[2017_09_05_02]「放射性物質数分で島に」離島住民に不安の声 玄海原発の防災訓練 船やヘリで避難(西日本新聞2017年9月5日)
 
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「放射性物質数分で島に」離島住民に不安の声 玄海原発の防災訓練 船やヘリで避難

 九州電力玄海原発(玄海町)の来年1月の再稼働を見据えた国と佐賀、長崎、福岡3県合同の原子力防災訓練は4日、2日間の日程を終えた。この日は原発近くの離島住民がヘリコプターと船舶で九州本土に移動する訓練や地震との複合災害を想定した退避訓練などを実施。それぞれの現場では課題も浮かび上がった。

■加唐島
 原発から北東に約8キロの唐津市鎮西町の加唐島(かからしま)では、住民144人のうち38人が訓練に参加。午後0時25分、防災行政無線で島外避難の指示が流れると、島唯一の放射線防護施設となっている加唐小中学校に集合し、市職員から内部被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤に見立てたあめ玉を受け取った。
 38人のうち、25人は2隻の旅客船で約20キロ離れた唐津東港に1時間かけて移動。残る13人は陸上自衛隊のヘリで2回に分けて唐津市浄水センター運動広場に運ばれた。
 船で避難した農業松下仁雄さん(80)は「島民は原発事故の不安を常に抱えている。有事の際はパニックになるだろう。屋内退避せず、漁船ですぐに逃げる人もいるのではないか」。区長の徳村敏勇樹さん(67)は「再稼働の前に避難方法や手順を島民全員で共有しておく必要がある」と話した。
 唐津東港に近接する市浄水センターには午後1時40分ごろ、住民6人を乗せた1回目のヘリが到着。6人は放射性物質を避けるためマスクや帽子を身に着けた姿で次々と降り立った。
 ヘリで避難した漁業宗豊視さん(68)は「もしも事故が起きれば放射性物質は南風に乗って数分で島に届く。避難するより家の中にいる方が安全では」と避難方法への不安を述べた。

■ヨウ素剤服用の説明 伊万里市
 伊万里市では、地震による民家の損壊と原子力災害が同時に発生した想定で訓練を実施した。このうち大川内公民館には住民15人が集合。バス1台と自家用車5台に分乗して武雄市の東川登公民館まで避難した。
 集まった住民には、安定ヨウ素剤の代わりにあめ玉が配られ、服用の説明があった。大川内町区長会の下平康則会長(69)は「町内の7割近くが高齢者。避難の際の介護について地区の防災会議でも詰めていきたい」と話した。伊万里市は玄海原発から30キロ圏内(UPZ圏内)にあたり、8月22日に防災無線の一部を開局。来年6月までに市内全181カ所への配備を進めている。

■除染とスクリーニング 多久市
 多久市陸上競技場では、玄海町から小城市三日月町に避難するバスや自家用車の除染と住民のスクリーニング検査訓練があった。
 予定時刻の午後0時20分ごろ、中型バス1台が到着。放射性物質の付着状況を調べるスクリーニング検査の結果、除染が必要とされるレベルではないとしてそのまま避難所へ向かった。10分ほど遅れて残る9台も次々と到着。最後尾の1台のみが除染訓練に臨んだ。
 バスに乗っていた小中一貫校「玄海みらい学園」の教職員の一人は汚染が認められたとして、ウエットティッシュで手を拭う簡易除染を受けた。児童約35人もスクリーニング検査を受け、6年生の堀口勇太君(11)は「初めて体験したけどたくさんの人がいて驚いた」と述べた。

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