[2011_12_19_05]「貞観津波」に言及なし 土木学会への研究依頼文書 東電、説明と矛盾(東奥日報2011年12月19日)
 東京電力が貞観(じょうがん)津波(869年)をモデルに、福島第1原発に想定を超える津波が来る可能性を示した社内評価について、2009年に土木学会に研究を依頼したとする文書の全容が18日判明した。「貞観津波を特定して依頼した」とする東電の説明とは一致せず、特定の津波に言及はなかった。
 東電は、深刻な評価結果を放置して津波対策が遅れたとの批判に対し「放置せず、学会に審議を要請した」と反論してきたが、学会内では「文書は貞観津波の検討とは読めない。学会への責任転嫁ではないか」と疑問の声が出ている。津波評価をどう扱ったかは政府や国会の事故検証でも問題になる。
 土木学会が保管する依頼文書は09年6月11日付の「『委託研究』の申請について」。審議依頼項目は「波源モデルに関する検討」「数値計算手法に関する検討」「津波水位評価における不確かさの考慮に関する検討」の3点で、個別の津波への言及はない。文書は当時、本店で原発設備を統括していた吉田昌郎原子力設備管理部長(前福島第1原発所長)の名で出された。
 東電は08年12月、佐竹健治東大地震研究所教授(当時は産業技術総合研究所)が提案した貞観津波のモデルから津波の高さを試算。福島第1原発の想定の5・7メートルを大きく上回る最大8・9メートル(条件によって9・2メートル)の評価を得た。
 東電は、今月2日公表の社内事故調査委員会の中間報告書で、08年に実施した津波評価について09年6月に「土木学会に波源モデル発足について審議を要請した」と明記。2日の記者会見では「貞観津波を特定して依頼したか」との質問に「その通り」と答えた。
 東電の説明について、佐竹教授は「学会では依頼の前から貞観津波の審議をしていた。学会への責任転嫁ではないか」と語った。別の専門家は「明示的に指しているわけではないので(東電の説明に)違和感を持つ研究者もいる」と話した。
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