[2017_02_01_01]関西電力高浜原発でのクレーン倒壊事故が示すもの――支配する安全無視の体質、その中で原発を再稼働する恐怖の危険性 市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡辺悦司(いちろうちゃんのブログ2017年2月1日)
 
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関西電力高浜原発でのクレーン倒壊事故が示すもの――支配する安全無視の体質、その中で原発を再稼働する恐怖の危険性 市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡辺悦司

 2017年1月20日21時50分頃、関西電力高浜原子力発電所において工事用大型クレーンが倒壊する事故があった。クレーンは2号機の核燃料プール建屋の上に倒れ、状況によっては大事故につながりかねない深刻なものであり、関電の安全管理体制の全般的な危機的状況、安全意識の欠如、安全規律の紊乱を集中的に示す象徴的な出来事となった。以下、この事故を分析し、それが示す原発再稼働の危険性を再度検証しよう。

目次
1.事故の経緯
2.関電の記者会見と労働安全衛生法クレーン等安全規則違反の疑い
3.関電によるクレーンマニュアル違反と虚偽主張が明らかに
4.事故に現れた関電の安全無視の体質こそが問題
5.クレーンの安全マニュアルさえ遵守しない会社が原発を再稼働する恐怖

1.事故の経緯

 関電は、翌1月21日、事故の事実関係の簡単な発表(プレスリリース「高浜発電所構内でのクレーンブームの損傷について」)注1を行っただけで、事故の詳しい経緯や状況、原因などの発表はまだない(2月1日現在)。各種報道など注2をまとめると、事故の経緯は概ね以下の通りと思われる。
 高浜原発1号機および2号機は、昨年(2016年)6月、原子力規制委員会から40年を超える運転期間延長を認められ、関西電力は運転延長のための「安全」対策の一環として、格納容器の補強工事を行っていた。工事は、大手ゼネコンの大成建設を元請けに、下請け業者が4台の移動式大型クレーンを使って行われていた。当該のクレーンは、長さが113メートル、高さ105メートル、総重量270トンあった。
 1月20日午後、福井県地方には強風が吹いており、16時42分、福井地方気象台は福井県下に暴風警報を発表した。警報は、福井県庁の危機対策・防災課により、メールやツイッターその他で広く拡散された注3。関電や工事業者も、暴風警報発令を同日の作業終了時以前に当然認識していたはずである。関電発表も事故当時暴風警報が発表されていた事実を認めている注4。高浜原発構内に2箇所ある風力計でも秒速14〜15メートルの風を記録していた。気象台の暴風警報注5は、陸上での平均風速20メートル以上、最大瞬間風速は35メートルと予測されていた。実際、高浜原発に近い小浜市での観測では、事故発生とほぼ同じ時刻の21時50分、秒速25.8メートルの最大瞬間風速を観測している。クレーンの高度(約100メートル)では、さらに風速が大きかった可能性が高い。
 1月20日夕刻(時刻未公表)、作業終了時の処理として、「日中の作業を終えたクレーンは通常、アーム先端から垂らしたワイヤに重りを付けて接地させ安定した状態にする」ので、この日も、5トンのおもりを垂らした「通常」通りの処置を行って作業を終了した。「強風で倒れる恐れがある場合や年末年始などの長期休業時は、アームを折りたたんだり一部解体したりして、より安全な策を取る」が、このような強風時対応はとらなかった(高島昌和・高浜発電所運営統括長らの記者会見報道、中日新聞)。
 1月20日21時49分、「構内で大きな音がしたため、現場を点検したところ、1、2号機格納容器上部遮蔽設置工事用の大型クレーン4台のうち1台のクレーンブームが2号機原子炉補助建屋ならびに燃料取扱建屋へもたれかかっていることを確認した」(関電発表)。クレーンは、風に煽られる形で仰向けに倒れており、台車の一方が少し浮き上がっていた(図と写真)。関電によれば、原子炉補助建屋には原子炉の冷却装置が格納されており、燃料取扱建屋には259体の核燃料がプールに保管されていた。「2号機原子炉補助建屋ならびに燃料取扱建屋の屋根が一部変形していること」が確認されたという。破損の詳細は未公表である。
 事故発生の後(時刻未公表)、「事故を受け、別の3台のクレーンは二つ折りの状態に戻した。二つ折りにすると『先端が接地するのでより安全』(関電担当者)なのだという」(中日新聞)。折りたたまれた残りの3台のクレーンは倒壊を免れた(写真)。つまり、やろうと思えば、クレーンの倒壊を予防する手段はあったし、容易に実行可能であった。中日新4聞は「それなら、なぜ最初からこの安全策を取らなかったのか」と問うているが、全くその通りである。

