【記事67622】再稼働同意 30キロ圏に拡大 東海第二6市村と新協定(東京新聞2018年3月30日)
 
参照元
再稼働同意 30キロ圏に拡大 東海第二6市村と新協定

 首都圏唯一の原発である東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働を巡り、三十キロ圏の水戸など六市村と日本原子力発電(原電)は二十九日、原電が各自治体に同意に当たる事前了解を得ることを明記した新協定を結んだ。原子力規制委員会が新規制基準に適合と判断し、再稼働してきた各地の原発では、事前了解は道県や立地市町村に限定しており、対象を三十キロ圏にも拡大するのは全国初となる。
 新協定を締結した六市村は、立地する東海村のほか、水戸、那珂(なか)、日立、ひたちなか、常陸太田の五市。県も立会人に加わる。全六条からなり、内容を解説した確認書がつく。
 これらによると、第六条では「事前協議により、実質的に六市村の事前了解を得る仕組みとする」と明記。六市村は原電に対し、意見を述べたり、回答も要求できる。六市村が納得するまで協議し、一つの答えを出すとした。
 「事前了解」を明記できた一方、「実質的に」という曖昧な文言は残ったが、一つの自治体でも「ノー」と言えば再稼働できなくなり、再稼働のハードルは上がった。
 東海村役場で開かれた協定を結んだ会合後、山田修村長は「全国に例がない協定で、無事、締結できてほっとしている」と強調。原電の村松衛(まもる)社長は「東京電力福島第一原発事故を踏まえた対応。一つの自治体でも意見がある場合には、協議を打ち切ることはしない」と述べ、反対を押し切って再稼働を強行しない考えを示した。
 原発事故後、六市村は事前了解の拡大を求め、原電と交渉。昨年十一月、原電側が事前了解を周辺の五市にも広げる方針を提示していた。だが、曖昧な部分が多く、首長らが反発し修正を求めていた。

【新協定の骨子】

・原電は再稼働の際は、事前協議により実質的に6市村の事前了解を得る
・原電は再稼働について、事前に6市村に丁寧に説明する
・6市村は原電に対し、協議会の開催を求めることができる
・事前協議は、6市村それぞれが求めることができ、原電は必ず応じる
・事前協議は、6市村それぞれが納得するまでとことん継続する

◆他原発に波及の可能性

<解説>  全国の原発で、周辺自治体の首長や住民から反対の声が相次いでいることもあり、各電力会社は再稼働の事前了解を三十キロ圏に広げることには後ろ向きだ。了解対象を三十キロ圏の自治体まで拡大した「東海第二方式」の誕生で、他の原発にもこの方式が広がる可能性がある。
 東京電力福島第一原発事故で広範囲に放射性物質が飛散したことを踏まえ、自治体が義務付けられる住民の避難計画は原発十キロ圏から、三十キロ圏に拡大された。だが、三十キロ圏自治体は、避難計画づくりの負担や、事故のリスクを負う一方、電力会社はこれら自治体の首長や住民の声に耳を傾けず、「蚊帳の外」に置かれていた。
 原子力規制委員会の新規制基準の審査に適合した原発で初めて二〇一五年夏に再稼働した九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)でも、九電が了解を取ったのは県と市だけ。これが定着し、再稼働した計五原発七基で「川内方式」が続いていた。
 協定に法的拘束力はないが、電力会社が無視し、損害が発生すれば、賠償の根拠にもなる。地元の信頼も失うことから、これまで無視した会社はない。
 三十キロ圏の九十六万人を対象にした避難計画づくりは難航しており、水戸市議会は現時点での再稼働に反対する意見書をまとめる方針だ。すべての自治体の了解を得て、東海第二を動かすことは難しい情勢だ。 (山下葉月、越田普之)

KEY_WORD:TOUKAI_GEN2_:SENDAI_: