[2018_07_04_07]東海第二原発 事実上合格の審査書案 原子力規制委(NHK2018年7月4日)
 
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東海第二原発 事実上合格の審査書案 原子力規制委

 首都圏にある唯一の原子力発電所で、茨城県にある東海第二原発について、原子力規制委員会は、安全対策が新しい規制基準に適合しているとして、事実上、合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。ただ、東海第二原発は、ことし11月に運転開始から40年となり、それまでに別の審査にも合格しなければ廃炉となるため、期限内に手続きが終わるか注目されます。
 茨城県にある東海第二原発は、都心からおよそ110キロの距離にある首都圏で唯一の原発で、30キロ圏内に全国最多の96万人が暮らしています。
 7年前の東日本大震災の際、原子炉を冷やすための設備の一部が津波の被害を受けましたが、日本原子力発電は4年前、再稼働を目指して原子力規制委員会に審査を申請していました。
 4日に開かれた規制委員会では、安全対策にかかる工事費用、およそ1740億円について、東京電力と東北電力から支援を得られる見通しが確認できたことなどが説明され、5人の委員が全会一致で事実上の合格を示す審査書の案を取りまとめました。
 東海第二原発は、事故を起こした福島第一原発と同じ沸騰水型で、このタイプで事実上、合格したのは、新潟県にある柏崎刈羽原発に次いで2か所目です。
 規制委員会は、今後、一般からの意見募集を行ったうえで審査書を正式に決定することにしています。
 ただ、東海第二原発は、ことし11月に運転開始から40年となり、それまでに別の2つの審査にも合格しなければ廃炉となるため、期限内に必要な手続きが終わるのか、注目されます。
 また、事故が起きたときの実効性のある住民の避難計画が策定される見通しは立っていないほか、日本原電は、原発の再稼働の際、全国で初めて、周辺の自治体から事前に了解を得る必要があり、再稼働の時期は見通せない状況となっています。

 委員長「期限内に全審査終了できる」

 原子力規制委員会の更田豊志委員長は、東海第二原子力発電所の審査書の案を取りまとめたことについて「重大事故対策や津波対策が妥当で、十分効果がある設計が示されたと思う」と述べました。
 そのうえで、残された別の2つの審査の見通しについては「詳しい設備の設計の審査は、日本原電から伝えられている予定が守られれば時間的にやれるのではないか。ハプニングがなければやりきっていけると思う」と述べ、事業者側から適切に説明がなされれば11月の期限内にすべての審査を終えられるとの認識を示しました。
 また、原発から30キロ圏内に96万人が暮らしているため大きな課題となっている住民の避難計画については「規制委員会は原子力防災の指針を作った責任があるので、計画を作るうえで助言を求められれば、担当部局と連携して助言していく」と述べました。
 日本原電「残る審査に真摯に対応」

 東海第二原発が事実上、合格したことについて、日本原子力発電は「引き続き、残る審査に真摯(しんし)に対応するとともに、安全対策の内容や審査の状況などについて地域の皆様にしっかりと説明していきたい」とコメントしています。

 東海村長「まだ途中段階 動向注視したい」

 東海第二原発が立地する茨城県東海村の山田修村長は「審査書案はまとまったが、これからの意見募集の結果、多少は結果に反映されることもある。まだ途中段階なので動向を注視したい」と述べました。
 そのうえで、事故の際の住民の避難について「広域避難計画の策定を進めているが、なかなか実効性の確保では苦労している」と述べました。
 また、東海第二原発を再稼働する際、日本原子力発電と東海村を含む周辺の6つの自治体の間で実質的な事前了解が必要となる協定に触れ、「事前了解を判断する時、安全対策だけなく、防災対策も大変重要になる。今後、どう取り扱うか、日本原電とほかの自治体も含めて改めて協議することが必要だと思う」と述べました。

 村民は再稼働に賛否の声

 東海第二原発がある東海村では、原発の再稼働をめぐって住民からさまざまな声が聞かれました。
 74歳の男性は「発電所がなければ電力が立ちゆかず、厳しい審査を通ったうえでなら再稼働してよいと思います」と話していました。
 一方、別の79歳の男性は「再稼働には費用がかかりすぎるという話も聞くので、廃炉にするべきだと考えます」と話していました。
 このほか、58歳の女性は「最近は地震が多く、何よりも古い発電所なので再稼働してほしくないですが、きちんとした安全対策を取るならしかたないことなのかもしれません」と話していました。

 茨城県知事「残る審査を注視」

 茨城県の大井川知事は「まだ、2つの審査が残っているので、その状況をしっかり注視していきたい。原子力規制委員会には厳正な審査をしてもらいたい」と話しています。
 そのうえで、原発の再稼働については「今後の審査を見守りつつ、しかるべきタイミングで県民の意見を聞く方法を考えていきたい」と述べ、県民の意見を聞いてから判断するという姿勢を改めて強調しました。
 また、深刻な事故に備えるための広域避難計画については「周辺の住民の数が多いこともあり、大きなハードルがあると感じているが、今ある県の計画をさらに実効性の高いものに改定するため、検討を進めていきたい」と述べました。

