【記事65360】「核のゴミ」処理で窮地の関電、東電・原電の施設に“相乗り”浮上(週刊ダイヤモンド2018年1月24日)
 
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「核のゴミ」処理で窮地の関電、東電・原電の施設に“相乗り”浮上

 原子力発電所から出される使用済み核燃料の貯蔵問題が、にわかに電力業界内外で注目を集めている。中でも、関西電力はこの問題をすぐにでも解決しなければならない最重要課題と捉えているが、解決の糸口すらつかめていない。そこで業界内で浮上しているのが、東京電力HDと日本原子力発電、関電の3社による協力体制構築だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
 使用済み核燃料の貯蔵問題で、関西電力が窮地に陥っている。
 使用済み核燃料とは、原子力発電に使われた核燃料のこと。いわゆる“核のごみ”で、通常は、各電力会社の原発内にある使用済み核燃料プールに貯蔵されている。
 関電では、その貯蔵プールが満杯に近づいており、核のごみの行き場が問題になっているのだ。
 関電は、高浜原発(福井県)3、4号機に続き、大飯原発(福井県)3、4号機などの再稼働が控えている。高浜原発では向こう6〜7年で貯蔵プールが満杯になってしまう。そこで、過渡的な措置として、一時的に使用済み核燃料を貯蔵する「中間貯蔵施設」の確保が焦眉の急になっている。
 しかし、話はそう単純ではない。
 まず、福井県が中間貯蔵施設の受け入れを拒否している。「発電立地としての協力は惜しまないが、ごみは受け入れない」というスタンスなのだ。関電は昨年11月に、福井県の西川一誠知事に対して、中間貯蔵施設の「福井県外での立地候補」を2018年中に示す約束までさせられている。
 では、福井県外で立地の確保ができるのかといえば、それも一波乱ありそうな雲行きだ。
 1月7日、青森県むつ市の中間貯蔵施設を、関電が利用するという観測報道が駆け巡った。これは、東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電の合弁会社、リサイクル燃料貯蔵(RFS)の中間貯蔵施設(18年後半に稼働)なのだが、このスキームに関電も参画するのではないかというもの。電力業界内では、いよいよ関電が懸案事項の解決に着手したと捉えられた。
 ところが、その観測にむつ市がかみついた。むつ市はRFSの親会社である東電と原電の施設利用に限って、立地に同意したからだ。福井県で出たごみをなぜ青森県が受け入れなければいけないのか──。急きょ、むつ市長は記者会見を開き、関電からの使用済み核燃料は受け入れられないと反発。関電も「むつ市での貯蔵は検討していない」と火消しに追われた。
 それでも、電力業界では、「関電はむつ市に持ち込む以外に選択肢はない」(東電幹部)という見方が大勢である。実は、東電と原電、関電には三者三様の思惑があり、協業関係を構築できるとみられているからだ。
 関電には、むつ市の中間貯蔵施設利用以外に現実的な選択肢がない。RFSが立地選定から建設まで約20年かかったことからも分かるように、(高浜の貯蔵プールが満杯になる6〜7年以内に)今から新たな中間貯蔵施設を関電管内に建設することはほぼ不可能だ。
 関電は13年6月から中間貯蔵施設の立地選定を目指して、実に7100回以上の説明会を、関西地域を中心に開催しているが、ついぞ受け入れに手を挙げてくれる自治体は存在しなかった。
 一方の東電と原電にとって、関電のむつ市の中間貯蔵施設利用はのめない話ではない。
 そもそも、関電とは事情が異なり、東電と原電には再稼働している原発がない。関電ほど使用済み核燃料の貯蔵問題は、逼迫していない。むしろ、関電から施設の利用料を得られれば、貴重な収益源になる。東電は新たな経営計画「新々総合特別事業計画」でハードルの高い収益目標を課せられており、関電からの“臨時収入”は歓迎すべきことなのだ。
 新たな収益源を確保したい原電にとっても同様だ。原電は、原発専業の発電会社にもかかわらず、国内の原発が全て停止中。唯一、再稼働の可能性がある東海第二原発も、高い発電コストを理由に、電力の大部分を買い取ってきた東電が、買い取りを渋っている。

● 関電は自業自得 問題を先送りした15年間の付け
 関電にとって、中間貯蔵施設の福井県外での確保は、15年以上抱え続けている経営課題。これまで問題の先送りをしてきた付けが回ってきているのだ。
 ある経済産業省幹部も「関電は容易に解決できると高をくくっていた節がある」と話す。実際に、この15年間で何度か、打開策を見いだすチャンスはあった。
 むつ市での事業が具体化していた03年ごろ、「関電はむつ市の事業に参画できるかどうか打診されていた」(前出の経産省幹部)。だが、当時は福井県小浜市と美浜町、和歌山県御坊市での中間貯蔵施設の立地確保を模索していて、話はうやむやになった。結局、県外立地を求める西川知事の方針で、福井県の2地点は白紙となり、御坊市も立地選定には至らなかった。
 むつ市の同意を得られれば、“3社共闘”で、関電は最大のピンチをしのげるかもしれない。だが、核のごみ処理という重要課題を先送りし続けた関電の姿勢は糾弾されるべきだろう。

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