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KEY_WORD:島崎氏_地震動の過小評価:
 
参照元
原発の耐震性審査:10年で5回想定を超えた基準地震動_まさのあつこ

基準地震動の過小評価が大飯原発を含む原発で問題となっているのにはワケがある。

(大飯原発の耐震性審査:「15年前から」の過小評価論に議論尽くさず放置からの続き)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/masanoatsuko/20160731-00060579/

10年間で5回も過小評価だった「基準地震動」

 2006年に改訂された原発の耐震設定指針は、稀な大地震が来ても安全が損なわれない「基準地震動」を想定して設計するよう求めていた。だが、過去10年間でその想定を超えた事例は5回もある。福島第一原発はその一つである。
1.宮城県沖地震(2005年8月16日)女川原発
2.能登半島沖地震(2007年3月25日 )北陸電力志賀原発1号機、2号機
3.新潟県中越沖地震(2007年7月16日)柏崎・刈羽原発
4.東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)福島第一原発
5.東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)女川原発

3.11後、規制委は過小評価を放置して審査ガイドを策定

 事故後、原子力規制委員会は、過小評価の原因を特定、反映することもなく、新規制基準の内規「基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイド」(2013年6月19日)を定めた。

大飯原発で関電は敗訴

 大飯原発運転差止請求訴訟では、2014年5月21日に、この問題を含めて「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」と福井地方裁判所に判決された(以下、判決要旨より抜粋)。
「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である。むしろ、(1)我が国において記録された既往最大の震度は岩手宮城内陸地震における4022ガルであり、1260ガルという数値はこれをはるかに下回るものである」
「この地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない」

 原子力規制委員たちは、この判決を知っている。
 実は、高浜原発についての福井地裁判決(2015年4月14日)については「原子力規制委員会 3人以上の委員打合せ」として、2015年4月22日に原子力規制庁から(田中俊一委員長、更田豊志委員、田中知委員、中村佳代子委員、石渡明委員が)説明を受けていたため、大飯原発の判決については説明を受けていないことは奇異に思って、事実関係を広報に尋ねてみた。

 すると電話を10分強そのまま保留された後、「行ったことはないし、今後も行う予定も無い」と強い語気で回答があった。
 「今後」の予定を尋ねたつもりはなかったが、「なぜ高浜では行い、大飯ではやらないのか」と更に尋ねると、直接の担当者から広報とは違う回答が返ってきた。

 原子力規制庁法務室のハナダ氏によれば、実際は、「民民の裁判は、判決文をもってご報告にあがっている。高浜原発の判決は、たまたま時間がとれず、まとめて説明をした」のだと言う。そして、大飯原発の判決についても、各委員のデスクに個別に判決を届けて口頭説明したと言う。「少なくとも、判決を読んでいないことはない」という説明だ。

 三権分立の原理を知っているのであれば、原子力規制委員会は2014年時点から、判決を反映し基準地震動の過小評価の原因を自ら追及し、見直し作業に取り組むべきだった。

 それをせずに、熊本地震を契機に、改めて同じことが問われているのである。

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