[2004_01_14_01]柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の長期評価について(地震調査研究推進本部2004年1月14日)
 
参照元
柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の長期評価について

 04:00
     柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の長期評価について
 平成16年(2004年)1月14日
 地震調査研究推進本部
 地震調査委員会

 地震調査研究推進本部は、「地震調査研究の推進について −地震に関する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策−」(平成 11 年(1999年) 4 月 23 日)を決定し、この中において、「全国を概観した地震動予測地図」の作成を当面推進すべき地震調査研究の主要な課題とし、また「陸域の浅い地震、あるいは、海溝型地震の発生可能性の長期的な確率評価を行う」とした。

 地震調査委員会では、この決定を踏まえつつ、これまでに陸域の活断層として、44 断層帯の長期評価を行い公表した。

 今回、引き続き、柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯について現在までの研究成果及び関連資料を用いて評価し、とりまとめた。

 評価に用いられたデータは量及び質において一様でなく、そのためにそれぞれの評価の結果についても精粗がある。このため、評価結果の各項目について信頼度を付与している。

<修正履歴>
・平成17年(2005年)1月12日 経験式を用いた場合のマグニチュード表記の変更

 平 成 1 6 年 1 月 1 4 日
 地震調査研究推進本部
 地 震 調 査 委 員 会

     柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の評価

 柳ヶ瀬(やながせ)・関ヶ原(せきがはら)断層帯は、丹生(にゅう)山地西方の日本海沿岸から琵琶湖東岸を経て伊吹山地南縁に至る活断層帯である。ここでは、平成4年度及び9年度の地質調査所(現:産業技術総合研究所)による調査や平成7年度の岐阜県、平成8−9年度の福井県による調査をはじめ、これまでに行われた調査研究成果に基づいて、この断層帯の特性を次のように評価した。

1.柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯の位置及び形状
 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯は、日本海沿岸の福井県福井市鮎川から丹生(にゅう)郡越廼(こしの)村越前岬沖の若狭湾東縁を通り、滋賀県伊香(いか)郡木之本(きのもと)町を経て、岐阜県不破(ふわ)郡垂井(たるい)町に至る柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部と、福井県敦賀(つるが)市の立石岬付近から敦賀湾を横切り、滋賀県伊香郡余呉(よご)町に至る「浦底(うらぞこ)−柳ヶ瀬山(やながせやま)断層帯」からなる。
 柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部は、全体の長さは約 100km で、屈曲点を境に北部では北北東−南南西方向、南部では北西−南東方向に延びる。本断層帯は過去の活動時期から、断層帯北端の福井県福井市鮎川から山中峠南東付近までの北部、山中峠南東付近から椿坂峠付近までの中部、及び椿坂峠から断層帯南端の岐阜県不破郡垂井町に至る南部の3つの区間に細分される。北部は断層の東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層で、南半部は左横ずれ成分を伴う。中部は左横ずれ断層である。南部は左横ずれを主体とし、一部、断層の北東ないし東側が西側に対して相対的に隆起する逆断層からなる(図1、2及び表1)。
 浦底−柳ヶ瀬山断層帯は、長さが約 25km で、北西−南東方向に延びる左横ずれを主体とする断層である(図1、2及び表3)。

2.断層帯の過去の活動
(1)柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部
 断層帯主部は、過去の活動時期の違いから、北部、中部、南部の3つに区分される。
 北部の平均的な上下方向のずれの速度は 0.6-0.8m/千年もしくはそれ以上、最新の活動は 17 世紀頃であったと推定される。活動時には、断層の東側が西側に対して概ね4−6 m 程度隆起したと推定される。また、平均的な活動間隔は約2千3百−2千7百年であった可能性がある(表1)。
 中部の最新活動は約7千2百年前以後、約7千年前以前であったと考えられる。平均的な活動間隔は不明であるが、地形的特徴からB級の活動度を有している可能性がある(表1、注1)。
 南部の最新活動は約4千9百年前以後、15 世紀以前であったと推定される。平均的な活動間隔は不明であるが、地形的特徴からB級の活動度を有している可能性がある(表1)。

(2)浦底−柳ヶ瀬山断層帯
 浦底−柳ヶ瀬山断層帯はその地形的特徴から、B−C級の活動度を有している可能性がある。過去の活動時期や平均的な活動間隔に関する資料は得られていない(表3)。

3.断層帯の将来の活動
(1)柳ヶ瀬・関ヶ原断層帯主部
 断層帯主部は、最新活動と同様に3つの区間に分かれて活動すると推定されるが、北部と中部または中部と南部を合わせた区間(以下、北中部及び中南部とする)が活動する可能性や断層帯全体が1つの区間として同時に活動する可能性もある。北部、中部、南部の3つに分かれて活動する場合、北部ではマグニチュード 7.6 程度の地震が発生する可能性があり、その際には断層の東側が相対的に4−6 m 程度隆起すると推定される。中部ではマグニチュード 6.6 程度の地震が発生すると推定され、その際には1 m 程度の左横ずれが生じる可能性がある。南部では、マグニチュード 7.6 程度の地震が発生し、その際には3−4 m 程度の左横ずれが生じる可能性がある。
 北中部または中南部が活動する場合は、それぞれマグニチュード 7.8 程度の地震が発生する可能性がある。
 断層帯全体が活動する場合は、マグニチュード 8.2 程度の地震が発生する可能性がある。
 北部の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は表2に示すとおりである(注2、3)。中部、及び南部は平均活動間隔が不明なため、将来の地震発生確率を求めることはできない。
 北中部が活動する場合及び主部全体が活動する場合の地震発生確率は、北部が単独で活動する場合の確率を超えないものと考えられる。また、中南部が活動する場合の確率は、中部及び南部における平均活動間隔が不明なため、求めることができない。

(2)浦底−柳ヶ瀬山断層帯
 浦底−柳ヶ瀬山断層帯では、マグニチュード 7.2 程度の地震が発生すると推定され、その際には2 m 程度の左横ずれが生じる可能性がある(表3)。過去の活動が明らかでないため、将来このような地震が発生する長期確率を求めることはできない。

4.今後に向けて
 断層帯主部では、平均活動間隔について信頼度の高い数値が得られていないため、平均的なずれの速度や1回のずれの量などを精度よく求める必要がある。また、断層帯主部は過去の最新活動時期の違いから、将来においても北部、中部、南部が別々に活動すると推定されるが、断層の形状などから北部と中部または中部と南部を合わせた区間が活動する場合や断層帯全体が1つの区間として活動する可能性も否定できない。したがって、それぞれの区間において過去の活動に関するより一層の資料を得る必要がある。特に南部の鍛冶屋断層以南では、活動時期に関する資料がほとんど得られておらず、今後十分な調査を行う必要がある。中部と南部の境界位置や、南部の活動区間についてもさらに明らかにする必要がある。
 また、断層帯主部とその西側を並走する浦底−柳ヶ瀬山断層帯は非常に近接して分布していることから、断層帯主部の一部と浦底−柳ヶ瀬山断層帯との活動に関連がある可能性もあり、両断層帯の地下の断層面の形状等を明らかにする必要がある。
 浦底−柳ヶ瀬山断層帯では過去の活動に関してほとんど資料が得られていない。したがって、過去の活動履歴を明らかにする必要がある。
(後略)

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