[2006_06_13_03]伊方原発 募る不安 東・南予震度5弱 「安全」に安堵なく 各地で生活ライン混乱 学校被害相次ぐ 壁に亀裂 モルタル片落下(愛媛新聞2006年6月13日)
 
 建物がきしむ大きな揺れ−。震度5弱。12日早朝、県内を襲った地震は、2001年芸予地震以来の規模となった。被害は比較的小規模にとどまったものの、日常生活を支えるライフラインは混乱。四国電力伊方原発周辺では、原発の耐震性をめぐって不安を募らせる住民の声も聞かれた。

 「原発は安全に運転を続けています」。地震から約40分後、原発を抱える西宇和郡伊方町の旧伊方町エリアに防災行政無線の放送が流れた。地震の想定が小規模すぎるなどとして志賀原発2号機の運転差し止めを命じた3月の金沢地裁判決や伊方原発3号機のプルサーマル計画を受け、原発の耐震性に関心を強める町民。放送を耳にしても安堵(あんど)感は薄かった。
 「耐震設計の想定を上回る地震が来ないとは言い切れない。原発老朽化の影響も心配」と自営業男性(65)。70代の男性は「たびたび地震が起きるようなら、プルサーマル計画をめぐる議論が長引くのでは」。地震を機に「計画は本当に大丈夫か」との不安が募る。
 発生間もないJR松山駅。足止めされた通勤通学客で構内はごった返した。対応に追われる駅員たち。特急列車の座席で出発を待つ乗客の表情は一様に疲れている。宇和島市の介護老人保健施設へ向かう男性施設長で(81)は「入居者が心配だ」。
 JR新居浜駅でも多くの利用客が立ち往生。その中に今治市の看護学校に通う女性(18)がいた。「大事なテストがあるのに…。運転再開を待つばかりです」。今治駅ではホームのタイルが破損、三枚が線路に落ちた。
 大きな地震が来れば、常に水道施設は被害を受ける。大洲市大洲の市営鉄砲町第一団地では、屋上給水タンクの配水管が切断。3時間余り断水し、30世帯70人に影響が出た。市はミネラルウオーター入りペットボトルを一世帯当たり二本配給。臨時設置された給水タンクからポリタンクに水をくんだ主婦(57)は「これでとにかくトイレが助かる」とほっとした表情を浮かべた。
 県内の震度はすべて3以上。エレベーターは乗用の計十六基が最大で約2時間止まった県立の四病院を始め、県営・市営の団地、道後温泉のホテル街でも停止が続出。さらにマンションでも。復旧を求め、管理会社の電話は鳴り続けた。「午前中は何件対応したか。集計もできなかった」。ある社員は早朝からの激務をこう振り返った。
 県教育委員会によると、12日早朝の強い地震で、県立学校四校と市町立小学校九校で校舎の壁に亀裂が入るなどの被害が、今治市や八幡浜市を中心に発生。けが人はなかった。
 今治北高は本館2,3階廊下の壁に長さ1−2メートルの亀裂ができたほか、トイレの水漏れも発生。今治南高と松山東高では校舎と渡り廊下の接合部付近で、表面部分やステンレス板が外れた。第三養護学校は小学部の教棟で外壁部のひさしからモルタル片が落下した。
 小学校では、今治市の常盤、鳥生、乃万、近見、朝倉、波方各小でコンクリートのかけらが落ちたり、壁に亀裂が走るなどした。西宇和郡伊方町の二見小は玄関ドアのガラスが破損。八幡浜市の宮内小は壁の一部がひび割れ、松陰小は蛍光灯つり下げ金具が切れた。
KEY_WORD:金沢地裁_運転差し止め判決_:GEIYO_:IKATA_:SIKA_: