[2011_03_12_06]初の巨大複合型災害 津波、土砂崩れ、建物倒壊、火災・・・ 被害 極めて広範囲 気象庁会見 余震1カ月 M7級も 原因断層 長さ数百キロか 携帯・固定電話に障害 ケーブル断線 電力不足も 自動車の新集積地直撃 生産縮小で景気に影響も 「米軍協力 用意ある」ルース大使 各国が支援表明 発生後、円安に 一時83円台前半 東京円(東奥日報2011年3月12日)
 国内観測史上最大級となるマグニチュード(M)8.8を記録した東北・関東大地震。大規模な津波、土砂崩れ、建物倒壊、火災・・・。震源から離れた遠隔地でもゆっくり大きな揺れが続く「長周期地震動」による工場火災やエレベーター停止、大量の帰宅難民発生も加わり、被害は極めて広範囲に及んだ。東海地震や南海地震など「プレート境界型地震」で想定はされていたが、現代日本社会は初めて「巨大複合型災害」に直面した。
 ▽逆流する海水 地震発生から約30分。岩手県釜石市の三陸沿岸部を約4メートルの津波が襲った。午後4時前には仙台市の仙台新港で約10メートルの大津波を観測。がれきを巻き込み、河口から逆流した黒い海水が一気に住宅街をのみ込み、多くの車両を押し流した。慌てて乗り込んだ軽トラックを急発進させる人も。専門家は「津波の高さ、被害域の広さともに国内最大級」と指摘した。
 震源から遠く離れた首都圏。突き上げるような縦揺れが徐々に強まった後、激しい横揺れが長時間続く。繰り返し大きな余震が起きるたびに高層ビルはぎしぎしと音をたててきしみ、中の人々は船酔いのような感覚に襲われた。千葉県市原市の製油所では黒煙が周辺を覆う激しい火災が発生、重傷者も。

 ∇プレート境界地震

 気象庁によると、断層は長さ400キロ、幅200キロに及ぶとみられる。
 「想定される東海・東南海・南海の三つの地震が連動した規模より大きい。昨年2月のチリ大地震に匹敵する」と名古屋大の田所敬一准教授。
 政府地震調査委員会の阿部勝征委員長によると、「典型的なプレート境界地震」。地球の表面を覆う岩板の一部の太平洋プレートが、陸側の北米プレートの下に潜り込む場所で起きた。
 京都大防災研究所の大志万直人教授は「太平洋プレートに引きずられて下に潜っていた陸側のプレートが壊れ、元に戻る際に地震が起きた」と話す。
 太平洋プレートが潜り込む場所は、北海道から関東までの太平洋側に広がり、どこでも起きる可能性がある。過去にも十勝沖地震(2003年)や宮城県沖地震(1978年)が発生している。

 ▽前触れ?

 気象庁によると、地震を起こしたのは、やや南寄りの東向きと北寄りの西向きに押し合う「逆断層型」の動き。阿部委員長は「福島県や茨城県でも震度6強を記録しており、断層の破壊が南へ進行したとみられる」と指摘する。
 東北地方では9日にも大きな地震があった。東北大の大竹政和名誉教授は「今回の前触れだったのではないか」とみる。
 東海大のアイダン・オメール教授は「地殻は連続しているので、ある所でひずみが解放されると、別のところにひずみが集中することがある」と指摘。その上で「ニュージーランド地震も、昨年の地震で別の場所にひずみが集中し、2月に解放されたと考えられる。今回の地震も近いことが起きた可能性は十分ある」と話す。

 ∇未体験

 「日本が経験したことのないような地震。最善の努力を」。大畠章宏国土交通相は国交省災害対策本部の会合で指示した。画面には現場からのヘリ映像が映し出された。
 内閣府防災担当では、発生直後に約20人の職員が官邸に緊急参集。ある職員は「津波による被害の拡大が心配される。被災範囲もかなり広く、今後の対策も長丁場になりそうだ」と語った。
 「大変に大きな地震被害で、どこでどうなっているのか全貌が分からない」。片山善博総務相は青森、岩手、宮城、福島、茨城の各県知事と個別に電話で情報交換した後、記者団に被災地の状況を説明。「県と連絡が取れない市町村もあるようだ」と厳しい表情を見せた。
 京都大防災研究所巨大災害研究センターの牧紀男准教授は「経済面や生活面で首都圏、日本全体への影響が出てくる可能性もある。大都市型の地震災害といえる。人的被害がどれぐらい出ているのか心配だ」と話した。

 気象庁会見 余震1カ月 M7級も 原因断層 長さ数百キロ

 東北・関東大地震について気象庁は11日、三陸沖を震源とした地震のマグニチュード(M)は国内観測史上最大級の8・8と明らかにした。横山博文地震津波監視課長は記者会見で「余震もM7を超え、震度6弱程度、津波が警戒されるような地震が起こる可能性があり、1カ月程度は注意が必要」と述べた。
 さらに「破壊された断層の長さは、東北沖から関東沖までの数百キロに及ぶ可能性ある」との見解を示した。
 同庁によると、今回の地震のメカニズムは、プレート(岩板)境界で起きた逆断層型。東北で震度5弱となった9日のM7・3地震と同様のメカニズムとみられる。9日の地震が前震(前兆的な地震で、今回が本震の可能性もあるという。
 ただM7級の地震直後に大きな地震が発生する例はあまりなく、「特異な事例かもしれない」と指摘した。
 さらに「津波は第2波、第3波の方が高くなることがある。津波が釆ていない所でも大きな津波が来るかもしれず、しばらくは30メートル以上の高い所へ避難してほしい」と呼び掛けた。
 直後に発生した茨城県沖地震との関連については「余震かもしれないし、単独の可能性もある」とし、東海地震に与える影響については「直接の影響はないと思う」と述べた。
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