[2016_07_30_01]鹿児島知事に三反園氏 脱原発の民意に沿う県政運営を(愛媛新聞ONLINE2016年7月30日)
 
参照元
鹿児島知事に三反園氏 脱原発の民意に沿う県政運営を

 任期満了に伴う鹿児島県知事選で、「脱原発」を掲げた三反園訓氏が4選を目指した現職の伊藤祐一郎氏を破った。公約には、熊本地震を受けて九州電力川内原発を停止し、施設点検や避難計画の見直しを行うと明記していた。県民が支持した「原発のない社会」「自然再生エネルギー県」への具体的な道筋を早期に示さねばなるまい。
 三反園氏は28日に予定される知事就任後、九電に運転停止や活断層の再調査を求めることになる。原発を止める法的な権限はないとはいえ、原発立地県の知事が脱原発に踏み込む意義は大きい。与党の自民、公明両党は先の参院選公約で、再稼働には地元の理解と協力が必要としていた。九電と政府は民意を重く受け止めて要請に応じ、改めて協議に臨むべきだ。
 「地元」の範囲の再考も必要になろう。川内原発の再稼働を巡っては、半径30キロ圏に入る自治体を同意が必要な「地元」に含めるよう求める声が高まったが、伊藤氏は県と立地自治体の薩摩川内市だけで手続きを進めた。ひとたび重大事故が起きれば影響が立地自治体にとどまらないのは、東京電力福島第1原発事故が証明している。
 不安や不満は市町村別の得票結果からも読み取れる。30キロ圏をはじめとする周辺自治体の多くで三反園氏が勝ち、薩摩川内市でもわずかながら上回った。最長60年の原発運転を容認する伊藤氏との姿勢の違いが、投票行動に影響したのは想像に難くない。周辺自治体との真摯(しんし)な対話を三反園氏に求める。一方、政府には「再稼働ありき」でなく、より多くの自治体の意見が同意手続きに反映される仕組みの構築を促しておきたい。
 気掛かりな点も残る。三反園氏は昨年末に出馬表明した際、原発政策への言及はほとんどなかった。その後、反原発団体が推す候補との一本化を受けて脱原発のビジョンを掲げたが、選挙戦では前面に出すことなく現職の多選批判に終始した。
 伊藤氏の政治姿勢などに反発し、三反園氏支持に回った市町村長や議員らの中には原発容認派もいるという。配慮が過ぎて政策が曖昧になれば、県民の支持を失い県政運営に支障が出るのは必至だ。
 候補一本化に伴う政策合意文書には「原発を廃炉にする方向で、可能な限り早く原発に頼らない社会の構築に取り組む」とある。当選後には「鹿児島を自然再生エネルギー県にしていくことで、雇用を生み出したい」と力強く語った。原発に不安を抱く県民の思いをくみ、国や九電、さらには県議会に向き合う必要がある。
 原発に依存しない社会を実現し、再生エネ導入を拡大する方向性は、国のエネルギー基本計画で明示されている。鹿児島県は次期トップと県民が一歩を踏み出す決断をした。政府と全ての原発事業者、立地県は、漫然と先送りすることは許されないと肝に銘じなければならない。

KEY_WORD:SENDAI_: