[2017_03_27_02]<福島第1原発>周辺5市町村、避難計画なし 月末指示解除(毎日新聞2017年3月27日)
 
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<福島第1原発>周辺5市町村、避難計画なし 月末指示解除

 東京電力福島第1原発事故で避難指示が出された福島県の11市町村で今春までに、帰還困難区域を除くほとんどの地域の避難指示が解除されるが、5市町村では原子力災害が再びあった場合に備える避難計画を策定できていない。既に住民帰還が始まった田村市と葛尾(かつらお)村、3月末に避難指示が解除される飯舘(いいたて)村も含まれており、専門家は「溶融燃料の状態が不明な上、余震も多い」と、万が一の際に住民の安全を守るためには避難計画が必要だと指摘している。【関谷俊介】
 国の指針は、原発周辺自治体に避難計画の策定を求めている。原子炉の冷却機能喪失など「全面緊急事態」となった場合、5キロ圏は即避難。5〜30キロ圏は屋内退避を基本とし、毎時20マイクロシーベルトの空間放射線量を計測したら1週間以内に避難させ、毎時500マイクロシーベルトとなったら即避難としている。
 葛尾村は未策定の理由を「担当職員が2人しかおらず、専門知識もないうえ、他の業務が多くて手が回らない。国や県からの助言もない」と打ち明ける。飯舘村は職員不足に加え「住民の帰還状況をみないと策定が難しい」、田村市の担当者は「避難所の調整に時間がかかっている」と説明。解除時期が未定の双葉、大熊両町も策定していない。
 一方、避難指示が今春解除される浪江、富岡両町は「国の指針通りでは、住民の安全は守れない」と、全面緊急事態での全町民避難を原則とした避難計画を策定した。浪江町の馬場有(たもつ)町長は「住民には『屋内にいれば大丈夫』という考えはないと思う」と指摘。内閣府原子力被災者生活支援チームも「避難指示解除の要件にはないが、防災体制は整えておくべきだ」と話す。
 第1原発は全基で廃炉に向けた作業が行われ、稼働する原発とは違う。ただ、溶融燃料の取り出し計画は難航が予想され、2号機内部では空間放射線量が最大毎時650シーベルトと推定されている。復興庁の田村市住民意向調査では、同市以外に住みたいと答えた人に理由を尋ねたところ「原発の廃炉、管理などに不安があるから」が61.5%に達した。原子力防災に詳しい東京女子大の広瀬弘忠名誉教授は「溶融燃料の状態が分からず福島では余震も多い。避難指示を解除しながら計画が整っていないのは問題だ」と指摘する。

 【ことば】原子力防災体制
 原子力規制委員会は福島第1原発事故を教訓に2012年、原子力災害対策指針を策定。従来は8〜10キロ圏だった防災重点区域を30キロ圏に拡大した。全国の原発周辺自治体は指針に基づき、具体的な避難の手順やルートなどを定めた避難計画を策定するよう求められている。

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