2.関電の記者会見と労働安全衛生法クレーン等安全規則違反の疑い

 関電担当者は、事故翌日1月21日の記者会見で、強風対応をとらなかった理由として「元請けの大成建設やクレーンメーカーの調査で、この重り(5トン)で毎秒42メートルの風に耐えられると評価されていた」からであると説明した。ここには少なくとも5つの問題がある。
 第1に、「(関電、元請けの大成建設、下請け業者などのうち)だれが、アームを折りたたむという転倒防止策を講じないという決定をしたのか」という点である。記者会見で記者側がこの質問すると、関電担当者は「分からない」として回答しなかった(中日新聞、福井新聞)。つまり、関電は、この措置の決定者が関電自身であった可能性を否定しなかった。工事を急ぐために、関電側が要請して、翌日の作業にすぐに取りかかれるよう、本来は必要であった転倒防止策を取らないように促したのではないかという記者側の疑念に対し、関電はこれを否定しなかったということになる。
 第2に、このような重り(アンカウェイト)をつるす措置は、あくまでも、強風時にアームを「地上に降ろすころができないとき」の「応急処置」(日本クレーン協会)である注6。しかも、日本クレーン協会は、強風時の注意点として、「関係者は,この位の風では大丈夫と安易に判断せず,強風が予想されたら早めの対策を講じる必要がある」と強調している。5中日新聞が示唆しているように、容易にアームを「降ろすことができた」のにそれを行わなかったことは、職務上の怠慢だと言わざるをえない。
 第3に、関電は、「詳しく解析しないと原因は特定できない」として、クレーン倒壊の原因が強風ではなく、他にあったのではないかと示唆している。だが、関電は他の原因とされるものを特定しておらす、無責任な対応といわれても仕方がない。考えられるのは、台車の基礎部分の地盤沈下であるが、公表された写真からは、不等沈下が起こっている事実は確認できない。もし、他に原因があったか、あるいは強風との複合原因であったとしても、それも含めて関電側の過失によるものであることは明らかである。
 第4に、いま仮に関電の上の説明の通りだとしても、平均風速20メートル以上・瞬間最大風速35メートルを予測する暴風警報が発表されている状況下で、瞬間最大風速で42メートル(平均風速に換算すれば25〜28メートル程度注7)を超える風が吹く可能性が「ない」という判断を事前に一方的に下すことは、非常識であるだけでなく、工事の安全性の完全な無視以外の何物でもない。しかも、クレーンの高度は約100メートルもあり、そのような上空についてまで「ない」と予め断定することは、安全意識の完全な欠如であるというほかない。付言すれば、通常大型クレーンの先端付近には風速計が装備されているはずだが、関電はその事実も、そこでの測定データも公表していない。
 第5に、重要なことは、関電の対応が法令に違反する疑いが強いことである。クレーンの「強風時における転倒防止」措置は、労働安全衛生法に基づいて制定された厚生労働省令「クレーン等安全規則」において義務づけられている(74条の4)注8。その際の「強風時」とは「10分間の平均風速が秒速10メートル以上の風」である(日本クレーン協会ホームページ)注6。決して「42メートル」ではない。

 以上で十分なとおり、「(強風時対応をとらなかったのは、通常対応でも)風速42メートルの強風に耐えられるという評価基準」に従ったからであるという関電の主張は、何の正当な根拠もなく、まったく成り立たない。
 暴風警報が発令され、原発構内で秒速14〜15メートルの風が観測されていたにもかかわらず、本来平均10メートル以上の風の際に義務づけられた転倒防止措置を怠ったことは、労働安全衛生法のクレーン等安全規則にたいする公然たる違反行為である。労働基準監督局がすぐに調査に入ったことは当然である。

