[2016_12_19_01]国費で整備の玄海放射能シェルター 九電関係会社が3割受注(東京新聞2016年12月19日)
 
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国費で整備の玄海放射能シェルター 九電関係会社が3割受注

 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で事故が起きた際、三十キロ圏の住民が一時避難する放射能シェルター整備で、九電の関係会社六社が全体の約三割に当たる計約十四億円の業務を受注していたことが本紙の調査で分かった。玄海町長の弟が経営する地元の建設会社も受注していた。法律に基づき整備は全額、国費で進められており、九電の関係会社は税金による施設で利益を得る構図になっている。(荒井六貴)
 玄海原発のシェルター整備は二〇一二年度に始まった。離島などの体育館に放射能フィルター付きの蛇腹式テントを設置したり、学校の教室を二重サッシにしてフィルターを取り付けたりしてきた。費用は全て国費で賄われるが、発注者は自治体や社会福祉法人だ。
 本紙は玄海原発の周辺取材で、九電の関係会社が多数のシェルター整備を受注しているとの情報を把握。発注した福岡、佐賀、長崎の三県の六市町と社会福祉法人に、情報公開請求や聞き取りをした。
 その結果、今年十一月末までに全体で九十三件計約四十八億二千万円のシェルター関連の契約があった。そのうち、九電子会社の西日本技術開発と西日本プラント工業(いずれも福岡市)の二社、出資先の九電工(福岡市)など二社、九電工の子会社二社を合わせた六社が、約三割に当たる二十八件、計約十三億八千万円を受注していた。最多は九電工の約四億八千万円。
 一方、玄海町の岸本英雄町長の弟が社長を務め、町長も株式を所有する建設会社「岸本組」(佐賀県唐津市)は、唐津市内の離島での建築工事二件を計約一億二千万円で受注していた。
 残りの七割は佐賀県内の建設、電気関連企業など約三十社が受注していた。

◆再稼働判断影響ない 玄海町長回答

 原子力規制委員会は、玄海原発3、4号機が新規制基準に適合するとの判断を固めており、来年、再稼働する可能性が高い。その条件となる地元同意では、岸本町長が鍵を握る。 本紙の取材に、岸本町長は「(岸本組の受注は)再稼働の判断に影響はない。規制委が新基準に適合と判断すれば稼働すべきだと考える」と文書で回答。岸本組は「唐津市が発注する工事で、兄が玄海町長だからといって、仕事が取れるわけではない」と説明した。
 九電は「落札割合などを含めて把握していない。落札したものは、公正公平な受注競争の結果。技術を生かし、グループとして地域の発展や防災に貢献していきたい」とコメントした。
 九電工は「競争入札で受注している。(九電関係会社の受注に)お答えする立場にはないので、コメントは控える」とした。

◆税金で利益おかしい

 大島堅一・立命館大教授(環境経済学)の話 原発敷地外の安全対策費は法的に、税金で負担することになっているが、事故の放射能汚染は敷地内にとどまらず、本来は、電力事業者が敷地内と同様に負担すべきだ。それなのに、九電関係会社が安全対策名目で利益を得るというのは、納得できるものではない。玄海町長の弟の会社が受注するのも、道義的におかしい。町長が利害関係者になり、再稼働の是非の判断に影響することを疑われても仕方がない。

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