【記事18744】揺らぐ安全神話 柏崎刈羽原発 「基準地震動」国の検討本格化へ 断層帯評価に早くも疑問符 専門家 傾斜の想定「甘い」 深部探査 必要性を強調 50度で作成 解析で推定(新潟日報2008年6月4日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が被災したことを受け、東電が新たに想定した「基準地震動」(加速度、単位ガル)。同原発周辺で将来起こり得る最大地震の揺れの強さを示すもので、従来の約5倍に当たる最大2280ガルと設定された。耐震設計の前提となるこの値は妥当なのか。国の作業部会などでの検討が今月から本格化する。専門家からは、基準地震動策定で考慮された「長岡平野西縁断層帯」の東電の評価をめぐり、早くも疑問の声が出ている。
 
 東電の評価では、長岡平野西縁断層帯は新潟市沖から小千谷市まで連なり、同原発の陸側を走る。同時に動けばマグニチュード8.1の大規模地震を引き起こす可能性があるとされる。
 しかし、この断層帯による地震が原発に与える揺れの強さを最大826ガルと設定した。中越沖地震の震源とされる「FーB断層」(同原発沖約18.5キロ、長さ約34キロ)が活動した場合を想定した2280ガルの半分を下回る。
 
 ■50度で作成
 
 東電はその根拠として、同断層帯で地震を引き起こす震源断層モデル(推定)を作成した。複数の専門家が懸念するのは、その位置や断層面の傾斜についてだ。
 同モデルは長さ91キロ、幅15キロに及び、地下6−17キロの深さで原発の西側に向かって50度の傾きで下に延びる=図参照=
 県「原発の安全管理に関する技術委員会」委員を務める立石雅昭・新潟大教授(地質学)は傾きについて「急すぎる。評価が甘いのではないか」と疑問視する。
 震源断層モデルとは、地表での活断層分布などから、地下深くの震源断層の位置や形を推定したもの。基準地震動は、そこからの揺れの想定を基に導き出す。
 同断層帯の地表部分は、原発にほど近い長岡市西部を通るが、地下の震源断層は急傾斜のため、原発直下では届いていないとされる。仮に傾斜が緩ければ原発にさらに近づき、原発に及ぶ揺れの想定が大きくなることが予想される。
 「震源断層の傾斜がもっと緩ければ(原発への揺れの)影響も変わる可能性がある。そういったばらつきをどうみるかは今後の議論になるだろう」。原発の耐震安全性などを検討する国の作業部会委員の杉山雄一・産業技術総合研究所活断層研究センター長は言う。
 
 ■解析で推定
 
 国内の原発では最大の基準地震動を策定し、過去の地震想定の甘さを認める形となった東電。その根拠とする震源断層モデルはあくまで、活断層周辺の浅い地層のデータなどを基に解析した推定に過ぎない。
 東大地震研究所の佐藤比呂志教授(構造地質学)ら複数の専門家は以前から、原発の耐震安全性をより正確に確認するため、地下深部の探査で断層面の位置を確かめる必要性を訴えている。
 しかし、東電は今回、それを実施していない。古田昌郎・原子力設備管理部長は基準地震動を発表した会見で(データによる解析だけで)問題ない」と強調した。
 佐藤教授は東電の同断層帯モデルについて「地下深部を調べないのであれば、モデルを原発にとって(揺れの影響が大きい)最も危険な場所に想定するべきだ」と主張している。
 
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