3.関電によるクレーンマニュアル違反と虚偽主張が明らかに

 1月26日から27日に、状況は大きく変化した。関電は、1月21日の記者会見では、関電および工事業者がクレーンマニュアルの「基準」を遵守して強風対応を取らなかったとを主張していた。だが、これが実際には露骨な嘘であり虚偽主張であったことが朝日新聞や時事通信によって報道された注9からである。
 朝日新聞によれば、「大型クレーンが倒壊して建屋2棟の一部が損壊した事故で、(関電側が)クレーンメーカーのマニュアルに従った対策を取っていなかったことが(1月)26日わかった」「マニュアルには、風速が30メートルを超えると予想される場合はアームを7地上に下ろし、10メートル超ではバランスを取るため、重心があるクレーンの後部を風上に向けることが記載されている」が「いずれも怠っていた」という。
 時事通信は、朝日新聞の報道の翌日、「メーカーのマニュアルに記載された強風時の対策と、実際に関電側が取った措置が異なっていたことが(1月)27日、関係者への取材で分かった」と、朝日新聞と同じ内容を伝えた。
 当日、原発構内で現実に14〜15メートルの強風が記録され、気象台は瞬間最大風速で35メートルを予測していたのであるから、クレーンメーカーのマニュアルに従えば、アームを地上に降ろしておく措置が安全上必須であったということになる。
 関電は、1月21日の記者会見において、このマニュアルに言及し、それを根拠にして、強風対応をとらなくても「風速42メートルまでは耐えられる」と主張していたのである。関電がクレーンメーカのマニュアルの内容を知らなかったはずはない。だから、関電は、クレーンメーカーのマニュアルに明記された指示――@風速10メートル超[時事通信では10〜16メートル]の場合クレーン後部を風上にする、A風速30メートル超えると予想される場合事前にクレーンアームを地上に降ろす――に、「意図的に」従わなかったというほかない。
 マニュアルは法令に規定された安全規則を叙述したものである。つまり、上に検討したように、関電がクレーンの安全を定めた法令に「故意に」違反し、業務上の義務であった強風対応を「意図的に」怠った事実は、この報道からも裏付けられる。
 しかも、関電は、強風対応を取らなかったことがマニュアルに違反している事実を知っていたのに、事故翌日1月21日の記者会見では、それがマニュアルの「基準に従った」ためであると説明して、まったくの嘘である虚偽の主張を報道機関に対して行い、公衆を欺こうとしていたことになる。
 このような関電の行為は、極めて悪質であり、犯罪的であるといって過言ではない。

4.事故に現れた関電の安全無視の体質こそが問題

 問題を各部署の特定の諸個人やその判断だけに矮小化してはならない。問題は、労働安全や安全性一般について軽視・無視する関電の組織体質や慣行、安全管理の体制にある。労基局や原子力規制委員会など規制当局には、客観的に以下のことが求められている。
 1.関電に対して、今回違反が明らかになった労働安全衛生法に関するコンプライアンス(法令遵守)体制の厳しい総点検を実施すること。
 2.今回の事故の直接の責任は、もちろんクレーンを持ち込んで作業していた大成建設と下請け業者にあり、これら原発関連工事の請負業者の安全管理に対しても厳しい総点検を行うこと。
 3.今回の事故や違反行為は、原発の再稼働準備のための工事作業中に起こったものであり、再稼働準備工事の安全性について緊急の総点検を行うこと。
 4.関電の行為は極めて悪質であり、刑事罰に処すること。
 5.原子力規制委員会は、もんじゅの運転主体として日本原子力研究開発機構を不適格としたが、関電も、同じように、原発を再稼働し運転するための組織的な適合性を持たないものとして不適格と決定すること。
 だが、原子力規制委員会は、田中委員長が関電を「口頭注意」としただけで、それ以上の追及を行わない姿勢を示している注10。今までに承認した再稼働の許認可を見直すなど実質的な処分は、提起も検討もされていない。厳格に検査をするならば、すべての電力会社が不適格とされるであろうし、再稼働などできないからだろうが、これでは規制当局が自ら進んで安全規範への違反を容認し、結果として、事態が第2第3の福島原発事故に向かって進むのを促しているようなものである。
 もちろん、今回の事故など福島原発事故とは比較にならないほど「小さな」ものであると感じられるであろう。そのような事故をどうして大きく取り上げるのかと疑問に思うかもしれない。だが、一つ一つは「小さな」ように見えるトラブルや事故が積み重なって、その中から重大事故が生じるのであり、しかも「小さな」事故はそれ自体が電力会社の安全に対する姿勢や慣行や体質を端的に示すのである。「小さな」事故やトラブルの段階でどう対応するかが、重大事故を防ぐ上で決定的に重要なのである。
 しかも、原発の場合には、いったん重大事故が起これば、原爆の数百・数千発分の大量の放射能が環境中に放出され、周辺の地域住民のみならず国民全体の生活や健康や生命が脅かされ、取り返しがつかない被害が引き起こされる。そもそも当事者にまともな安全意識や責任感があるなら、本質的に自滅的な危険性を持つ危険な原発は最初から稼働できないはずである。そのような原発を住民や国民の犠牲を承知で大規模に再稼働しようとしているところに、政府や電力会社、原発関連企業の罪深さがある。

