戻る <<前 【記事58261】常識くつがえす九州大地震は「原発動かすな」の警告 電力会社、原子力規制委員会、国のウソ・ごまかしを徹底追及しよう! 渡辺寿子(原発いらない!ちば) (上)(たんぽぽ舎メルマガ【TMM:No2819】_12016年6月29日) 次>> 戻る
KEY_WORD:_
 
参照元
常識くつがえす九州大地震は「原発動かすな」の警告 電力会社、原子力規制委員会、国のウソ・ごまかしを徹底追及しよう! 渡辺寿子(原発いらない!ちば) (上)

◎「常識」くつがえした九州・熊本大地震

 今回の九州縦断、熊本大地震はこれまでの地震についての「常識」を覆すもので、多くの地震学者から驚きの声が上がり、気象庁も振り回されました。
 その大きな理由は「震度7」の揺れが4月14日、16日と連続して起きたこと、また14日の地震は前震であり、後の16日の地震が本震であったことです。
 「震度7」は1947年に発生した福井地震をきっかけに制定されましたが、その後実際に計測されたのは3回。
 今回の熊本大地震で3日の間にそのうちの2回が観測されたわけです。6月12日も八代市で震度5弱の地震が起きるなど大きな余震が続き、収束していません。地震学者は、これからも何が起きるか分からないと口を揃えて警告しています。
 これは原発の危険性を考える上で非常に重要です。従来の耐震設計は1回の大きな揺れを想定していたので、熊本大地震のような事態で原発の重要構造物がどうなるか検証が必要です。

◎川内から6kmで震度5弱記録

 川内原発施設内で計測した揺れは数ガルで原子炉自動停止設定値(水平160ガル、垂直80ガル)を下回るとして九電は川内を止めません。
 しかし川内原発から5.6kmの高江観測点で、本震の4月16日に震度5弱、96.8ガルを記録していたのです。規制委はこの事実を伏せ、川内原発は震度3で異常なしとだけ報告しました。震源が原発から100km離れた所だったのに、原発のすぐ近くで震度5弱を記録したのです。震源がより川内原発に近い地震が起きる可能性は十分あります。

◎過去に例がない高い縦揺れ観測

 今回の大地震では過去に殆ど例がない極めて大きな上下動(縦)の揺れが観測されました。益城町の強震計で、4月14日の地震で重力加速度を大きく超える1399ガルという縦揺れが記録されていたのです。これも「横ずれ断層型地震は縦揺れが小さい」という「常識」を覆すものでした。高知大防災推進センターの岡村真特任教授はこれは新たな「知見」であり、伊方原発の耐震安全評価の見直しを提言しました。

◎制御棒駆動機構の耐震性

 九電が規制委に提出した原子炉設置許可変更書類の殆どが「白抜き、黒枠」で公表されました。耐震設計関連書類の中でも制御棒駆動系については殆どのデータが隠されていました。規定時間内に制御棒が挿入可能かどうかというのは、地震に襲われて直ちに原子炉を止められるかという問題です。失敗すれば直ちに過酷事故につながります。
 九電は地震応答解析で実規模試験を行った結果があるにもかかわらず、それを無視して机上の解析だけを使って基準地震動Ssにおいても問題なく挿入可能という結論を出しています。自由落下で挿入する加圧水型原子炉の制御棒は、重力加速度を超える縦揺れと大きな横揺れが重なった波に襲われたら、規定の2.5秒で制御棒を挿入することは不可能です。大きな揺れになれば制御棒そのものが破損してしまう恐れすらあります。
 九電は再稼働に都合の良いデータを使って再稼働のための書類を作り、規制委はそれを追認するばかりです。

◎規準地震動のまやかし 地震で配管は破断される

 今、日本にある原発はすべて1981年策定の旧耐震設計審査指針に基づいた時代かまたはそれ以前に建てられているものです。当時の規準地震動は372ガルでした。2006年に耐震設計審査指針が改定され、川内原発の基準地震動は540ガルになりました。そして新規制基準に基づく審査の中で620ガルに引き上げられました。このように基準地震動は上げられてきましたが、設備の本質は変わっていません。新規制基準に基づいて配管類を強化しようとすれば厚みを増すのが手っ取り早いわけですが、配管が1ミリでも太くなると構造物を通せません。通せるようにするためには大工事となり、電力会社はそこまでする気はありません。そのため旧耐震設計審査指針に基づいて作った配管が620ガルでも耐えられるという作文をしてきたのが、工事認可申請書の内容であった。
 強度不足になっているのを隠すために「商業上の秘密」として「白抜き、黒枠」にしたと山崎久隆さんは指摘しています。

◎四国電力東京支社前での抗議行動

 常時高温高圧の冷却水が流れる主配管は元の強度が高いので、地震の力を大きくしても「余裕」の中に収まります。しかし脆弱な蒸気発生器の細管やECCS(非常用冷却装置)のように口径の小さい配管などはもともと「余裕」が少ない。特に深刻なのが加圧水型特有の加圧器と蒸気発生器です。熊本大地震のように大きな力が2度、3度もかかれば破損する危険性が高く、破損すれば一次冷却水喪失事故に至ります。 (下)に続く。

戻る <<前 【記事58261】常識くつがえす九州大地震は「原発動かすな」の警告 電力会社、原子力規制委員会、国のウソ・ごまかしを徹底追及しよう! 渡辺寿子(原発いらない!ちば) (上)(たんぽぽ舎メルマガ【TMM:No2819】_12016年6月29日) 次>> 戻る