出される。放射能は12・3年で半減する。

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