[2017_09_11_05]原発と核燃料サイクルは膨大な無駄遣い ほとんどが税金の投入と電力料金への上乗せでまかなわれています 原発と核燃料サイクルから撤退して膨大な無駄遣いをへらそう 木原壯林(若狭の原発を考える会) [下]3回連載(たんぽぽ舎2017年9月11日)
 
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原発と核燃料サイクルは膨大な無駄遣い ほとんどが税金の投入と電力料金への上乗せでまかなわれています 原発と核燃料サイクルから撤退して膨大な無駄遣いをへらそう 木原壯林(若狭の原発を考える会) [下]3回連載

(5)膨大な経費を使っても稼働できない六ヶ所再処理工場
 原発の使用済み燃料を再処理する日本原燃の「六ケ所再処理工場」(青森県)の建設費が、新規制基準への対応(重大事故時に指揮所となる緊急時対策所や冷却水をためる貯水槽の新設など)で約7500億円増えて約2兆9千億円になることが分かりました(7月3日)。当初の見込みの4倍近くに膨らみます。
 この再処理工場は1989年に事業を申請した当初は97年に完成する予定で、建設費は7600億円を見込んでいました。
 しかし、設備のトラブルが相次ぎ、完成は22回延期されています。建設費は2005年時点で2兆1930億円でした。
 維持管理費も増え、完成後40年間の総事業費は1.3兆円増の13.9兆円に上ります。この費用は電力各社から集められるますが、結果的に、電気料金として利用者が負担することになります。
 なお、使用済核燃料は高放射線ですから、再処理工程の多くは、流れ系を採用し、遠隔自動操作で運転されます。そのため、再処理工場には、約10,000基の主要機器があり、配管の長さは約1,300kmにも及びます(うち、ウラン、プルトニウム、死の灰が含まれる部分は約60km:継ぎ目の数は約26,000箇所)。
 高放射線に曝(さら)され、高温の高濃度硝酸が流れている容器や配管の腐蝕(とくに継ぎ目)、減肉(厚さが減ること:溶解槽で顕著)、金属疲労などは避け得ず、安全運転できる筈がありません。長い配管を持つプラントが地震に弱いことは容易にうなづけます。すでに、2兆2000億円以上投入していますが、再処理工場は完成からは程遠い。(使用済核燃料を再処理せず、燃料集合体をそのままキャスクに入れて、地中の施設に保管する「直接処分」の方が安全で、廃棄物量も少ないとする考え方もあり、アメリカはその方向ですが、10万年以上の保管を要し、これも問題山積です。)
 一方、MOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料加工事業費については、工場の詳細設計が固まったのに伴い、従来の約1兆2千億円から倍近い約2兆3千億円に跳ね上がることも判明しました。

(6)高レベル廃棄物の保管に要する膨大な経費
 使用済み核燃料を再処理して、ウランとプルトニウムを取り出すと、高レベル放射性廃棄物=核のごみが残ります。
 現在は、この核のごみはガラスの成分と混ぜて固化して「ガラス固化体」として保管することになっています。固化体の例は、直径約40cm、高さ約1.3m、重さ約490kgの円柱です。新しいものは、人が近づけば、数10秒で死亡する放射線を出しています。
 ガラス固化体の放射能は10万年を経ないと安全なレベルになりません。そこで、30〜50年ほど冷却しながら保管した後、地下300m以深の地層に埋める「地層処分」が考えられています。
 しかし、地震と火山の大国・日本で10万年も安全な地層を探すことは困難です。
 現時点までに国内の原発で使用された核燃料を全て再処理したとき、約2万6000本のガラス固化体が発生すると推定されています。
 日本は六ヶ所再処理工場が稼働していないため、イギリスやフランスに使用済み核燃料の再処理を委託し、出来たMOX燃料などは、これらの国から日本の各原発に運ばれて、一部は使用されました。
 一方、高レベル廃棄物・ガラス固化体は青森県六ヶ所村に「輸入」という形で引き取っています。ガラス固化体1体の輸入価格(核のごみのガラス固化費とも考えられる)は、1億2800万円といわれます。輸入された固化体は、日本原燃に保管されていますが、地上施設で管理するとすれば、1体あたり1億2300万円を要するといわれます。地層処分が可能となれば、管理費は1体3530万円になると推定されています。
 なお、2004年の推定でやや古いが、ガラス固化体処分場が決まったとき、六ヶ所再処理施設から処分地に固化体を海上輸送するとき、輸送費は1体あたり230万円と推定されています。
 以上の費用は、今後大きく膨らむ可能性があります。何れにしても、電力会社が電気料金で回収し、拠出します。

(7)膨大な経費を使って厄介者になった「もんじゅ」。
  廃炉が決定後も維持費がかかります。廃炉費も膨大。
「もんじゅ」での研究開発の事業費(予算)は、1兆589億円(1980年度−2017年度)で、建設費5886億円(1980年度〜1994年度;政府支出:4504億円、民間拠出:1382億円)、運転・維持費等4703億円(1989年度〜2016年度;政府支出:4703億円)です。この膨大な経費を使いながら、1994年の初臨界から22年で延べ200日強しか稼働していません。廃炉が決まった今でも、年間維持費が200億円もかかります。
 文科省は、「もんじゅ」の廃炉費を3750億円超と試算していますが、廃炉法も確定していない状況下での試算です。負の遺産、国民へのツケです。福島第一原発事故以降の経験は、原発は必要ないことを実証しました。原発と核燃料サイクルから撤退して、膨大な無駄遣いを軽減しよう!
 ([上]は9月6日、[中]は9月7日のメールマガジンに掲載しました)

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