 市民団体が抗議

 原子力規制委員会が開かれた東京 港区にあるビルの前では、東海第二原発の再稼働に反対する市民団体のメンバーらおよそ30人が集まり、審査書案の取りまとめに抗議しました。
 メンバーらは「危険!逃げられない!首都圏の老朽炉東海第二原発再稼働反対」などと書かれた横断幕を持ち、「運転延長反対」と大きな声で訴えていました。
 市民団体の柳田真さんは「東海第二原発は東京に近いところにあり、多くの人にとってひと事ではない。こんなに早く審査がまとまってしまい、本当に残念だ。まだ引き返すことはできるので再稼働に反対していきたい」と話していました。

 事実上合格は8原発15基

 再稼働の前提となる国の審査に事実上、合格したことを示す審査書の案が取りまとめられたのは、東海第二原発を含めて8原発15基です。
 廃炉が決まった、または廃炉にする方向で検討されている福島県にある福島第二原発を除くと、全国には15原発35基あります。
 このうち、青森県にある大間原発を含む26基で、新たな規制基準に基づき、再稼働の前提となる審査が申請されています。
 この中で、審査に事実上、合格したことを示す審査書の案が取りまとめられたのは、4日に原子力規制委員会が審議した東海第二原発を含めて8原発15基です。
 そして、これまでに再稼働した原発は鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、福井県にある高浜原発3号機と4号機、大飯原発3号機と4号機、愛媛県にある伊方原発3号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機の合わせて5原発9基です。
 ただ、伊方原発3号機は去年12月、広島高等裁判所が運転停止を命じる仮処分を決定したため、運転できない状態になっているほか、川内原発2号機と高浜原発4号機が定期検査で運転を停止していることから、稼働中の原発は4原発6基です。
 一方、福島第一原発の事故のあと、廃炉が決まった原発は福井県にある敦賀原発1号機、美浜原発1号機と2号機、大飯原発1号機と2号機、島根県にある島根原発1号機、佐賀県にある玄海原発1号機、愛媛県にある伊方原発1号機と2号機の6原発9基です。
 また、先月14日、東京電力は福島第二原発1号機から4号機について、廃炉にする方向で検討することを表明しています。

 3つの審査に合格しなければ廃炉

 東海第二原発は、ことし11月28日で運転開始から40年となります。
 その前日までに原子力規制委員会の3つの審査に合格しなければ廃炉となり、期限内に手続きが終わるか注目されています。
 4日に事実上合格となったのは、最大規模の地震や津波の想定や重大事故対策などが、福島第一原発の事故を教訓に策定された新しい規制基準に適合しているか確認する審査です。
 ただ、原則40年に制限された運転期間を延長するためには、この審査とは別に、設備の耐震性など詳しい設計を記した工事計画と、施設の劣化状況などに問題がないか確認する2つの審査に合格する必要があります。
 このうち、工事計画の審査は、日本原電の対応が遅れ、期限内に手続きが終わるか注目されています。
 こうした規制委員会の審査に合格しても、必要な安全対策工事が2020年度末までかかる計画が示されていて、再稼働はそれ以降になる見通しです。

 合格しても再稼働見通せず

 一方、再稼働にあたって日本原電は、原発が立地する地域で乗り越えなければならない2つの課題があります。
 1つは、原発周辺の自治体から再稼働の了解が得られるかどうかです。
 ことし3月、日本原電と原発周辺の6つの自治体は、原発の再稼働の際、自治体側の「実質的な事前了解」が必要となる新たな協定を結びました。
 「事前了解」の対象が立地する自治体以外に広げられた全国で初めてのケースで、今後、再稼働を求める動きになった場合、日本原電は周辺自治体から了解を得なければなりません。
 2つ目は、事故が起きたときの住民の避難計画です。
 東海第二原発の30キロ圏内には、全国の原発で最も多い96万人が住んでいます。
 津波や地震で道路が寸断されるといった複合、災害を想定した広域の避難計画など、実効性のある計画が策定される見通しは立っていません。
 日本原電にとっては、再稼働にあたって乗り越えなければならない課題は多く、再稼働の時期は見通せない状況となっています。

 日本原電の原発の状況は

 日本原子力発電は、東京に本店を置く原子力発電のパイオニアとして、電力各社の出資で設立された原発を専業とする株式会社で、昭和41年、茨城県に日本で初めての商業用の原発となる東海原発を運転し、東海第二原発も続きました。
 福井県には敦賀原発1号機と2号機を建設し、合わせて4基の原発を持っていました。このうち、平成10年に東海原発が、平成27年に敦賀原発1号機が廃炉となり、敦賀原発2号機は、原発の真下にある断層が原子力規制委員会の専門家会合で、「将来動く可能性がある」とされ、規制委員会での審査は継続していますが、まだ序盤で、再稼働の見通しは立っていません。
 また、敦賀原発では、3号機と4号機の建設に向けた準備が行われていましたが、福島第一原発の事故の影響で、建設に必要な審査への申請は行われていません。
 3日に閣議決定された国のエネルギー基本計画でも、原発の新設や増設が盛り込まれていないため、増設の手続きが進む見通しはなく、建設予定地は今年度から近くにある関西電力の原発の資材置き場となっています。

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