5.クレーンの安全マニュアルさえ遵守しない会社が原発を再稼働する恐怖

 われわれは、高浜での事例をはじめ原発再稼働時に全国の原発で多発するトラブルや事故(付表)の危険性を一貫して強調してきた注11。安全管理体制の全般的危機と安全意識の退廃や安全規律の紊乱は、何も関電に限ったことではない。
 だが同時に、今回の事故が再度示したのは、この危機と腐敗の程度が関電においていかに特別に深刻かという点であり、一般公衆に恐怖を引き起こさずにはおかないほどのレベルに進んでいるという事実である。関電は、再稼働作業時の安全に関するトラブル・レコードで最悪である。今回のクレーン倒壊事故もそうだが、再稼働時のトラブルによって原子炉が緊急停止に追い込まれたのは、今までに関電だけである。また、歴史的に見ても、11人もの作業員の死者を出した原発事故を起こしたのは、関電だけである(2004年8月9日美浜原発3号機事故)。
 政府や関電は、裁判所に対して影響力を行使し、運転停止の仮処分を撤回させて、何と9しても高浜原発を再稼働しようと策動している。われわれは何度でも警告するが、関電による原発再稼働は、上に見たような労働現場での恐るべき安全無視体制の下で強行されようとしているのである。クレーン作業で安全マニュアルをまったく無視して作業することが常態化している会社、経営トップから作業現場まで安全無視がいわば体質として染みついている組織が、原発でも同じことを行っており今後も行うであろうことは、容易に予想される。それがいかに危険な結果に導くか、火を見るより明らかである。

 謝辞
 本論考をまとめるにあたり、遠藤順子氏、山田耕作氏、田中一郎氏をはじめ内部被曝問題研究会の皆さま、滝本健氏をはじめ京都市民放射能測定所の皆さま、小森己智子氏、山田洋一氏そのほか多くの皆さまに、情報提供やご意見、アドバイスや励ましその他いろいろなご協力を頂きました。ここに深く謝意を表したいと思います。ありがとうございました。当然ながら文責はすべて筆者渡辺にあることは言うまでもありません。

(中略)

注記

注1 関西電力株式会社「高浜発電所構内でのクレーンブームの損傷について」2017年1月21日

注2 事故に関する報道は多いが、とくに以下の記事を参照した。
NHKニュース「高浜原発で大型クレーンが倒れる建物の屋根が変形」2017年1月21日6時23分
同「高浜原発で大型クレーン倒れる強風が原因か」2017年1月21日12時14分
朝日新聞「高浜原発、建屋にクレーンもたれかかる屋根が変形」2017年1月21日
東京新聞「高浜原発でクレーン倒れる原子炉補助建屋の一部などを破損」2017年1月21日
福井新聞「関電、クレーン倒壊原因特定できず高浜原発、強風では?」2017年1月22日
中日新聞「関電、暴風警報対策せず高浜クレーン転倒」2017年1月22日

