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老朽原発はなぜ危険なのか 高温、高放射線にさらされた配管等の腐食(とくに溶接部)は深刻だ 木原壯林さん(若狭の原発を考える会)に聞く


 老朽原発がとりわけ危険であることは、川内原発1号機が、再稼働(2015年8月11日)の10日後に早速、復水器冷却細管破損を起こし、高浜原発4号機が、再稼働準備中の2月20日、1次冷却系脱塩塔周辺で水漏れを起こしたことからも明らかだ。
 いずれも、重大事故に繋がりかねない深刻なトラブルだった。高浜原発4号機は2月29日、発電機と送電設備を接続した途端に警報が鳴り響き、原子炉が緊急停止した。関電が命運をかけたはずの再稼働はトラブル続きである。それは緊張感を持って施設を点検保守する体制が関電にはないことを示している。

◎大事故の危険性
 川内原発1号機は昨年8月20日、タービンを回した後、水蒸気を水に戻すために海水を流す復水器内のチタン細管(直径25ミリの肉薄細管)5本が破損した。同細管は、長期にわたって高温の海水に接触してきたもので、とくに溶接部において腐食が進んでいることは容易に予測された。このような細管は3系統約8万本あり、他の細管の破損も危惧される。
 また、この細管破損によって2次冷却水系に塩分が混入すれば、脱塩装置が設置されているとはいっても、残留の塩によって、185〜255度Cの高温になる2次系の熱交換器(蒸気発生器)の1万本以上ある伝熱細管(インコネル‥ニッケル―クロム合金)の腐食が加速されることが予測される。
 伝熱細管が、腐食・破損すれば、150気圧の1次冷却水が噴出し(=冷却材喪失)、大事故(メルトダウン)に至る可能性が大きい。

◎高浜4号機の緊急停止
 2月20日15時42分頃、高浜4号機の一次冷却材系統の昇温に向け、化学体積制御系統の水をほう素熱再生系統に通水したところ、「一次系床ドレン注意」警報が発信した。4号機の原子炉補助建屋の脱塩塔室前の床面に水溜り(約2メートル×約4メートル×約1ミリ‥約8リットル)が発見された。放射能量は約1.4×10の4乗ベクレルだ。
 この水溜り以外にも、床面に漏れた水が原子炉補助建屋サンプ等に回収されたものもある。これらを全て合わせると約34リットルになる。その放射能量は約6×10の4乗ベクレルだ。
 関電は、水溜りの推定放射能量である約1.4×10の4乗ベクレルは、国のトラブル事象の基準値3.7×10の6乗ベクレルに比べ、200分の1以下と発表した。
 22日になって、「弁のボルトの締め付け不備が原因」と発表した。たるみ切った検査だったことや、そもそも検査しにくい構造であることは明らかだ。
 一方、29日14時、多くの報道関係者が詰めかける中、高浜4号機の発電、送電のスイッチを入れた途端に、発電機、変圧器に異常電流を検知し、原子炉が緊急停止した。

◎老朽原発の問題点
イ.高温、高放射線にさらされた配管等の腐食(とくに、溶接部)は深刻だ。電気配線の老朽化も問題がある。
ロ.コンピュータ制御や機器測定をしているが、コンピュータや計測機器は建設時とは全く異なっている。原子炉の大部分はそのままにして、これらの部分のみ交換したからだ。
ハ.建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分は多数ある。すべてが見直され、改善されているとは言えない。例えば、基準地震動の過小評価。安全系と一般系のケーブルの分離敷設の不徹底など。
ニ.建設当時の記録(図面など)が散逸している可能性があり、メンテナンスに支障をきたしている。
ホ.建設当時を知っている技術者はほとんどいないので、非常時や事故時の対応が難しい。
ヘ.とくに、ウラン燃料対応の老朽原発でMOX燃料を使用することは炉の構造上問題がある。
 (3月17日「未来」第196号より許可を得て転載)

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