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社説 [川内原発免震棟] 白紙では筋が通らない


 これもまた「安全神話」復活の類いだろうか。九州電力が川内原発の免震重要棟の新設計画を撤回した。

 免震棟の建設は原子力規制委員会の審査の前提だった。ところが合格したら一転して白紙に戻す。到底筋の通らない話である。

 規制委の田中俊一委員長は6日の記者会見で、「審査をクリアできればもういい、というところが(九電に)あるのかもしれない」と不快感を示した。

 免震棟は過酷事故対策の要となるべき重要な施設だ。「口約束」で済ますつもりなら、規制委ならずとも安全対策の覚悟を疑いたくなる。

 コスト優先、安全後回しの判断があったのか。納得できる説明が必要だ。

 5年前に起きた東京電力福島第1原発事故で、現場拠点になったのが免震棟だ。もしなかったら、事故対応はさらに困難を極めたに違いない。

 九電は川内原発の審査に際し、免震棟をことし3月末までに完成させると約束していた。設置は新規制基準の合格証にも盛り込まれた。

 地上3階建て延べ床面積約6600平方メートル。有事の司令塔となる「緊急時対策所」は2階に置く。これが川内原発免震棟の当初計画である。

 1号機は全国に先駆けて昨年8月、2号機も10月に再稼働した。そして12月に入って、免震棟計画を撤回した。

 九電は代わりに免震棟完成までの暫定的措置として設けた「代替緊急時対策所」を使う、とする。代替司令塔の広さは当初計画の3分の1以下になる。

 近くに地上2階地下2階建ての「耐震支援棟」を建て、医務室や宿泊室などを置くともした。

 しかし、支援棟の広さや収容人数はまだ決まっていないようだ。事故時に十分役割を発揮できるのか、心もとない。

 田中委員長は「より安全な方向への変更なら歓迎するが、費用面が理由なら相当厳しく審査をしていく」と指摘した。

 約束をほごにされた規制委だ。自らの真価が問われていることも忘れてはならない。

 九電は「技術的な検討を重ねて総合的に判断したが、費用も関係ないわけではない」と、撤回した理由を説明する。

 川内原発の再稼働は地元同意のあり方や避難計画の実効性、使用済み核燃料の最終処分など、多くの課題を積み残した見切り発車でもあった。

 安全神話復活は認められない。

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