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免震超高層への不安

 「AERA」(4/2号)に『免震超高層に潜む危険』とした記事が出た。超高層免震に対する専門家の危惧が紹介されている。その中から、いくつか紹介したい。
 「免震構造は、普通の建物より1ランク頑丈な設計を義務づけられているが、入ってくる地震力が少ないため、トータルでは耐力を落とした設計ができる。その分、鉄筋の数を減らせる。階数が高いほど割安にでき、30階建て以上だと、普通の建物より安く建てられる」
 超高層免震(特にマンション)がこれほど増えるのは建設費用が高くないか、安くできるからではないかとずっと思っていたが、設計者が言ったのは初めて目にした。
 「いまは、ちょっと異常な気がする。『この場所で免震はやめたほうがいい』と思っても、社内に、それを言える雰囲気はない。依頼主にもし言ったとしても、技術力がない会社だと思われ、『だったら、他社にやってもらう』となってしまう」
 会社に勤めていると、こういうジレンマはあるでしょう。設計者個人の倫理観と組織の倫理があっていない場合、どうすべきか。技術者倫理の題材になりそうなテーマであり、難しい。そういうジレンマを抱えながら、できるだけ良い設計をするようにするしかない・・・・
 「超高層免震だと検討しなければならない要素が出てくるのは間違いない。だが、認識されている課題は技術的に解決できている。用途にあった免震装置を組み合わせることで十分に対応可能だ。耐震構造はひびが入って地震力を吸収する仕組みで、建物を傷める行為。それを考えると免震構造の方が確実に安全だ。超高層免震がネガティブということは決してなく、技術力を生かし、むしろ積極的にコントロールして建設していくべきだ」
 そうかもしれない。
 免震構造では設計で想定した地震動に対しては十分な効果を発揮する。それを確認した上で設計されているわけだから当然かもしれないが。このアエラの記事でも、結局問題としているのは、想定していない問題に対する対応力ということになる。免震建物の「余力」をどれだけ確保しているのか。「余力」がどれほどあればいいのか。少なくとも免震構造が終局限界に至るまで、どの程度の余裕・余力があるのかを確認することが必要ではないか。
 問題は、その「余力」がどの程度あればいいのか。簡単に答えはでない問題だが、超高層建物に求められる安全性が他の低層建物と同じ安全性でいいというわけにはいかないのではないか。適切な余裕・余力を見込んだ設計が求められるのは間違いない。

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