[2016_11_26_03]地震に弱い使用済み核燃料プール 地震で倒壊する恐れもあります 原発が再稼働すれば、さらに危険な状態になる 木原壯林(若狭の原発を考える会)(たんぽぽ舎メルマガ2016年11月26日)
 
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地震に弱い使用済み核燃料プール 地震で倒壊する恐れもあります 原発が再稼働すれば、さらに危険な状態になる 木原壯林(若狭の原発を考える会)

○去る11月22日、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の大きな地震が発生しました、被災された方々のご苦労を思い、お見舞い申し上げます。
 この地震によって、福島第一原発3号機の使用済み燃料プールの冷却水循環系統が自動停止したと報じられ、改めて、使用済み核燃料の安全保管の難しさを考えさせられました。

○使用済み核燃料プールとは
 原発を運転すると、核燃料の燃焼が進むにつれて、核分裂性のウランやプルトニウムが減少するので核分裂反応を起こす中性子の発生数と発熱量が低下し、また、核燃料中に運転に不都合な核分裂生成物(特に希ガスや希土類)が多量に蓄積し、核燃料の持続的な燃えやすさ(余剰反応度)が低下します。さらに、核燃料被覆材は、腐食や応力によって変形します。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなります。そのため、使用済み核燃料がたまります。
 一般的に、使用済み核燃料は、交換直後は高放射線、高発熱量で移動させることが出来ませんから、原発内にある貯蔵プール(使用済み核燃料プール)で3年〜5年ほど保管・冷却されます。こうして、空冷で輸送できる状態になった使用済み核燃料は、再処理工場に輸送されて処理されるか、高レベル放射性廃棄物処理場で長期保管されることになっています。ただし、再処理工場稼働の目途は立たず、保管地も決まっていないので、多くは、各原発の使用済み核燃料プールに溜めおかれています。
 使用済み核燃料プールの設置個所は、沸騰水型原発と加圧水型原発では異なります。いずれにしても。燃料は極めて強い放射線を発しており、水で遮蔽する必要があり、燃料交換は常に水中で行ないます。水中から燃料を出したら、作業員が即死します。

○沸騰水型原発の使用済み核燃料プール
 原子炉上部にある使用済み燃料プールは原子炉と水路で繋がっていて、普段は仕切りで区切られています。
燃料を交換するときは、格納・圧力容器の上蓋を開け、水を満たし、燃料プールとの仕切りをはずします。
 原子炉から燃料を取り出すには、燃料交換機を移動させ、原子炉から約4メートルの細長い燃料集合体を引き上げ、水路の中を移動して、燃料プールのラックに挿入します。新燃料を原子炉に装荷する場合は、逆の作業を行います。

○加圧水型原発の使用済み核燃料プール
 使用済み燃料プールは隣の建屋にあり、格納容器内のピットとは、小さなトンネルで繋がっていて、このトンネルを使って、燃料の出し入れを行ないます。
 原子炉から引き上げられた燃料集合体は、格納容器内ピットの水の中で、水平に寝かされ、輸送装置に乗せられ、トンネルを通って、隣の建屋の使用済み燃料プールに送られます。後、燃料集合体は再び垂直にされ、吊り上げられて燃料ラックに挿入されます。燃料を原子炉に装荷する場合は、逆の作業を行います。
 加圧水型では、燃料を立てたまま移動できる大きな穴を格納容器に開けることができないため、このような複雑な作業になりますから、燃料交換作業は、長くかかり、沸騰水型に比べトラブルは多くなります。
 加圧水型の場合、事故時に、燃料の原子炉からプールへの迅速移送は困難です。また、移送中の大地震で格納容器と燃料プール建屋がずれて、燃料が破損する、トンネルの途中で立ち往生する、トンネル部分が壊れ、外へ汚染水が漏れだすなどのトラブルが生じかねません。
 このように、燃料交換一つを取ってみても、加圧水型の方が安全という関電などの主張は偽りです。


