[2013_03_11_01]「福島返せ」1650人国を提訴 原発事故 4地裁・支部、東電も 06年には津波の危険把握(東奥日報2013年3月11日)
 東日本大震災から二年となる十一日、東京電力福島第一原発事故で被災した福島県の住民や避難者ら八百人が、国と東京電力を相手取り、損害賠償や原状回復を求めて福島地裁に集団提訴した。同日午後には東京、千葉両地裁と福島地裁いわき支部にもそれぞれ同様の訴訟が起こされ、原告は四地裁・地裁支部で計千六百五十人、請求総額は約五十三億六千万円に上る。弁護団によると、原発事故で国を相手にした集団提訴は初めて。
 原告は、福島県や隣接する栃木、茨城両県に暮らしている住民のほか、事故後に東京や千葉に県外避難した人々。東京地裁に提訴するのは八人、千葉地裁二十人、福島地裁いわき支部八百二十二人。
 訴訟では、慰謝料や避難実費、休業損害を請求するほか、居住地の空間放射線量を事故前と同じ状態に戻すことなどを求める。国に対しては、原発を国策で進めてきた法的責任を追求する。
 福島地裁の原告団は訴状で「事故で失われた原告らの生業、生活そのもの、そして地域社会=コミュニティのトータルとしての故郷を回復することが真の要求。元の美しい福島を返せという住民の叫びそのものだ」などと主張している。

 06年には津波の危険把握

 福島第一原発事故で避難を余儀なくされた住民や風評被害に苦しむ業者が11日に起こした訴訟は、国に賠償を求める初の集団提訴となる。国策として原子力政策を進めてきた国に対し、原発建設の差し止めなどを求める訴訟はあったが、国の主張は「安全神話」に守られ続けてきた。その神話が壊れた今、司法の判断が注目される。
 原告らは、津波による全電源喪失の危険性は遅くとも二〇〇六年までに把渡されており「必要な行政指導や改善。停止命令を怠った」と、国に瑕疵(かし)があったと断じている。
 原発事故の責任をめぐっては、東電は「想定外の津波」を強調してきた。しかし、原告らは訴状で、00年ごろから経済産業省などで津波想定の見直しや対策の検計が始まり、津波の危険性が認識されていたと指摘。〇六年には原子力安全・保安院(当時)が中心となった勉強会に、東電も参加し「福島第一原発事故の津波に匹敵する津波想定などの危険性が示されている」と、「想定外」の主張を否定している。
 (中略)。
 原子力損害賠償法では、原発事故の賠償責任は一義的に事業者の電力会社が負う。これまでの多くの賠償請求訴訟が、東電を相手に提起されてきたのはこのためだ。今回は、事業者の東電と国の闇には連帯して賠償責任を負う「共同不法行為」があると位置付け、国の法的責任が法廷で問われることになる。
    (白名正和)
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