[2018_07_05_23]東海第二原発 新基準「適合」 避難や賠償…問題山積(東京新聞2018年7月5日)
 
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東海第二原発 新基準「適合」 避難や賠償…問題山積

 運転開始からまもなく四十年の老朽原発が再稼働に一歩、近づいた。東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、原子力規制委員会が四日、新規制基準に事実上の適合を意味する審査書案を了承した。だが、厳格さが求められる審査は、期限の十一月に間に合うよう規制委が配慮を続け、疑問点を残したままだ。その上、原電の賠償能力や避難計画など問題は山積している。
 原発専業という特殊な会社の原電にとって、東海第二の再稼働は経営破綻を回避する頼みの綱。原電は世界最悪レベルの事故を起こした東京電力の支援なしには資金調達さえできない。識者からは、全国で相次ぐ原発の廃炉作業に専念するべきだとの声が上がる。
 「原子力のパイオニア」と言われた原電は、一九五七年に創立。出資は、東京電力や関西電力など電力会社が九割を占める。日本で初めて商用原発の東海原発(廃炉中)を建設・運転し、火力や水力など他の発電手段を持っていない。
 原電が持っていた原発四基のうち、二基は老朽化で廃炉。残る東海第二と敦賀2号機(福井県)は震災後、長期の停止が続く。発電はゼロでも、売電先として契約する電力五社から毎年受け取る計一千億円の「基本料金」が経営を支える。
 しかし、電力という商品がなければ、経営は上向かない。敦賀2号機は建屋直下に活断層が存在する疑いがあり、再稼働は難しい情勢。敦賀3、4号機の新設も計画段階にとどまり、見通しは立っていない。
 こうした状況で、運転期限を間近に控える東海第二は命綱。運転延長を目指し、再稼働に必要な工事費を賄うため、筆頭株主の東電に資金支援を求めた。東電は、福島第一原発事故の避難者らが反対する声を無視し、支援を決定した。
 仮に、運転延長が規制委に認められたとしても、工事期間の都合上、原発の実働は十七年程度に限られる。その間に重大事故が起きれば、都心に最も近い原発のため、福島の事故よりも損害が大きくなり、原電に賠償できる体力はない。
 原発問題に詳しい立教大大学院の金子勝特任教授(経済学)は「原電は廃炉の専業会社へ転換するべきだ」と指摘する。原電は福島第一などで廃炉ビジネスに乗り出しているものの、すぐに収益の柱に育たないとの認識で発電にこだわる。 (越田普之)

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