[2016_07_30_02]大飯原発の耐震性審査:関西電力の計算手法はブラックボックスの中_まさのあつこ(Yahoo!2016年7月30日)
 
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大飯原発の耐震性審査:関西電力の計算手法はブラックボックスの中_まさのあつこ

 7月27日の原子力規制委員会は、原発事業者・原子力規制委員・原子力規制庁職員の3者の関係性と力関係を露わにした。
 委員たちの判断を支える規制庁職員は、関西電力による基準地震動の計算手法を知らないままで、耐震性審査を行っている。しかし、原子力規制委員会はそれを問題にせず、大飯原発の基準地震動の見直しの必要はないと判断したのである。

 過小評価が指摘される大飯原発の基準地震動を見直すか否かを委員らが判断するための計算結果を説明する際、規制庁職員らが恣意的に数字(パラメータ)を操作していたことを説明しなかった(隠蔽した)ことが、島崎邦彦東大名誉教授の指摘により正式に判明したのは7月20日の原子力規制委員会だ。
 これにより、委員は、当然ながら、自らの専門外のことについては、規制庁職員がたとえウソを言っても、それを見破ることはできないことが露わになった。

 7月27日の原子力規制委員会では、説明を求められた規制庁職員が、事実上、不適切な計算を撤回することとなった。その弁明の中で、櫻田原子力規制部長は、恣意的な操作を行った理由として「関西電力がとった手法についての詳細の情報を我々は持っておりませんでしたので(略)我々なりの考え方で計算をした」と述べた。
 これにより、大飯原発の耐震性審査を行っている規制庁は、原発事業者が独自の手法で行った基準地震動を再計算して確認する術も持たず、事業者の計算を鵜呑みにするだけの関係だったことが露わになった。

 その深刻な関係性が分かったにもかかわらず、5人の原子力規制委員は誰一人、それを問題にしなかった。

 午後の記者会見で、筆者は「ブラックボックス」という言葉を使ってこの点を尋ねた

 田中委員長は「あっちの方が専門家なので」と逃げ、小林長官官房耐震等規制総括官が「事務的な話なので」と回答した。以下の通りである。


(前略)7月27日記者会見議事録より抜粋
http://www.nsr.go.jp/data/000159200.pdf
 記者:そうすると、関西電力が出している19の基準地震動については、規制庁でもわかっていないブラックボックスの部分があると思ったのですが、その部分で何らかの恣意性が働いていないという確証はどのようにあるのでしょうか。田中委員長、もしよろしければ。

 田中委員長:いや、あっちの方が専門家なので。

 小林長官官房耐震等規制総括官:事務的な話なので、事務方から。総括官の小林でございます。私どもも、大飯の地震動を審査するに当たって、これは島崎先生時代におおむね了解したものでございますけれども、レベルがどのくらいの程度かというのをまず把握します。言ってみれば、このくらい断層が近くて、このぐらいアスペリティ置いたら、相当な地震動になるだろうと。そのときに小さい値が出てくれば、何らかのおかしな情報なり、手法が用いられているのではないかということで、その辺を指摘して、再度改めて地震動をつくり直してもらうとか、そういうことは審査の中でやっておりました。

 記者:後で確認しますが、要は、わからない、具体的な係数がどのようなものかは規制庁はもらっていない中で、大き過ぎたら、ここはおかしいのではないかというやりとりの中で、19の基準地震動が求まったという理解でよろしいのでしょうか。

 小林長官官房耐震等規制総括官:総括官の小林でございます。大きなといいますか、もともと審査会合の中で、パラメータについてはある程度表を出しております。主要なパラメータですね。手法については、それは審査会合の中でオープンにしています。それ以外、先ほど説明ありましたけれども、例えば、放射特性とか、そういう細かなところで若干の差異が出てくると思いますけれども、そういったところも含めて、我々の目で大きいか小さいかを判断して、小さ過ぎるのであれば、どこか違うのではないかという審査はやっております。

 記者:わかりました。パラメータを具体的に全て持っているわけではなく、19の地震動が求まったというふうに理解しました。


 原発の耐震性審査はオープンに行われてはいるものの、実のところ、規制庁であっても基準地震動の計算については主要なパラメータしか持たず、適正性を確認するための再現計算を独自に行うことができていない。まして委員たちも確証も持てていないということだ。

 島崎教授が明らかにしたのは、単に、大飯原発の基準地震動が過小評価か否かではない。規制庁による耐震性審査とは、その程度のものであったということである。

 なお、「大飯発電所の基準地震動については、これはまだ審査中」(櫻田原子力規制部長の発言/7月27日原子力規制委員会議事録10頁)であり、見直しは容易なのである。


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