【記事82256】住民不安、解消されず 東海第二 県説明会に延べ753人(東京新聞2019年4月4日)
 
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住民不安、解消されず 東海第二 県説明会に延べ753人

 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発について、原子力規制委員会が最長二十年の運転延長を認めたことに伴う県主催の説明会が終わり、議事録が公開された。村と周辺五市で開かれた全六回には延べ七百五十三人が参加。質問者が回答に納得しない場面や、避難計画や再稼働の是非に関する質問を受け付けなかった県への批判が相次ぎ、今後に課題を残した。 (越田普之)

◆安全性は

 説明会は一月十三日から二月十七日まで開かれた。参加者の最大の関心事だったのが、新規制基準に適合した東海第二が事故を起こさないのかどうかだった。
 「東海第二は安全かどうかを聞かせてほしい」
 そうした懸念に、規制委事務局の担当者は「リスクは相当抑えたがゼロではない」と説明。最新の知見を常に反映して安全性の向上に努めるなどと理解を求めたが、参加者は「それはあなたたちの論理。私たちは平穏に暮らしたい」などと反発した。
 技術面では、地震想定やケーブルの火災対策、近隣に立地する原子力施設との複合災害などを問う声が上がったが、時間の都合で質疑が打ち切られるケースも続出した。

◆消化不良

 また、原電が事故対策工事にかかる千七百四十億円を自力で調達できないことに、経営体力を不安視する意見も多数出た。規制委側は、審査は工事費調達の見通しに限られているとし、経営体力などは「責任を負うべき対象ではない」と審査の限界を示した。
 避難計画や再稼働の是非については規制委の審査の対象外で、質疑を受け付けなかった。県民の意見を吸い上げる場をあらためて設けてほしいとの参加者の要望に、県は応じる姿勢を見せたが、具体的な方法は示さず消化不良感が残った。
 説明会に参加した村上達也・前東海村長は「説明会をやったというアリバイ作りでは話にならない」と指摘。三十キロ圏十四市町村で説明会を開き、県が主体的に回答するよう求めた。

◆続く議論

 大井川和彦知事は、三月定例県議会で説明会について「関心の高さを改めて実感した。県民目線に立った安全対策にしっかりと取り組む」と述べた。
 県は、説明会で出た技術的な疑問点について、東海第二の安全性を独自に検証しているワーキングチーム(WT)で議論してもらうとしている。ただ、WTに法的な権限はなく、原電にどこまで踏み込んだ要求をできるか分からない。
 地域と原子力の関わりについて研究する茨城大の渋谷敦司教授(社会学)は、避難計画など住民の関心が高いテーマが後回しにされていることに「『科学』の名によって、問題を曖昧にしたり、隠ぺいしたりということが繰り返されてきた。今回のような限定の仕方に原発問題の本質がある」と指摘している。
 説明会の議事録は県のホームページで公開されている。また、二十三日からは原電による巡回説明会が開かれる。

[説明会での主な質問と回答の要旨]

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