[2020_03_31_01]九州電力 送配電を分社、広渡社長「設備資産を活用」(日経新聞2020年3月31日)
 
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九州電力 送配電を分社、広渡社長「設備資産を活用」

 九州電力は4月1日、企業や家庭に電気を届ける「送配電部門」を分離し、子会社の九州電力送配電(福岡市)が発足する。再生可能エネルギーの普及が進むなか、送配電網の独立性を高める「発送電分離」政策に伴うものだ。新会社は老朽化した設備を更新して送配電網を維持する必要があり、コスト削減など経営の効率化が求められる。
 「電力の安定供給は変わらぬ使命だが、公平性と中立性を高める必要がある。責任の重さに身が引き締まる」。九州電力送配電社長に就任する九電の広渡健常務執行役員はこう語る。
 発送電分離は東日本大震災を機に国が進めてきた電力システム改革の総仕上げという位置付けだ。従来は大手電力会社が発電から小売りまで手がけてきた。震災後、太陽光発電などの新電力事業者が増加。国は電気を届ける送配電網を電力大手が独占していると、新電力に対し競争上不公平になるとし、各社に分離を命じた。
 九電送配電は九電本社内にオフィスを置くが、公平性や中立性を保つため、4月1日以降は九電社員は立ち入れなくなる。会議は壁のある部屋でするといった決まりがあるという。経営上の独立性を保つため、九電の役員との兼務も禁じられている。
 課題は送配電網の維持・更新に向けた収益力向上。九州全域に張り巡らされた送電網は変電所や送電線、鉄塔、電柱など多様な設備から成る。ただ設備の老朽化が進み、今後設備更新費用が膨らむ見通しだ。
 新会社の収益の柱は送電費用として発電事業者から受け取る「託送料金」になる。海外では発送電分離後に託送料が上がり、電気代上昇を招いた例もあるが、広渡新社長は「なんとか値上げせずに頑張りたい」と話す。
 収益を確保するため、新会社はオール電化や電気自動車(EV)の普及推進に力を入れる。離島での発電・送配電ノウハウを生かし、海外進出も視野に入れる。
 コスト削減も課題だ。山間部の鉄塔などは現在、人が直接現地に行って点検しており、負担になっている。託送料金の低減に向け、ドローン(小型無人機)や人工知能(AI)を活用した効率的な点検・保守技術の確立を急いでいる。

広渡社長に新会社としての展望や課題を聞いた。

――社内カンパニー制を経て独立します。
「安定供給という基本的な使命は変わらない。これまでも中立性や公平性への取り組みは徹底してきた。4月からもさらに深めていこうと考えている」

――分社化で独立採算制になります。
「九州域内の電力需要をどう増やすかが存続のカギを握る。九州で使われるエネルギー全体に占める電気の割合は3割程度。電化促進は営業部門の仕事という意識が強かったが、今後は自ら取り組まなければいけない。技術者が多い会社だが、意識を高めていきたい」
 「資産の活用や新規事業育成も必要になる。例えば、電柱が持つ位置座標情報の外販や、携帯電話の基地局の設置を計画している。もう一つは海外事業だ。再生エネルギーの導入や離島での発電事業で培った技術やノウハウを発展途上国などで生かせると考えている」

――1月に発生した新電力向け電気料金計算システムの障害が長引いています。
「顧客に大変ご迷惑をおかけし、申し訳なく思っている。システム改修は3月中に終わらせる見込みで、ほぼメドは付いた。電気料金は様々な形態があるにもかかわらず、移行に向けたテストが不十分だった。システム開発各社と連携し、しっかり制御していきたい」(聞き手は山田和馬)
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