[2017_05_18_01]「命を守る準備できていない」 原発事故避難に不安(京都新聞2017年5月18日)
 
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「命を守る準備できていない」 原発事故避難に不安

 関西電力高浜原発4号機が17日、1年3カ月ぶりに再稼働した。京都府の南丹市と京丹波町は一部が30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に入り、亀岡市は事故時に避難者を受け入れることになるが、避難の実効性や具体的な対応に不安を抱えたままだ。
 南丹市と京丹波町では、UPZに計約6800人が住む。原発事故が発生した場合、住民は集落ごとにバスに乗り、30キロ圏外地域に集団避難する。
 高浜原発から約45キロにある京丹波町高岡の橋本宙八さん(70)は、福島県いわき市からの移住者。東日本大震災発生の数時間後、福島第1原発から約25キロの自宅から一家で避難した。「事故後は大渋滞で人々はパニック状態だった。避難は簡単ではない」と振り返り、「福島事故の検証すらできていない中での再稼働はおかしい」と憤る。
 高浜原発の30キロ圏内で3歳と5歳の子どもを育てる南丹市美山町三埜のパート平知子さん(40)は、再稼働に「不安の度合いが上がった」と漏らす。安定ヨウ素剤の事前配布を市に働き掛けたが実現せず「避難計画はあるが、どう動けばいいのか住民は分からないと思う。命を守る準備ができていない」と訴える。
 南丹市と京丹波町は12年に原子力災害に備えた住民避難計画を策定したが、昨年9月の府総合防災訓練で課題が浮き彫りになった。南丹市美山町知井地区の住民が同市園部町の園部公園までバスで移動したが、放射性物質の検査や安定ヨウ素剤の配布などで乗り降りを余儀なくされ、高齢者には負担だった上、到着まで2時間半かかった。実際の事故時には交通渋滞も懸念されるという。
 京丹波町危機管理室は「避難経路や避難先などについて他の自治体と調整が必要な事項が多い」と打ち明ける。
 南丹市では一部市民が安定ヨウ素剤の事前配布を求めているが、市は対応を決めかねている。市総務部は「誤飲事故への補償など、国が責任を明確にしないと判断できない」と頭を悩ませる。
 亀岡市は、高浜原発から50〜70キロ圏に位置する。UPZには入っていないが、府の広域避難計画では原発事故時に綾部市から避難する約6300人の受け入れ先になっている。
 避難者は亀岡運動公園から民間バスで市内54カ所の指定避難所に振り分ける予定だが、府北部から避難してくる自家用車も集中するのは確実とみられる。市自治防災課は「計画通りスムーズに避難してもらえるか疑問」と不安を隠さない。

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