【記事63583】東海第2 変わる「地元」の定義(茨城新聞2018年1月8日)
 
参照元
東海第2 変わる「地元」の定義

 日本原子力発電(原電)東海第2原発(東海村白方)の「地元」の定義が変わろうとしている。これまで県と東海村だけに限られてきた再稼働に関わる事前了解の権限が、事実上、周辺5市にも広がる見通しとなったためだ。自治体側が避難計画作りに頭を悩ませる中、再稼働に対する地元理解のハードルが一層高まることになる。 (報道部・戸島大樹)
 同村と隣接4市に水戸市を加えた6市村の「原子力所在地域首長懇談会」は、東京電力福島第1原発事故後、「東海村と同等の権限」を求め、原子力安全協定の見直しを求めてきた。
 安全協定は施設を新増設する際などに立地自治体から事前に了解を得ることを約束。事実上、再稼働も「同意」が必要になる。
 原電側は当初、現行協定の見直しは他の原発立地地域に与える影響が大きいとして難色を示してきたが、運転延長を国に申請する昨年11月、5市に「実質的な事前了解」の権限を認めると回答。新たな安全協定を3月までに結ぶ方針だ。

■実を取る思い
 新協定案によると、6市村は再稼働や運転延長の際、事前に意見を述べたり現地確認したりする権利に加え、原電との協議会を通じて追加の安全対策を求めることができ、こうした事前協議によって実質的に事前了解が担保される-としている。確認書にも、6市村が事前協議を開く権限を持ち、納得するまで協議を継続することが盛り込まれた。原電側には追加の安全対策を求められれば対応する義務もある。
 首長懇が当初求めた現行協定の見直しとは異なるが、首長の一人は「理想論だけでは平行線が続く。『事前了解』の言葉が入り、最終的には実を取るという思い」とし、新協定を「納得するまで再稼働はない」と受け止める。現行協定の一角を担う県の幹部も「事前了解と実態は変わらない」と解釈する。
 原電は再稼働に必要な安全対策工事を2021年3月までに終える予定。新協定が成立し、現行協定と共存すれば、6市村長と知事がどのような判断を下すのか注目される。

■自治体主導を
「実質的」とはいえ、事前了解の権限が周辺自治体に広がるのは全国初。
 東海村長として当初、議論の旗振り役を担った前村長の村上達也さんは、立地と周辺で差を付ける従来の線引きを「事故が起こらないことが前提だった」と指摘する。福島第1原発事故後、半径30キロ圏に約96万人が住む東海第2の再稼働問題と向き合う中、「小さな村の首長一人で負える責任じゃない。周辺自治体の考えも無視できない」と考え、首長懇の設置を主導した。
 村上さんは現行協定の見直しに応じない原電側の姿勢を疑問視するが、「『周辺』の意思も考慮せざるを得ないと意識されたことは一定の前進」と評価。首長懇と原電間で詰めの協議を残す中、「(議論の)土俵はあくまで首長側が用意するべき」と、自治体主導の議論に期待する。

KEY_WORD:TOUKAI_GEN2_:FUKU1_: