[2024_08_05_01]<社説>敦賀原発不合格/結果に従い廃炉の決断を(神戸新聞2024年8月5日)
 
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<社説>敦賀原発不合格/結果に従い廃炉の決断を

 06:00
 日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)について、原子力規制委員会は原子炉直下に活断層が存在する可能性があるとして、原発の新規制基準に適合しないと結論付けた。山中伸介委員長は規制委の審査チームに、不合格を示す「審査書」案の作成を指示した。新規制基準に沿った審査で不合格になるのは初めてのケースとなる。
 2011年の東京電力福島第1原発事故を教訓に、原発を推進する経済産業省から安全規制業務が切り離され、12年に規制委が発足した。翌年、運転の可否を判断する新規制基準が導入された。今回の不合格は安全を優先した妥当な結論である。
 審査の論点は、2号機の北側にあるK断層が活断層かどうか、また原子炉直下のD−1断層などがK断層とつながっているかどうかだった。原電は断層の活動性と連続性はないと反論したが、審査チームはいずれも「否定できない」と判断した。
 新規制基準は、原子炉や事故時の冷却装置など安全上重要な設備の活断層上への立地を認めていない。今回はこれに該当する。ただ敦賀原発の場合、仮にD−1断層などに問題がなくとも、2号機から250メートルの場所に浦底断層が通る。マグニチュード(M)7・2程度の地震を起こす恐れがあると、政府の専門機関が指摘する明らかな活断層である。
 阪神・淡路大震災では、活断層の真上に限らず、帯状の広範囲が激震に襲われた。浦底断層が敷地内にある時点で、原発の立地には不適当と言わざるを得ない。原電は不合格の結果を重く受け止めて再稼働を断念し、廃炉を決断すべきだ。
 15年の審査申請後、原電側の対応には不手際が相次いだ。地震対策などの資料で千カ所を超える記載不備があったほか、地質データの無断書き換えが発覚し、審査は中断した。再開後も誤記が見つかり、原発に携わる企業としての資質が問われた。
 敦賀原発とともに原電が所有する東海第2原発(茨城県)も再稼働のめどは立っていない。それでも供給先の大手電力各社から維持費に相当する「基本料金」を受け取る。村松衛社長は規制委の意見聴取に対し、審査の継続を求めた。だが原電は困難な再稼働を目指すのではなく、組織存続の是非を含め、将来を再考する時期に来ているのではないか。
 1月の能登半島地震では、北陸電力志賀(しか)原発(石川県)で外部電源の一部が使えなくなるなどのトラブルが起き、30キロ圏内で孤立集落が生まれた。地震などの自然災害が多発する日本では、原発の立地に公正な科学的評価が欠かせない。規制委は今後も、新規制基準を厳しく適用する姿勢を貫いてもらいたい。


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