[2018_08_06_04]<政府>原発賠償見直し先送り 保険金引き上げ難航で(毎日新聞2018年8月6日)
 
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<政府>原発賠償見直し先送り 保険金引き上げ難航で

 原発事故に備えた賠償制度の見直しで政府は6日、電力会社に保険加入などで用意を義務付けている賠償措置額(原発ごとに現行最大1200億円)について、引き上げを見送る方針を表明した。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、必要な賠償額の確保のため内閣府原子力委員会の専門部会で検討してきたが、電力会社、保険会社などと引き上げ手法の調整がつかず、議論を先送りした。
 現行の賠償制度の一部である政府補償の契約期限が来年末に切れるため、原子力損害賠償法を所管する文部科学省は今後、今の仕組みを踏襲する原賠法改正案を国会に提出する。事故への備えが不十分なまま原発の運転が続くことになる。
 この日は原子力委の部会で文科省が見送り方針を説明。部会でも「引き続き慎重な検討が必要」と見送りの報告書案がまとまった。
 現行法では、電力会社に上限なしで原発事故の賠償責任を負わせる「無限責任制」を規定。民間保険と政府補償契約で賠償措置額をカバーする。
 しかし福島事故では賠償支払額が8・3兆円まで膨らみ、大幅に不足。政府は措置額を超えた分は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じ肩代わりし、大手電力も協力して返済する仕組みを導入した。
 この経緯から、原子力政策の基本方針を議論する原子力委の部会で2015年5月、見直し議論を開始。委員の間では、現行の措置額は過少として、引き上げの意見で一致していた。
 だが引き上げると保険料や補償料が上がり、電気料金の値上げにつながる。このため電力会社は国費投入を求めたが、世論を気にした文科省などが消極的だった。民間保険会社も引き受け能力が限界だと難色を示し、検討が行き詰まった。
 部会の報告書案は、無限責任制については維持が妥当とし、措置額を超えた分の確保は、福島事故の賠償制度の仕組みを踏襲するとした。意見公募し、10月にも最終報告書を決める。【岡田英】

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