[2014_09_11_01]川内原発「適合」 再稼働の容認ではない(南日本新聞社2014年9月11日)
 

川内原発「適合」 再稼働の容認ではない

 原子力規制委員会は、九州電力川内原発1、2号機の安全対策が新たな規制基準に適合しているとして、審査結果をまとめた審査書を正式決定した。
 新基準は、東京電力福島第1原発の事故を教訓に、過酷事故や地震、津波対策を強化した。
 規制委が、再稼働の前提となる新規制基準に適合する原発を認めたのは、事故後初めてである。
 ただ、新基準への「合格」は規制委が再稼働を容認したことにはならない。規制委が7月に審査書案を認めた際、田中俊一委員長は「基準の適合性を審査した」と述べているからだ。
 それでも今後、再稼働への動きが本格化するのは間違いない。鹿児島県や薩摩川内市の同意などを経て今冬以降、再稼働される見通しである。 審査にあたっては、規制委が認めた案に、全国から1万7800件余りの意見が寄せられた。「避難計画を審査しないのは不備だ」などという指摘である。しかし、審査書は字句の修正にとどまり、結論は変わらなかった。
 決定の際、傍聴席から「納得できない」などの声が上がったのもうなずける。規制委は審査結果について、地元の理解を得られる十分な説明が必要だ。
安全性に関しても同様である。田中委員長は7月、「安全だとは申し上げない」と述べ、審査は安全性を担保するものではない、という認識を示している。
 一方、政府は「規制委で安全性が認められた」との立場だ。九電も同じだろう。伊藤祐一郎知事は「国が安全性を保証し、公開の場で住民説明を行い、理解を得る必要がある」と繰り返している。
 責任逃れの堂々めぐりに見える。安全性について、どこか担保するのか。再稼働の最終判断は誰が行い、結果の責任を負うのか。新基準への適合を機に、はっきりさせてもらいたい。
 この間、県や国はさまざまな対策を打ち出した。知事が国へ再稼働の必要性を明示した文書を要請したり、経済産業省が県と薩摩川内市へ避難計画づくりを支援する職員を派遣したりするなどだ。県は、事故時の避難先を放射線量や風向きを考慮して選ぶ仕組みも整えることにした。
 気になるのは、県と原発から30キロ圏内9市町が行う避難計画説明会への参加者が少ないことだ。約21万5000人が対象なのに、7月下旬のさつま町までの参加は、2600人ほどにすぎない。
 県は今回の審査結果の説明会を10月9日から始める。多くの住民が参加できるようにしてほしい。

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