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新たに3人仮処分申請 伊方原発

 四国電力が今月下旬の再稼働を目指している伊方原発3号機(愛媛県伊方町)を巡り、大分県在住の男女3人が4日、3号機の運転差し止めを求める仮処分を大分地裁に申し立てた。6月に別の男性1人も同様の申請をしており、申立人は計4人になった。4人はいずれも「伊方原発をとめる大分裁判の会」のメンバーで、併合審理してもらうよう地裁に上申書を出した。同会によると、第1回審尋は21日の予定。
 新たに申し立てたのは男性1人と女性2人で、杵築市の中山田さつきさん(62)、大分市の小坂正則さん(62)ら。弁護団の徳田靖之共同代表らとともに地裁に申立書を提出した。
 申立書では、伊方原発が国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」のそばにあり、大地震が起きて重大事故に至る可能性が高いと主張。最短45キロ先の対岸にある大分県も風向き次第で汚染され、生命や生活に深刻な被害を強いられるのは人格権の侵害だとしている。熊本・大分地震が伊方近くでの地震を誘発する危険性も訴えている。
 伊方3号機を巡る同様の仮処分申請は広島、松山両地裁に続き3カ所目。小坂さんは「広島、松山、大分の三方から伊方を取り囲むことになった」、中山田さんは「できるだけ早く審理してもらい、一日でも早く止めたい」と語った。
 四国電は「申し立てを受けたばかりで、コメントは差し控えたい」とした。
 大分裁判の会によると、仮処分は4人で申請したが、今夏には大分県在住者の参加を募り訴訟を起こす。既に50人以上が原告になる意向を示しており、「100人以上で提訴したい」としている。
 県境を越えて原発を止めたいと、住民や自治体が仮処分申請などに踏み切る動きは全国で相次いでいる。東京電力福島第1原発のように放射性物質が漏れ出す重大事故が起きれば、汚染が立地自治体にとどまらず、周辺自治体にも及ぶ可能性があるからだ。「立地自治体と違って再稼働に同意権も認められていないのに、事故時に『被害地元』になるのは理不尽だ」との思いも背景にある。
 3月には大津地裁が関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転を差し止める仮処分決定を出した。司法判断で稼働中の原発が止まる初のケースとなったことで注目を集めたが、申立人は福井県民ではなく、隣県・滋賀の住民だった。
 広島県の被爆者らも3月、伊方原発3号機の運転差し止めを四国電力に求めて広島地裁に提訴し、仮処分も申請した。今回、大分の住民有志が仮処分申請や提訴を決めたのは「広島でできるなら大分でもできる」と思ったのがきっかけ。さらに熊本・大分地震で「危機感が高まった」という。
 北海道函館市は2014年4月、国と事業者の電源開発を相手取り、津軽海峡を挟んだ青森県大間町で建設中の大間原発の建設無期限凍結を求め、東京地裁に提訴した。同市は「万が一の場合に甚大な被害を受ける地域の声をなぜ無視するのか」と訴え、建設には同市の同意が必要としている。

知事「安全確保、常に注視する」
 広瀬勝貞知事は4日の定例会見で、県内の住民が四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働をやめるよう求める仮処分を大分地裁に申し立てたことについて「いろいろ県民の皆さんが心配しているのだと思う。安全が上にも安全を確保しておく努力は必要で、常に注視していかなければいけない」と述べた。
 伊方3号機に関しては、愛媛県知事が再稼働に同意した昨年10月以降、大分県内の市町議会で再稼働の「中止」や「再考」、「慎重な対応」などを国に求める意見書の可決が相次いでいる。
 見解を問われた広瀬知事は「それはそれで一つの、議会の決議として伺ったということになると思いますね」とした。「(原発が)ない方がいいね、というだけで済むのならこれほどいいことはないが、なくて済むかどうか、というのが悩ましいところだ」とも述べた。


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