○緊急事態対策が極端に不十分な使用済み核燃料プールは、原子炉本体(圧力容器)より格段に脆弱です。
 使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水喪失→メルトダウンの危険性が高いことは福島第一原発事故(4号機燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった)でも明らかになっています。
 原発重大事故に関して、原子炉本体での破滅的な事態(崩壊熱を出し続けている原子炉の核暴走、冷却水不足や漏出、原子炉容器の破断や破壊、炉心溶融など)の発生防止は中心的課題となっていますが、使用済み燃料プールに起因する重大事態の可能性についてはあまり関心が払われていません。
 例えば、原子炉は炉心溶融を避けるために、バックアップ・ポンプ、バックアップ電源供給システム、バックアップ冷却システムを有し、炉心溶融に備えて、放射性物質封じ込めシステムを持っていますが、使用済み燃料プールについては、それらに比較できるほどのシステムを持っていません。
 なお、原子炉圧力容器は、高温高圧にも耐える鋼鉄の閉じ込め容器ですが、使用済み燃料プールは、上部が解放されたプールで、閉じ込め効果はありませんし、プール倒壊の可能性も指摘されています。

 それでも、往々にして使用済み燃料プールに格納されている核燃料は、原子炉に収められている核燃料より、ずっと多いのです。このプールの冷却水が継続的に喪失あるいは不足すると、核燃料が高温になり、大きなダメージを受けます。
 使用済み燃料プールの放射性物質封じ込め対策は貧弱ですから、放射性生成物が大気中に放出されるなどの重大な結果を招くことになります。
 さらに、使用済み燃料プールの冷却水(放射線遮蔽効果がある)が失われれば、使用済み燃料プール周辺の何百メートルもの範囲が、人が近寄れないほど多量のガンマ放射線に曝されます。その結果、適正な事故拡大防止対策を行うことが難しくなり、プール内の核燃料はメルトダウンする危険に直面します。
 プール中の使用済み核燃料が異常に過熱されれば、核燃料被覆管のジルコニウムと水が反応して生じる水素の爆発、ジルコニウムの酸化による火災発生の恐れもあります。
 一方、プール中の使用済み燃料棒の間隔が、変形や溶融などによって狭まれば、臨界に達し、核分裂連鎖反応がプール内で起こりかねません。
 以上の何れの事態でも、膨大な量の放射性物質が放出され、福島やチェルノブイリのような重大事故になりかねません。

○原発が再稼働されれば、放射線量、発熱量の多い新しい使用済み核燃料がプールに搬入され、プールの危険度は高くなります
 今、川内原発2号機、伊方原発3号機を除いて、国内の原発は停止しています。このうち、3年以上停止している原発の使用済み核燃料の放射線量と発熱量は、燃料をキャスクに入れて空冷で貯蔵、移送できる状態近くまで減衰しています。使用済み燃料発生初期に比べれば、危険性が格段に低くなっています。
 しかし、ここで原発を再稼働すれば、放射線量、発熱量の高い使用済み燃料を生み出します。重大事故の確率は、格段に高くなります。全ての原発の再稼働を阻止し、次の事故が起こる前に、原発を全廃しなければなりません。

○日本の使用済み核燃料は17.000トン:保管場所は満杯に近付いています。
 先述のように、核燃料は永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、新燃料と交換せざるを得なくなります。そのため、使用済み核燃料がたまります。
 現在、日本には使用済み核燃料が17,000トン以上たまり、原発の燃料プールと日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)の保管スペースを合計した貯蔵容量の73%が埋まっています。
 原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になります。
 国の計画では、全国の使用済み核燃料は六ケ所村に移送し、再処理して、ウラン、プルトニウムを取り出し、再利用することになっていました。
 しかし、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていません(危険極まりないこの工場の運転は不可能とも言われています)。
 日本原燃・再処理工場の一時保管スペース(容量3,000トン)の貯蔵量は、2012年9月で2,945トン(占有率は98%)に達しています。
 青森県は「現在一時預かりしている使用済み燃料は、再処理の前提が崩れれば、各原発に返すだけだ」と強調しています。
 福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンですが、その7割近くが3,550トンの使用済み燃料で埋まっています。
 高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなります。
 一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットル(L)ドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積していますが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もありません。

※使用済み核燃料プールは、極めて脆弱で、地震で倒壊する恐れもあります。
 地震多発国に原発はあってはなりません。

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林)

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