[2017_05_02_01]<福島山林火災>なおも延焼中 放射線対策で多難な消火作業(毎日新聞2017年5月2日)
 
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<福島山林火災>なおも延焼中 放射線対策で多難な消火作業

 東京電力福島第1原発事故に伴い「帰還困難区域」になっている福島県浪江町井手の十万山(448メートル)で起きた山林火災は2日も鎮火せず、発生から丸3日たっても延焼している。県や隣県、陸上自衛隊のヘリコプターが散水を続け、地上からも約350人が消火に当たったものの、山頂周辺の約20ヘクタールから白煙が上がり、火は西方に広がった。
 火災は4月29日夕に発生。いったん鎮圧状態になったが、風にあおられ、再び延焼を始めた。火災の長期化について、県は「乾燥や強風などが大きな要因だ」と説明。また、帰還困難区域という特殊な条件も、消火活動を阻んでいるという。
 町に帰還した町民が数%にとどまる浪江町では消防団員の多くが町外で暮らす。さらに帰還困難区域での活動も想定していないことなどから、消火活動への参加を見合わせた。県災害対策課の担当者は「山林でくすぶった火を絶やすには、上空からの散水だけでは不十分。消防団員の不在は痛手だ」と話す。
 一方、現場の消防士は、放射線対策のため通常装備に加え、防じんマスクや防護服を着用しており、体力を消耗しやすい。浪江町中心部の2日の最高気温は18.4度だった。マスクを外せず、給水もできないため、今後は熱中症も心配される。
 現場に通じる登山道も、原発事故後は整備されておらず、雑草などが生い茂って立ち入りが困難だったため、進入路の変更などを余儀なくされたという。
 県や双葉広域消防本部は3日も、自衛隊、県内各地の消防本部などの応援を得て、空と陸から消火活動にあたる。【尾崎修二、高井瞳、乾達】

 ◇空間線量や大気中の放射性物質の濃度などを県が調査

 福島県によると、2日夕までに十万山周辺の空間放射線量に目立った変化は確認されていない。ただ、消防隊員の安全や放射性物質の再飛散を不安視する声も少なくないため、県は現場近くの空間線量や大気中に含まれる放射性物質の濃度などを調べている。
 県放射線監視室の説明では、山頂から約1〜7キロに常設されている国のモニタリングポスト4カ所の測定値は、29日夕の火災発生後も大きな変化はない。昨春、伊達市や南相馬市で起きた山火事でも目立った変動はなかった。
 今回、県は空間線量が比較的高い「帰還困難区域」で火災が長期化したことを考慮し、風下にある同県大熊町と双葉町の2カ所で、大気中に浮遊するちりを採取。1日採取分の放射性セシウムは双葉で1立方メートル当たり0.54ミリベクレル、大熊では検出限界値未満で、昨年度に原発周辺で実施した調査の最大値(同1.2ミリベクレル)を超えなかった。
 現場に近い登山道入り口などでも空間線量を測定し、大きな動きがないことを確認した。放射線監視室の担当者は「山火事の影響がないか、より正確に把握したい」と説明しており、今後も測定を続けるほか、鎮火後も林野庁と協力して樹皮や落葉の調査などを実施する方針という。【尾崎修二】

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