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「神」になった規制委 熊本地震1580ガルでも原発停止否定 川内原発基準地震動620ガルの2.5倍超を無視

 今月14日に発生した熊本地震以来、震度1以上が観測された地震は697回(20日15時気象庁発表)。大きな揺れがある度に、テレビの臨時ニュースやテロップが流れるといった状況だ。ニュース原稿の最後に来るのが、震源に近く、国内で唯一稼動中の川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転状況。視聴者が、川内原発の動向に懸念を示している証左である。
 「いったん原発の運転を止めてもらいたい」――熊本、鹿児島のみならず、多くの国民がそう思っているはずだが、原発を止める権限を持つ原子力規制員会は、そうした声を一顧だにしない。川内原発の基準地震動は620ガル(ガルは加速度の単位)。今回、川内の地震動が最大8.6ガルしかなかったからだという。
 どうやら規制委という組織の意識は、一般国民と相当にずれている。(写真は川内原発)

国民の声、無視する規制委
 18日、熊本における一連の地震を受けて臨時会議を開いた規制委は、“原発を止める必要はない”という結論を出した。会議後の会見で原発を止めない理由を聞かれた田中俊一委員長は、「原子炉規制法上は安全上重大な懸念がある場合には止める権限があります。でも、それは根拠がなく、そうすべきだという皆さんのお声があるから、そうしますということは、するつもりはありません。政治家に言われても、そういうつもりはありません」と断言。原発に懸念を示す国民の声を、頭から否定する姿勢を見せた。国民や政治家より偉い人がいたとは驚きだ。

 規制委の強気の根拠は、地震動の数値だ。原発の耐震設計においては、安全性が確保される設計を行うため、各原発施設ごとに基準となる地震動の数値を設定しており、これを「基準地震動」と呼んでいる。川内原発の基準地震動は620ガル。14日からの一連の地震で観測された川内原発内の地震動は最大で8.6ガル。同原発の原子炉を緊急停止する設定値は160ガルとされ、止めるほどの緊急性も科学的根拠もない、というのが規制委の見解だ。

 しかし、「原発を止めてもらいたい」と願っている国民の多くは、今回の地震動の数値がどうのという話を聞きたいわけではあるまい。自然災害は人知を超えるもの。現に熊本地震を予知できた学者などいなかったはずだ。規制委が直視すべきは、誰も予想できなかった熊本の地震で、川内原発の基準地震動を大きく超える数値が観測されていることだろう。

熊本襲った1580ガル
 「国立研究開発法人 防災科学技術研究所」(防災科研)は、14日と16日の熊本地震を解析。観測された地震動のうち、上位10か所の数値を公表している。同研究所の了解を得、作成された表を簡素化した。
http://hunter-investigate.jp/news/assets_c/2016/04/%E9%98%B2%E7%81%BD%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%802-1-thumb-285x320-17122.jpg
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 14日の「前震」はマグニチュード6.5で震度7。地震動(最大加速度)は最大の益城町で1580ガルを観測していた。川内原発の基準地震動620ガルの2.5倍超。次に高かった矢部でも669ガルで、こちらも川内の620を超えている。 
※防災科学技術研究所元データは
http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/topics/html20160414212621/main_20160414212621.html
の最大速度上位10観測点

 16日の本震はマグニチュード7.3で震度6強(気象庁は、20日に震度7に訂正)。各地の地震動は、益城=1362ガル、宇土=882ガル、熊本=843ガル、矢部=831ガル、菊池=800ガル、砥用(ともち)=778ガル、湯布院=723ガル、小国=687ガル、大津=669ガルと、ほとんどの地点で川内の620を超える数値を観測していた。10番目の豊津にしても612ガル。本震の凄まじさを物語る結果だ。
※防災科学技術研究所の元データは
http://www.kyoshin.bosai.go.jp/kyoshin/topics/Kumamoto_20160416/kumamoto201604160125.pdf
の最大速度上位10観測点

川内原発周辺に複数の活断層
 鹿児島や熊本の県民が、川内原発を止めてほしいと願うのは当然だろう。下は、九州電力が規制委に提出した基準地震動の説明資料の一部だが、熊本側から川内原発側付近に向かって数多くの活断層が存在しているのが分かる(グリーンの円と赤いゴシック太字はHUNTER編集部)。
http://hunter-investigate.jp/news/assets_c/2016/04/%E4%B9%9D%E9%9B%BB%E8%B3%87%E6%96%99-thumb-533x629-17127.png
 14日の前震を引き起こした日奈久断層帯の中の「八代海区間」と呼ばれる活断層帯だ。熊本地震の震源域は、東は大分側に、南西は八代海側に延びる状況となっており、川内原発付近の「市来断層帯」「甑断層帯」「吹上浜西方沖断層」と連動する可能性も指摘されている。

規制委は神か!?
 「原発を止めるべき」との主張は、一連の揺れで観測された地震動の大きさだけでなく、今後同程度かそれ以上の地震が川内を直撃した場合に備えよという考えに基づくもの。予防的措置の必要性が理解できないのなら、規制委は福島第一原発事故以前の原子力ムラ以下。硬直化した専門家集団が、どれだけ愚かな結果を招くかはフクシマが証明している。

 規制委の田中委員長は国民を見下す言動の多い人だが、“川内原発で620ガルを超える地震は来ない”という科学的根拠を示すことなどできまい。規制委は、いつから神になったのか?

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