[2018_08_17_01]地下に眠る1000兆トンのダイヤ 数千万年に一回の大噴火だけが地表に運ぶ(島村英紀2018年8月17日)
 
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地下に眠る1000兆トンのダイヤ 数千万年に一回の大噴火だけが地表に運ぶ

 ダイヤモンドは地表からの深さ150〜200キロのところで生まれたものだ。この深さは、人間の手の届くところではない。そこでの圧力は6万気圧、温度は2000℃もある。
 地球深部でしか出来ないダイヤが地表にどうやって運ばれたかはずっとナゾだった。
 ダイヤは元素から言えば炭素だけのものだ。それゆえ、ダイヤは燃えて灰になってしまう。もしゆっくり上がってくるのなら、その途中で燃えて、ただの灰になってしまったはずだからである。
 このため、少なくとも秒速1 〜 4メートルという速度で上がってきたときだけ、ダイヤとして見つかることになる。この速さは、火山が激しくマグマ噴火したときだけに得られる速さだ。
 しかも、ダイヤは古い大陸の「安定陸塊(あんていりくかい)」と呼ばれるところにしか見つかっていない。南アフリカ、ジンバブエ、カナダや米国、シベリア地方、東ヨーロッパなどだ。
 これら安定陸塊は、少なくとも5億年は安定している部分で、その「根」がマントルにまで食い込んでいるために、その後のプレート運動の影響をほとんど受けない。ちなみに日本列島には安定陸塊はないし、そもそも日本列島が出来たのは2000万年ほど前の新しい時代だから、ダイヤは出ない。
 この「根」は地球のマントルの中を地球深部から上がってくる「プリューム」(高温で流動性があるマントル物質)が作ったものだ。プリュームは近年、その存在が明らかになった。プリューム・テクトニクスは、地震や火山の原因を明らかにするプレート・テクトニクスでは解けない問題を解くことが出来る。次の世代の地球科学を担うといわれているものだ。
 つまり、ダイヤは数億年以前にあったプリュームによって作られ、数億年前に起きた、たまたまの噴火で地表に運ばれたものなのである。それゆえ、見つかる場所も量も限られているのだ。
 ダイヤは安定陸塊でもいちばん深い部分の「根」にある「かんらん岩」の中で出来ることが、いままでに分かっていた。このかんらん岩はマントルから来たプリュームが持ってきたものだ。
 この夏に発表された最近の研究で、地表近くまで運ばれなかったダイヤが地下にどのくらいあるのか明らかになった。地下の地震波構造を精密に調べて分かったことだ。
 それによれば、なんど1000兆トンものダイヤが地下に埋蔵されたままになっているという。いままで見つかって回収されたダイヤは年に20〜30トンほどだから、その50兆倍にもなる。ダイヤは珍しいものではなく、地球全体では比較的ありふれた鉱物だったのだ。
 人間が掘ったいちばん深い穴は12.3キロ。それも20年もかかった。だがこれでは、地下にあるダイヤの深さには到底、届かない。
 ダイヤを地表近くまで運んでくれた噴火は、短くても数千万年に1回しか起きない非常にまれな火山噴火だけだ。
 地球には豊富にあることがわかった。だが、私たちは指をくわえて見ているしかないのである。

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