【記事76540】<東海第2延長認可>6市村に事前了解権 拒否権有無で溝(毎日新聞2018年11月7日)
 
参照元
<東海第2延長認可>6市村に事前了解権 拒否権有無で溝

 日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)の再稼働を巡り、原子力規制委員会が7日、最長20年の運転延長を認可した。国の審査はほぼ終了し、焦点は、原電が今年3月に結んだ新たな安全協定で「実質的な事前了解権」を認められた周辺6市村の可否判断に移る。しかし、あいまいな協定の文言から、再稼働を止める「拒否権」の有無をめぐる市村長の認識の違いが早くも表面化しており、道筋は見えていない。【吉田卓矢、太田圭介、加藤栄】
 新たな安全協定は3月、6市村の首長と原電社長が東海村で結んだ。文書で「事前協議により実質的に事前了解を得る仕組みとする」と表記する一方、自治体間で賛否が分かれた場合に再稼働を止められるか分からない「玉虫色」の内容となっている。新協定締結までの協議は非公開で、議事録も公表されていない。
 原電の和智(わち)信隆副社長は7日、報道陣に「拒否権という言葉は新協定の中にはない」と述べた。しかし、6市村長の受け止め方はそれぞれ異なる。
 那珂市の海野徹市長はこの日、半径30キロ圏内(約96万人)の14市町村を対象とする広域避難計画の策定が困難であることを理由に、再稼働反対を改めて表明した。拒否権について「一つでも反対すると再稼働できない認識だ」と強調。引退を表明したひたちなか市の本間源基市長も同じ意見だ。
 これに対し、東海村の山田修村長は「議論した上で最終的に(事業者が)了解をもらうものだ」と話しており、各自治体の「拒否権」を否定。広域避難計画の策定状況についても、事前協議にそぐわないとの考えを明らかにしている。
 水戸市の高橋靖市長と常陸太田市の大久保太一市長は拒否権に肯定的で、日立市の小川春樹市長は否定的な見方を示す。
 一方で、再稼働に対する判断のタイミングも固まっていない。原電は2021年3月までに約1800億円をかけて安全対策工事を実施する予定だ。6市村長は10月1日に非公開で協議し、再稼働の意思を明確にするよう原電に求める方向で一致した。今回の認可を受けて近く再び協議する。
 工事実施について、山田村長が「防潮堤など現状よりも安全性が向上するのであれば止める必要はない」と述べる一方、別の首長からは「巨額の工事をした後では、再稼働が既成事実化しかねない」との声も上がっている。

 ◇協議は住民が見える公開の場で

 大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)の話 立地だけでなく周辺自治体にまで再稼働の「事前了解権」を認めた安全協定は画期的だ。事故が起きた際のリスクがある以上、再稼働には6市村全ての合意が必要と考える。解釈が分かれているなら、合意までの意思決定方法などについて、さらに議論が必要だ。その際、原電と6市村の協議は住民に経緯が見える仕組みにするべきで、公開の場で行うのが望ましい。
 事故リスクだけを負わされることに不満を抱く周辺自治体は多く、今後の再稼働手続きのモデルとなり得る。6市村がそれぞれの住民の意思をどのように政策決定に反映させるかも課題だ。

KEY_WORD:TOUKAI_GEN2_: