[2017_11_21_05]福島原発事故の被害者団体がGEに対して“500ミリオンドルの集団訴訟” ボストンの連邦裁に提訴(飯塚真紀子2017年11月21日)
 
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福島原発事故の被害者団体がGEに対して“500ミリオンドルの集団訴訟” ボストンの連邦裁に提訴

 11月17日、福島第一原発事故の被害を受けた住民や医師、企業などからなる被害者団体が、福島第一の原子炉を設計したジェネラル・エレクトリック社(GE)に対して、500ミリオンドル(約560億円)の集団訴訟を、ボストンの連邦裁判所に提訴した。被害者団体は、原発事故は、GEが行った原子炉の設計や建設場所、不十分な安全対策などに起因し、事故により莫大な被害を受けたとして、同社に賠償を求めている。

原発事故の原因は原子炉の設計にあると主張

 ボストンの地元紙によると、15万人以上の日本の市民や企業を代表しているという原告側は、訴状で、主に、以下のことを主張している。
 GEは、1960年代、原子力産業で優位に立つため、安全の専門家が懸念するような、“標準よりも非常に小さく、安全性の低い格納容器を搭載した品質の悪い原子炉”を提供したこと、
 GEは、原子炉が地震や津波などの自然災害のリスクに耐えられない可能性がある設計であると知りながら、その原子炉を福島第一に設置したこと、
 GEは、当初、原発を海抜115フィート地点に建設する予定にしていたが、コスト削減のため、海抜が低い位置に変更、太平洋により至近に建設したため、津波などで起きる洪水のリスクが大きく高まったこと、
 GEが設計した原子炉は、放射性物質を拡散させるメルトダウンを引き起こしたが、それは原子炉の設計と建設場所を考えれば、完全に予測できるはずだったこと、また、事故に際して起こりうる放射性物質の拡散を防ぐための安全対策を十分にしていなかったこと、
 GEは、現在まで、その行動と失敗が引き起こした莫大な経済的破壊に対して、全然弁償していないこと、などだ。

GEの主任技術者は“抗議の辞職”

 福島第一原発に設置されていたGE社設計の“マークI”と呼ばれる原子炉は、1975年、実験の結果、安全性に問題があることが検証されていた。コスト削減のため、通常より小さく設計された格納容器は、事故により想定以上の力が加えられた場合、内部にある圧力抑制プールが損傷する可能性があることが指摘されたのだ。そのため、当時、GEで主任技術者を務めていたデール・ブラインデンボウ氏は、“マークI”の運転を停止するよう上部に訴えたが、聞き入れられず、1976年、“抗議の辞職“をした。

原発事故の致命傷となったものは、“メイド・イン・アメリカ”

 “フェアウィンズ・アソシエイツ”のチーフエンジニアを務める原子炉専門家アーニー・ガンダーセン氏は、この提訴について、「フェアウィンズは、事故直後から、1965年〜1970年にGEが設計した原子炉が原発事故の原因だと主張してきました。サンノゼにあるGEとマンハッタンにあるGEのエンジニアリング・パートナーEBASCOが福島第一の1号機の設計を手掛けたのです。その設計は、2号機〜4号機にも適用されました。格納容器の設計、津波の高さの想定、原発の海抜の高さなど、福島第一原発事故の致命傷となったものは、“メイド・イン・アメリカ”なのです。ゆえに、GEはアメリカで訴えられるべきです。日本の損害賠償法は弱く、“アメリカの設計”の被害者となった日本の人々は、日本の裁判では、あまり多くの賠償金が得られないでしょうから」と被害者たちがアメリカで訴訟する正当性を主張。
 GE側は提訴に対し「日本政府と調査機関は、福島原発事故の原因は、原子炉の設計ではなく、津波と、それにより海水ポンプと全電力が喪失したことにあると結論を出した。訴えは、日本の原子力損害賠償法の下で解決されるべきだ」と回答している。
 訴訟の行方が注目される。

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