注3 福井県庁危機対策・防災課のツイッターページ

注4 前掲関電プレスリリースは「クレーンブームの損傷時、暴風警報が出ており、強風が吹いていた」と書いている。

注5 福井地方気象台の暴風警報発表基準は以下のサイトを参照のこと。
それによれば、福井県嶺南地方の暴風警報発令基準は、平均風速20メートル(秒速)である

注6 日本クレーン協会「建設工事用クレーンの強風対策」
 関電がいかにクレーンの安全対策を守っていなかったかを示すために、この日本クレーン協会の勧告の該当部分を多少長くなるが以下に引用しておこう(下線は引用者)。
 「...強風による事故を防止するため,移動式クレーンの『強風時の作業中止』(クレーン則74条の3)及び「強風時における転倒の防止」(クレーン則74条の4)が規定されていますが、この作業中止の強風時とは10分間の平均風速が10m/s以上の風をいい、転倒の防止措置を講じる強風時には何m以上の風と12はいわずに,作業を中止することです。
 移動式クレーンが転倒するおそれのある時は、移動式クレーンの転倒による労働者の危険を防止する措置を講じなければなりません。市街地で大型移動式クレーンが転倒すると労働者ばかりか、通行人を始めとする第三者への危険が予想されるので、転倒の防止措置は時期を逸せず確実に行わなければなりません。移動式クレーンの転倒防止措置を講じないで単に作業を中止しても、待機中に強風にあおられ転倒した例や、台風などの影響を受けることが予想されたにも係らず適確な転倒防止措置をせずに、休止中に大型移動式クレーンが転倒した例もあります。
 移動式クレーンの運転者を始めとする関係者は,この位の風では大丈夫と安易に判断せず、強風が予想されたら以下のような早めの対策を講じる必要があります。」
 この後さらに各種の対策が紹介されているが省略する。対策の中で、重り(アンカウェイト)をつるす措置は、あくまでも「フロントアタッチメントを地上に降ろすころができないとき」の「応急処置」と規定されている。今回の場合のように地上に降ろすことが可能であり、他のクレーンについては事故後に実際に地上に降ろす対応が取られたような場合には、当てはまらない。これを行わなかったことは職務上の怠慢というほかない。

注7 関電のいう「毎秒42メートル」とは、明らかに瞬間最大風速であると考えられるが、上記日本クレーン協会によれば、瞬間最大風速は平均風速のおよそ1.5〜1.7倍程度とされており、平均風速に換算すれば毎秒25〜28メートル程度である。

注8 同法令は以下のサイトで読むことができる。

注9 朝日新聞「高浜原発クレーン倒壊、強風対策怠る当日は暴風警報」2017年1月26日
 「関西電力高浜原発(福井県高浜町)で(1月)20日夜、大型クレーンが倒壊して建屋2棟の一部が損壊した事故で、クレーンメーカーのマニュアルに従った対策を取っていなかったことが26日わかった。暴風時にはアームを下ろしたり、重いクレーンの後部を風上に向けたりしなければならないが、いずれも怠っていた。
 クレーンは当時、アームを高さ約105メートルまで伸ばし、風上にあたる北西方向に前部を向けていた。転倒防止のため、地面の重り(5トン)とアームの先端をワイヤでつないで固定していたが、南東方向にあった2機の原子炉補助建屋と核燃料を保管する燃料取り扱い建屋の屋根の上にアームが倒れた。
 マニュアルには、風速が30メートルを超えると予想される場合はアームを地上に下ろし、10メートル超ではバランスを取るため、重心があるクレーンの後部を風上に向けることが記載されているという。
 福井地方気象台は事故当日、『20日夜遅くから急速に北の風が強まる』として高浜原発周辺に暴風警報を発令し、最大瞬間風速35メートルと予想していた。」
 時事通信「マニュアルと異なる対応=関電、クレーン倒壊で−高浜原発」2017年1月27日
 「関西電力高浜原発(福井県高浜町)で工事用の大型クレーンが倒れ、2号機の燃料取り扱い建屋などの一部が損傷した事故で、メーカーのマニュアルに記載された強風時の対策と、実際に関電側が取った措置が異なっていたことが27日、関係者への取材で分かった。
 事故は20日午後9時50分ごろ発生した。福井県内には同日夕から暴風警報が出ており、関電は転倒防止のためクレーンのアーム(全長約113メートル)先端から伸ばしたワイヤと、地面に置いた約5トンの重りをつないでいた。倒壊時、風は北西から吹き、クレーンの前部は風上を向いていた。
 一方、クレーンのマニュアルでは瞬間風速が毎秒10〜16メートルの場合、カウンターウエートと呼ばれる重りが付いたクレーン後部を風上にするよう明記。同30メートルを超えることが予想される場合は、事前にクレーンアームを地上に下ろしておくよう定めている。
 関電が高浜原発の構内2カ所で計測した当時の瞬間風速は毎秒約14メートルと同約15メートル。福井地方気象台は20日夜について陸上の最大風速を毎秒20メートル、最大瞬間風速を同35メートルと予想していた。」

注10 日本経済新聞「高浜原発クレーン転倒、規制委が関電に口頭注意」2017年1月25日

注11 筆者は、これらのトラブルや高浜原発の再稼働時のトラブルの分析を、逐次、市民と科学者の内部被曝問題研究会や京都市民放射能測定所のメーリング・リストに公表し、それらはその都度議論されてきたが、その内容は以下の論考にまとめている。
渡辺悦司「相次ぐ再稼働作業時のトラブル――原発再稼働の恐ろしい危険性」

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