[2020_03_04_01]データ改ざん、住民同意なしで対策工事強行 なりふり構わず違法、無法を進める日本原電 こんな会社が原発運転したら事故の対処も不可能 (上)(2回の連載) 渡辺寿子 (原発いらない!ちば)(たんぽぽ舎2020年3月4日)
 
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データ改ざん、住民同意なしで対策工事強行 なりふり構わず違法、無法を進める日本原電 こんな会社が原発運転したら事故の対処も不可能 (上)(2回の連載) 渡辺寿子 (原発いらない!ちば)


原発維持のためには何でもやる
「禁じ手」=「データ改ざん」に手を出した

 規制委が「原発直下に活断層」の可能性を指摘し、再稼働が絶望的な日本原子力発電(以下原電)敦賀2号機(福井県敦賀市)。
 この敦賀2号の再稼働を諦めない原電は「禁じ手」を打ったのです。
「データ改ざん」です。
 「データ改ざん」(書き換え)があったのは、敦賀2号機の敷地内にある「K断層」近くのボーリング調査結果です。
 過去に原電側が規制委に示した資料は、採取した地層を肉眼で観察した結果、「未固結粘土状部」と記されていました。
 ところが規制委が2月7日に開いた審査会合に提出された資料では、この部分の記述が「固結粘土状部」に変っていたのです、規制庁の審査官らが気づき、こうした書き換えは少なくとも十数カ所に上るとしました。
 こうした規制委の指摘に対し、原電は、ボーリング調査した地層を顕微鏡などで詳しく調べて「固結」の結果が出たため、肉眼の観察結果と合わなくなり、書き換えたと主張。
 和智信隆副社長は、規制委側に説明なく書き替えたことを認めましたが、「悪意はなく、意図的ではない」とあきれた開き直りの釈明をしました。意図的でなく誰が書き換えなどするのでしょう。
 このような原電側の態度に、いつも電力業者に対して甘い対応の規制委ですが、さすがに規制委側の出席者から「元データを書き換えるのは絶対やってはいけない。倫理上問題だ」「書き換えたことについて何ら説明がなかった」などと批判が噴出。審査会合は打ち切りになり、規制委は他にも書き換えがないか調べて報告するよう原電に求めました。

 追い詰められた断末魔の悪あがき

 原電は原子力発電所を持ち、原発で出来た電気を一般の電力会社に卸売りする売電事業者です。収益を上げるには、自社の敦賀原発や東海第二を動かすしかありません。
 敦賀1号は廃炉が決まり、東海第二は再稼働が見通せない。無理矢理にでも敦賀2号を再稼働させないと売電事業者として生き残れないと、追い詰められた果ての悪あがきです。
 原電は敦賀2号の活断層問題が持ち上がってからずっと、活断層と公式に認定させまいと、様々妨害行為をしてきました。2012年12月、島崎邦彦委員長代理(当時)ら5人の専門家チームは、敦賀2号の敷地の直下を走る断層「D−1破砕帯」が活断層の可能性が高いと全員一致で判断し、2013年5月には活断層と断定する報告書をまとめました。
 報告書が公表された2013年5月には、専門家チームの一人一人に「厳重抗議」と題した文章を送りつけるという、およそ非常識な異様な手段で圧力をかけるということまでしています。
 そして2015年11月には敦賀2号の再稼働に向け、新規制基準に基づく審査を申請しました。こうした経過をたどった挙句今回のデータ「改ざん」にまで行きついたのでした。
 電力会社は原発推進に支障があると判断すれば事実の隠蔽、虚偽報告など枚挙に暇がな程してきましたが、すぐばれるデータ改ざんをした原電のこの間の行動は、まさに将来への展望を失った原子力産業の姿を象徴するものです。
 龍谷大の大島堅一さんは、「今回の改ざんは、そうまでしなければいけないほど追い込まれている証し。断末魔のように思える」と述べています。
 原子力産業の衰退は誰も止めようがなく、そう遠くない将来寿命が尽きるでしょう。
 しかしすんなり、おとなしく消えゆくとは限らないのが怖いところです。
 断末魔の悪あがきの時に何が起きるか、何をしでかすかわかりません。
 それを止めるためには、私たちはただ静かに見守っているわけにはいきません。

住民合意なき再稼働準備工事始まる
自然破壊と住環境破壊が進行中

 今、東海第二原発の現地=東海村は大変なことになっています。住民の同意なしで再稼働準備工事が始まっています。
 原電は昨年6月大規模「土木建築工事」のために「土木建築室」を設置し、特命発注で工事ごとにゼネコン各社を指名して見積もりを依頼しました。
 そしてすでに防潮堤排水口エリアの工事、原子炉建屋のブローアウトパネル工事が始まってしまいました。
 茨城県も東海村も原電にいわれるまま唯々諾々と工事の申請を認可していますが、申請では「資材置き場」となっていたのが、実は「大規模作業員宿舎」に化け、畑は作業員用大規模駐車場となり、砂防林は台無しになってしまい、自然環境、生活環境破壊がどんどん進行しています。

「およそ考えられない」を連発する
原電の姿勢こそリスク

 東海第二の運転差し止めを求めて住民が訴訟を起こしています。1月10日その裁判の原告3人への尋問が水戸地裁でありました。
 東海村の住民相沢清子さんは、村が昨年6月に実施した避難訓練に参加した際、「集合場所でバスに乗り込むだけでも時間がかかった」と証言。「(実際の事故では)地震で道路や橋が壊れるかもしれない。避難計画を作っても計画通りにいくはずがない」と疑問を投げ掛けました。
 原告団共同代表の大石光伸さん(つくば市)は、原告が主張する事故のリスクに対して、原電が「(そのようなことは)およそ考えられない」と何度もくり返して反論したことについて、「その姿勢にこそリスクが潜んでいる」と痛烈に批判しました。
 再稼働の対策工事費用は当初示された1740億円は、特定重大事故等対処施設など「安全対策費用を含め」3500億円と約2倍に膨れ上がりました。
 これを原電から電気をを卸し受けている電力5社が債務保証などで支援するといいます。
 しかし費用の8割=2200億円を支援する東電は、債務保証をどの金融機関からも拒否され(当たり前)、将来卸してもらう電気料金の前払いという形で、原電に援助するのだそうです。
 発電出来るかどうかも分からない原電の電気の前払いとは、原電の口ぐせをまねれば「およそ考えられません」。
 ツケは結局、電力消費者に支払わせるつもりでしょう。
 平気でデータ改ざんし、発覚しても開き直る危なっかしい電力会社に原発の運転をする資格はありません。
 原電、東電、どっちもどっちの泥船に私たちと子や孫、後の世代の運命を任せるわけにはいきません。 (了)
 (「原発いらない!ちば」ニュース2月号より了承を得て転載)

☆関連報道

 原発を運転する資質を疑う

 日本原子力発電が敦賀原発2号機の地質データを再稼働に有利な方向に勝手に書き換えていたことが発覚した。
 原子力規制委員会が規制基準に適合するかどうかを判断するのに重要なデータで、言語道断の行為だ。原発事業者としての資質を疑う。(後略)  (3月1日、日本経済新聞朝刊より抜粋)
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