[2016_12_19_02]基準地震動(水平方向620ガル)が小さすぎる 「免震重要棟なし」「鍛造」問題で現物調査をしていない 避難計画はあまりに非現実的で実効性なし 「安全文化の欠如」 原子力規制委の「玄海3・4号機審査書案」が不適当な理由 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)(たんぽぽ舎メルマガ2016年12月19日)
 
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基準地震動(水平方向620ガル)が小さすぎる 「免震重要棟なし」「鍛造」問題で現物調査をしていない 避難計画はあまりに非現実的で実効性なし 「安全文化の欠如」 原子力規制委の「玄海3・4号機審査書案」が不適当な理由 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

 玄海原発玄海3号炉および4号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案は不適当である。その理由を以下に述べる。

1.基準地震動(水平方向620ガル)が小さすぎる(19〜20頁)

 基準地震動水平方向620ガルは小さすぎる。既往最大の地震動は2000ガルを超えている。たとえば、2004年に起きたの新潟県中越地震では2516ガル、2008年の岩手・宮城内陸地震では岩手県一関市厳美町祭畤で4022ガルを記録した。
 また新潟県の柏崎刈羽原発が2007年の中越沖地震で停止してしまったときは、構内にある地震計が記録した加速度は1500ガルにも達していた。
 司法が指摘したように、「新規制基準は緩やかすぎて、これに適合しても安全性は確保できない」し、大津地裁が福島第一原発事故の原因究明が「道半ば」としたうえで、国が策定した新規制基準の安全性を疑問視した。
 さらに、島崎前委員長代理、長沢大阪府立大学名誉教授、岡村高知大学教授、政府の地震調査委員会、など多くの専門家が本年に指摘しているように、今の基準地震動の策定方法は過小になっている。また、熊本大地震を分析し長周期や繰り返し地震への対策も検討するべきだ。

2.「免震重要棟なし」(247〜253頁、390〜399頁)

 東電福島第一原発事故における吉田所長以下の免震重要棟内で収束作業がなければイチエフ事故はもっと厳しくなり本州に誰も住めなくなったかも知れない。それを考えれば、「免震重要棟なし」で原発を動かすことは許されないはず。
 5年猶予の規定がある訳でもないのに川内原発の稼働を容認したのもおかしいが、玄海3・4号機の稼働も「免震重要棟なし」では絶対に認めるべきではない。

3.「鍛造」問題で現物調査をしていない(121〜231頁)

 フランスで発覚した問題(原子炉に基準以上の炭素を含んだ比較的もろい鉄の合金が使われた疑い)がまだ解明されていない。直ちに原発を止めて調査するべきだ。玄海原発3・4号機は日本鋳鍛鋼の鋼材を使っているのであるから、炭素偏析の有無を現物の非破壊検査または破壊検査で調査するべきだ。

4.避難計画はあまりに非現実的で実効性なし(全般)

 玄海原発の周辺自治体や住民がずっと指摘してきたように、また原子力防災訓練と熊本大地震との対比で明らかなように、玄海原発にひとたび大事故が起こった場合には周辺住民が被ばくせずに避難できる保証は全くない。熊本大地震では避難の為の道路が寸断され新幹線も復旧に1週間以上かかった。避難計画に実行性がないのであるから原発の再稼働は無理だ。
 それに、避難が必要になりヨウ素剤配布が必要になる可能性があるのであれば、原発を動かすべきではない。

5.「安全文化の欠如」(全般)

 田中原子力規制委員長は、常々電力会社の安全文化の向上を唱えているが、私から見れば原子力規制委員会にこそ安全文化の欠如が顕著だ。以下にその理由を例示する。
・熊本大地震が起こっていても川内原発を止めようともしない川内原発から5.6kmの高江で震度5弱が観測された。そして、気象庁がその後も大地震が起こり得ると警告していたにも拘らず原子力規制委員会は川内原発を止めなかった。
・司法によって高浜原発の稼働を差し止められ、もろもろの原発についても再稼働するなという訴訟が起こされている。それでも、真摯な技術的な説明を司法や「国民」にせず、「新規制基準」見直しや審査のやり直しや原発を止めることもしない。
・フランスで原子炉の強度不足の欠陥が疑われる問題が起こったにも拘らず、川内原発を止めようともしなかった。
・川内原発の再稼動において、審査時に2016年3月に完成予定としていた免震重要棟について、稼働する時(2015年8月)には九州電力が着工すらしていないことを知りながら、規制委は再稼働を認めた。
・「新規制基準」や審査について、多くの科学者・技術者が問題点を指摘しているにも拘らず、広範な専門家・有識者・国民を招いて科学・技術的な公開討論を闘わすことをせず、無視している。
・東電福島第一原発事故の収束作業でも廃炉作業でも、放射能汚染物の垂れ流しを容認している。特に、汚染水のアンダーコントロールもブロックできているという今や誰にも明らかになった安倍晋三首相の大嘘をも田中委員長は是認した。
・原発稼働40年ルールを破り「例外中の例外」のはずの20年延長を、高浜・美浜で認めた。
・11月22日の福島県沖地震において東電福島第二原発3号機において、使用済み核燃料の冷却停止が起こった折にも、東電とともにその問題を過小評価し、日本に18000トンもある使用済み核燃料の問題を隠している。

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