戻る <<前 【記事50490】東京新聞「発言」・ミラー ◆原発規制 抜本見直しを 大学名誉教授 三村翰弘 (東京都練馬区)(たんぽぽ舎メルマガ【TMM:No2741】2016年3月24日) 次>> 戻る
KEY_WORD:_
 
参照元
東京新聞「発言」・ミラー ◆原発規制 抜本見直しを 大学名誉教授 三村翰弘 (東京都練馬区)

 去る3月9日の大津地裁による高浜原発3・4号機の運転停止決定は、未曾有の福島第一原発事故を念頭におけば、極めて妥当である。原子力規制委員会が定めた規制基準は当初から問題が多かった。私は特に2点を強調したい。
 その1は、福島の事故原因を究明せず拙速に設定したこと。当局と東京電力は、津波による全電源喪失に伴う冷却機能の停止が原因だとするが、これには世界的に異論がある。国会事故調は「地震動による破損がなかったとは結論できない」と断じた。また、英国科学専門誌「ネイチャー」478号も紹介した、事故による核分裂生成物質の全地球規模拡散に関するA・ストール氏らの国際調査研究は、津波到達以前に原子炉機器が破損していた可能性を指摘する。原因究明がない時点での基準は科学的姿勢にかけ、説得力がない。
 その2は、住民避難計画が基準の対象外になっていること。この住民避難の課題は、「原子力災害対策指針」により「防護準備区域」などが定義づけされたが、避難計画の妥当性審査は規制基準にはなっていない。審査当局や原発事業者の責任回避といえよう。国際原子力機関(IAEA)や米原子力規制委員会(NRC)は、住民避難の課題を原発立地の基準・規制に定める。ショーラム原発(ニューヨーク州)は完成後、住民避難計画が不適という理由で、営業が許可されず廃炉となった。
 事故の因果関係を究明反映する科学性を貫き、未来にも安全を保障する責任性を負うのでなければ、原発を審査・運用する資格はない。規制基準は、抜本的に見直すべきである。
   (3月24日東京新聞朝刊5面「発言」・ミラーより)
戻る <<前 【記事50490】東京新聞「発言」・ミラー ◆原発規制 抜本見直しを 大学名誉教授 三村翰弘 (東京都練馬区)(たんぽぽ舎メルマガ【TMM:No2741】2016年3月24日) 次>> 戻る