[2024_07_30_06]【敦賀原発不適合】安全重視の妥当な判断だ(高知新聞2024年7月30日)
 
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【敦賀原発不適合】安全重視の妥当な判断だ

 08:00
 原子力規制委員会は、原子炉直下に活断層が存在する可能性があるとして、日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)が運転の可否を判断する新規制基準に適合しないと結論付けた。
 2012年の規制委発足後、原発27基が審査を申請したが、初の不適合判断となる。最終的な結論は委員全5人が出席する定例会合で検討するが、再稼働は困難で、審査不合格となる可能性が高い。
 安全性に不確かな部分がある以上、運転を認めることはできない。妥当な判断と言える。
 11年の東京電力福島第1原発事故を受けて導入された新規制基準は、活断層の上に原子炉や冷却装置など重要施設を設置することを禁じている。断層が動いた場合に地盤がどのくらいずれるかや、押し上げる力を予測することは困難で、損傷する恐れが拭えないからだ。
 審査では、原子炉の北約300メートルにある「K断層」が活断層かどうか、原子炉直下を通る「D―1断層」などがK断層と一体かどうかの2点が焦点となった。
 原電はK断層の活動性はなく、D―1断層との連続性もないと説明した。だが、規制委は「明確な証拠により否定できていない」などとして退けた。
 原発専業の電力会社である原電は追加調査の意向を示し審査継続を求めたが、廃炉を迫られる可能性もある。規制委から突き付けられた判断を重く受け止める必要がある。
 そもそも敦賀原発の立地は原発に不適切だといわれる。断層問題はかねて指摘されてきたが、原電は事業者として誠実に向き合ってきたとは言えない。
 敷地内には既に活断層と分かっている「浦底断層」が通る。1990年代には存在が確実視されていたが、原電は一貫して否定した。認めたのは2008年になってからだ。
 その後、焦点の断層と浦底断層との連動性が問題化したが、15年に再稼働の審査を申請。以降も信頼性を疑うような行為を繰り返してきた。
 断層活動の痕跡を示す記載など審査資料に千カ所以上の誤りが見つかったほか、原電がデータを無断で書き換えたことが判明した。規制委は審査を一時中断し、原電本社に立ち入り検査することもあった。それでも資料の誤記などは後を絶たず、昨年4月に審査を再び中断した。
 原発推進派は今回の判断を「拙速だ」と批判するが、再稼働の申請から9年が経過する。安全性を確実に証明できないのなら、いたずらに審査を長引かせてはならない。
 脱炭素化を掲げる岸田政権は、従来の「可能な限り依存度を低減」から「最大限活用」へと原発政策を大きく転換した。一方、今年1月には敦賀原発にも近い能登半島地震が発生し、地震大国の日本で原発を動かし続ける危険性が改めて浮き彫りになった。
 甚大な事故の教訓を忘れてはならない。いま一度、原発に依存しない社会を目指す決意が求められる。
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