[2017_01_10_01]アジアで急増 台湾と逆行、日本・韓国、輸出推進(毎日新聞2017年1月10日)
 
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アジアで急増 台湾と逆行、日本・韓国、輸出推進

 台湾では2025年までの脱原発を目指す法案が可決の見通しになったが、電力需要が切迫する中国やインドは原発建設ラッシュだ。東京電力福島第一原発事故を経験した日本や韓国も原発輸出を進めており、アジアでは台湾の脱原発と正反対の動きが続いている。

■中国
 中国では昨年末時点で35基が稼働し、20基が建設中だ。習近平指導部は30年までに「原発強国」を実現すると強調し、原発建設を加速する構えだ。
 計画によると中国は昨年1月時点で約2800万キロワットだった原発の総発電容量を20年までに5800万キロワットに引き上げる。30年にはさらに1億5000万キロワットへと拡大したい方針で、米国を抜き世界最大の原発利用国となるのも時間の問題だ。
 海外への原発輸出でも中国の存在感が高まっている。従来の輸出先はパキスタンなど中国と親密な新興国が中心だったが、15年秋には英国との間で中国製原子炉を採用した原発の整備計画で合意するなど先進国への働きかけも強めている。

■インド
 インドでは21基が稼働している。発電能力は全体の約2%だが、モディ政権は原発増設を温暖化対策の柱に位置づけ、32年までに現在の10倍にあたる6300万キロワットまで増やす計画だ。世界原子力協会の資料によれば、建設中を含め25基を増設する計画が進んでいるほか、少なくとも44基の建設が構想段階にある。昨年11月には日印原子力協定が締結され、日本企業の進出も可能となった。
 インドは約3億人が電気のない生活を送るとされ、電力供給の増加が喫緊の課題だ。建設予定地周辺ではたびたび反原発デモが起きているが、大きな流れにはなっていない。

■韓国
 韓国では25基が稼働し、6基が建設中。4基が建設の準備段階だ。09年にアラブ首長国連邦(UAE)に原発プラントを輸出したほか、中東、東南アジアへの輸出計画を推進している。昨年9月に韓国南部・慶州(キョンジュ)でマグニチュード5.4の地震が発生し、日本海側の原発密集地域に断層が多いことが問題になった。だが、大地震が比較的少ないことから、脱原発は大きな政治課題になっていない。

■東南アジア
 東南アジア各国ではベトナムが日本とロシアに2基ずつ発注し、中部ニントゥアン省に初の原発建設を予定していたが、昨年11月に国会が計画を白紙撤回した。
 マレーシアやインドネシアでも原発構想はあったが、具体化していない。フィリピンは1980年代に東南アジア初の原発を建設したが、86年のチェルノブイリ原発事故などで凍結され、一度も稼働していない。【岩佐淳士、北京・赤間清広、ニューデリー・金子淳、 ソウル・米村耕一】 (1月10日毎日新聞より)

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