[2016_07_15_29]島崎元委員、怒る〜規制委が再計算するとなぜか地震動が小さく(原子力規制を監視する市民の会2016年7月15日)
 
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島崎元委員、怒る〜規制委が再計算するとなぜか地震動が小さく

◆基準地震動の策定に過小評価があると警告
 元原子力規制委員で地震学者の島崎邦彦氏は、原発の基準地震動を策定する際に用いられている経験式である「入倉・三宅式」を用いると、基準地震動が過小評価になると指摘し、別の計算方式でやり直すべきだと警告を発していました。
 これに対し、原子力規制委員会は6月20日に島崎氏から意見を聞いて、大飯原発の基準地震動について、計算をし直し、7月13日の規制委定例会合で公表しました。その結果に対して、島崎氏は納得できないとして抗議文を規制委に送り、本日記者会見を行いました。

◆規制委が再計算するとなぜか揺れが小さくなった
 規制委が行ったことは、「入倉・三宅式」によって、断層面積から地震モーメント(地震規模)を算出しているのを、「武村式」(断層長さと地震モーメントの関係)に置き換える、そうすると、基準地震動がどうなるかを試算したというものです。
 規制委は、「武村式」で計算しても、地震動は644ガルであり、これに対し、大飯原発の基準地震動は最大で856ガルなので、耐震安全性は問題とないとの結果を得たと説明しています。
 断層の形状や大きさを同じにして比較すると、「武村式」では、地震モーメントで「入倉・三宅式」の約4倍、基準地震動の最大加速度では約1.5倍になるはずです。なぜこのような結果になったのでしょうか。規制委は、ただ二つの式を入れ替えただけでなく、再計算の結果が小さくなるように条件を意図的に変えたのです。

◆再計算では「不確かさ」を考慮せず
 基準地震動の策定は、基本パターンといわれる地震動を作ったあと、これに「不確かさの考慮」を上乗せしてつくります。「不確かさの考慮」は、震源での揺れの強さを5割増しにするとか、断層面の角度をより揺れが大きくなるようにするとか、断層の中でも強い揺れが生じる部分を原発に近づける、といったやり方で、基本パターンよりも揺れを大きくするのです。すなわち、「基本パターン+不確かさの考慮=基準地震動」となるのです。
 「入倉・三宅式」と「武村式」の入れ替えは、基本パターンの変更ですから、そのうえで、不確かさの考慮を上乗せしなければなりません。ところが、規制委は、「武村式」を使うことが「不確かさの考慮」だと言ったのです。それで、再計算では「不確かさの考慮」の上乗せをやらなかったのです。なんともばかげた理屈です。
 しかも、これだけでは、一部で基準地震動を超えてしまうことから、基本パターンの数値も、関西電力が算出した値よりも小さい、独自の計算結果を用いていました。詐欺行為としか言いようがありません。

◆規制委のでたらめな再計算は認められない
 今回は、計算に入れる値ではなく、計算式そのものを変えるという操作ですから、変えたものを新たな基本パターンとし、そのうえで計算に入れる値を操作して不確かさを考慮するというのが当然のことです。島崎氏は学会で、「武村式」と「入倉・三宅式」の2つを比較するのではなく、それを含めた4つの式を比較し、「入倉・三宅式」だけが過小評価になることを示しました。今年になって熊本地震のデータでの検証を行い、「武村式」の確かさと適用条件を明らかにしました。規制委のやり方はとても問題です。
 島崎氏によると、きちんと再計算すれば、大飯原発の基準地震動は1500ガルを超えます。これで耐震安全性をクリアできるはずはありません。この問題は、玄海原発や美浜原発、そして稼働中の川内原発(「入倉・三宅式」は使っていませんが、地震モーメントは「入倉・三宅式」の2倍程度の値しか使っておらず、「武村式」にくらべて約半分の過小評価となっています。)についても問題になることです。(阪上武)

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(後略)

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