[2017_04_17_03]社説 東電新首脳 「稼ぐ」が最優先では困る(新潟日報2017年4月17日)
 
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社説 東電新首脳 「稼ぐ」が最優先では困る

 東京電力ホールディングス(HD)の経営首脳が交代することになった。会長に日立製作所名誉会長の川村隆氏が、社長には東電エナジーパートナー社長の小早川智明氏が就く。就任は、6月下旬の定時株主総会後だ。
 3日の記者会見で川村氏は柏崎刈羽原発の再稼働に強い意欲を示し、福島第1原発事故に伴う廃炉や賠償の費用を確保するため経営改革が必要だと強調した。
 川村氏は経団連副会長を務めた経済界の重鎮だ。巨額赤字に陥った日立製作所の業績を回復させた実績を持ち、経営手腕を買われての就任である。
 だが東電の経営改革とは、単に収益確保の安定化に向けた「稼ぐ」態勢づくりを目指すことではないだろう。その前段として企業体質や企業風土の改革に取り組み、信頼回復の面で目に見える成果を出さねばならない。
 事故の発生直後に炉心溶融(メルトダウン)が起きていたにもかかわらず、東電は当時の社長の指示で否定し、2カ月もの間、事実を隠し続けていた。
 柏崎原発の免震重要棟についても想定する全ての基準地震動に耐えられないとの結果が分かっていたのに、3年近くも公表していなかった。
 未曾有の原発事故の後にもお粗末な対応が相次いだ東電には、事故に対する加害責任を負うべき企業でありながら、当事者の自覚があるのかと疑念を抱く人は少なくないはずだ。
 「トップが安全文化の意識を持っているか確認できないと(再稼働の)判断はできない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長もこう指摘している。
 新たに就任する経営陣が第一に力を尽くすべきは、社外の意識と乖離(かいり)した東電特有ともいえる「安全文化」の改革である。
 川村氏は経営改革に向けて社外取締役チームを設置する方針を打ち出し、他電力との事業再編の可能性などにも言及した。
 現状では経営面の全体的な主導権は川村氏が握り、柏崎原発再稼働を巡る地元首長らとの交渉に関しては小早川氏が担う態勢となりそうだ。しかし、川村氏も立地地域を訪れ、現場の空気に触れるよう望みたい。
 本県の米山隆一知事は原発の再稼働に慎重だ。条件付き容認の姿勢を示す柏崎市の桜井雅浩市長は免震重要棟の問題を受け、東電への不信感を募らせている。
 今回の首脳人事に合わせ、柏崎原発の再稼働を巡る地元対応の中核となってきた東電HDの役員も総入れ替えとなる。
 東電の社外から就任する川村氏が今後の経営の方向を見定める上でも、地元の代表である首長と直接対話し、問題点を把握することは不可欠なはずだ。
 川村氏は原発メーカーの出身である。東電との取引を有利に進める利益相反への懸念など会長就任に疑問の声も出ている。
 収益確保のための「再稼働ありき」にこだわるより、立地地域に真摯(しんし)に向き合う姿をまず見せてもらいたい。

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