戻る <<前 【記事38200】県のヨウ素剤配備 課題山積…新潟(読売新聞2014年5月22日) 次>> 戻る
KEY_WORD:新潟県:東京電力柏崎刈羽原子力発電所:避難準備区域UPZ、半径5〜30キロ圏内:泉田知事:長岡市原子力安全対策室の小嶋洋一室長:即時避難区域PAZ:県医務薬事課の水沢泰正課長:
 

県のヨウ素剤配備 課題山積…新潟

 東京電力柏崎刈羽原子力発電所の事故時に必要となる住民向けの安定ヨウ素剤が配備・更新されていなかった問題は、22日で公表から1か月となる。
 この間に未配備分を確保する素早い対応で、新潟県はとりあえず体面を保った格好だが、住民への個別配布など課題は山積している。
◇5保健所に分配
 問題を公表した4月22日に、県は今夏までに調達する考えを示したが、3日後にまずは未更新分を配備した。更に薬剤卸売会社の在庫から五月雨式に調達するなどし、今月16日までに避難準備区域UPZ、半径5〜30キロ圏内の44万4800人の1・5回分に相当する132万6000錠を確保。2012年度中に10〜30キロ圏内に配備すべきだったのと同じ量がそろい、泉田知事は20日の記者会見で「とりあえず当初計画に戻った」と淡々と話した。
 発覚前までUPZ分の保管先は新潟市西蒲区の旧県立興農館高校だけだったが、県は問題公表後に市町村の要求を受け、出先の各地域振興局に併設された5保健所に分配した。
 分散配備で一歩進んだともいえなくもないが、長岡市原子力安全対策室の小嶋洋一室長は「昨年春から1か所ではまずいと県に要望してきたがそれきりだったので、やっと動いたという感じ」と冷ややかだ。保健所がない見附市も、「市内への配備に向けて候補施設を定めてほしい」と話す。
◇住民への説明も
 緊急時のヨウ素剤服用に向けた準備も今後の大きな課題だ。
 原子力規制委員会が昨年示した配布や服用方法などの解説書では、5キロ圏内の即時避難区域PAZでは、医師の説明会を開催した上で住民に事前に個別配布することを定めた。UPZについては、避難時に配布できる態勢を整備しておくことを明示している。
 ただ、県は2月に示した行動指針で「PAZ内は事前配布が原則」「詳細は今後、県緊急被ばく医療マニュアルに記載」などとしただけ。県医務薬事課の水沢泰正課長は「一口に事前配布といっても、PAZ内の2万1700人分の管理は簡単にはできない」と話し、柏崎市防災・原子力課の小黒昌司課長も、「説明会には医師会や薬剤師会の全面的な協力が必要。1人1人について説明を受けたのかどうかも管理しないといけない」と指摘する。
 指針は、PAZの検討結果を踏まえてUPZの対策を検討するとしており、UPZの詳細が決まるのは更に先になる見通しだ。
 ヨウ素剤の事前配布に向けた県と市町村の具体的な協議が進まない中、県側の不祥事で1か月間を浪費したことで、両者の溝はさらに開いたことになる。
 「知事は東電が福島第一原発の炉心溶融メルトダウンを認めるまで2か月かかったと責めるが、県は柏崎市から問題を指摘されてから公表まで2か月かかった。どうしてなのか」。UPZ内のある自治体幹部はこう皮肉った。
戻る <<前 【記事38200】県のヨウ素剤配備 課題山積…新潟(読売新聞2014年5月22日) 次>> 戻る