[2019_10_17_01]9/22「たんぽぽ舎30周年記念の集い」記念講演 『原発にしがみつく日本 なぜ?どうする?』小出裕章氏への9つの質問と回答 その1(3回の連載)(たんぽぽ舎2019年10月17日) |
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質問1 ◎「原子力緊急事態宣言」はどういう状態になれば 解除されるのですか? ☆小出裕章氏の回答 日本には被曝を制限するための法令があります。 例えば、一般の人たちには1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をさせてはならないと定められています。 また、放射線管理区域から物を持ち出す場合には、1平方メートル当たり4万ベクレルを超えているようなものはどんなものでも持ち出してはならないと定められています。 放射線管理区域とは一般の人たちの立ち入りを禁止しなければならない場です。 フクシマ事故では、1平方メートル当たり4万ベクレルと超える汚染が、約1万4000平方キロメートルの大地を汚染しました。 余りに広大な大地であり、政府は事故当日「原子力緊急事態宣言」を発令し、日本の法令を停止しました。 そしてたくさんの特別措置法を乱発して、放射能汚染地に人々を棄て続けています。 2017年には、1年間に20ミリシーベルトを超えない汚染地には、一度は避難させた人々も帰還するように指示しています。 それらは明白な法令違反です。 それができているのは原子力緊急事態宣言が続いているからだと、私は思います。 汚染の主成分であるセシウム137の半減期は30年、100年たってようやく10分の1に減ります。 しかし、10分の1に減ったところで、放射線管理区域の基準を超えて汚染が残る大地は福島県内に残ります。 私は法律の専門家ではありませんが、常識的に考えるなら、日本は100年たっても原子力緊急事態宣言を解除できないと思います。 質問2 ◎3・11福島第一原発の原子炉は、実は津波が来る前からすでに地震動により危機的状況に陥っていた、つまり、木村氏はメルトダウンの第1の原因は津波ではなく地震動だった可能性が極めて高いと言う(月刊「文芸春秋」2019年9月号にあり)木村敏雄氏(元東電原子炉設計管理担当者)の見解には賛同されますか? 巨大な地震は大津波よりもカクダンに高頻度で起こるので木村氏の 見解の意味は大きいと思い質問しました。 ☆小出裕章氏の回答 木村さんの説は仮説ではありますが、それなりに説得力があると思います。 いつになるか分かりませんし、結局はできないのかもしれませんが、再循環系の配管の状態を調査できれば、彼の説が正しいかどうか決着します。 ただ、私自身は、地震によって福島第一原発が大きな損傷を受けていたことは確実だと思います。 何故かというと、1号機のオペレーションフロア(5階)の床にあった大型機器搬入搬出口の蓋がなくなっているからです。 この蓋は原理的に下に落ちることはありません。 つまり上に吹き飛ばされたと考えるのが妥当です。 そして、4階のその場には、IC(Isolation Condenser)があります。 1号機のICは正常に動作せず、運転員が誤操作したと言われていますが、私は事故のごく初期にIC付近で破損が起き、そこから水素が4階に漏れ、4階で爆発が起きたと思います。 IC付近の配管が津波で損傷を受ける理由はありませんので、地震が原因だと思います。 質問3 ◎長野県東御市に木質バイオマス発電所が作られますが、飯山市では住民の反対で作られませんでした。木質バイオマスの件でコメントがありましたらお願いします。 ☆小出裕章氏の回答 木質バイオマスをエネルギー源として使うこと自体については、私は反対ではありません。 でも、もともとバイオマスで供給できるエネルギーは知れていますので、大きな期待をかけることも誤りです。 そして、今はフクシマ事故で放出された放射性物質で東北地方、関東地方の広大な山林が放射線管理区域に指定しなければならない基準を超えて汚れています。 そこで伐採された木材をバイオマス発電で使うのであれば、発電所周辺が放射能汚染を受けることになるだろうと危惧します。 「その2」へ続く 質問4 ◎福島第一原発は、石棺方式がベストだと小出さんは言っていましたが、共産党系の学者には、地下水の問題があるから、石棺方式はダメという人がいました。この点はどうでしょうか? デブリは水で冷やし続けなければならないはず。その水の処理は? ☆小出裕章氏の回答 デブリの発熱は8年7カ月以上たった今では、事故直後の1000分の1以下に減っています。 水での冷却ではなくおそらく空冷で可能と私は思います。 また、デブリの取り出しができないと私は思いますので、石棺を作る以外に対処法はないと思います。 共産党系の学者の方が地下水の問題があるから石棺はダメと発言されているとのことですが、私にはその根拠が分かりません。 もちろん、これまで東電と国がやってきた凍土壁では地下水の流入を止めることはできません。 でも、きちんとしたコンクリートの遮水壁を作ることは可能だと私は思います。 トンネル工事など多数の実績を重ねてきた専門家からそう聞きました。 ただ、問題はその作業のためには多数の労働者が被曝作業に従事するしかないということです。 1986年に起きたチェルノブイリ原発の事故では4号機1基だけが爆発しました。 そして60万人とも80万人とも言われる軍人、退役軍人、労働者が石棺づくりに駆り出されました。 彼らの必死の作業でチェルノブイリ原発の場合には地下構造物の健全性が保たれたため、石棺は地上部分だけに作れば用を足しました。 しかし、フクシマ事故の場合、1,2,3号機の3基が地上部分で破壊されていますし、それら3基とも地下部分は地震によって破壊され、地下水が流入してきています。 そのため、福島の場合には3基で地上部分と地下部分に石棺を作らなければなりません。 いったい、どれだけの労働者がどれだけの被曝をしなければならないのか気が遠くなります。 質問5 ◎「日米原子力協定」は廃止・改訂する動きはあるのでしょうか? 国内の市民運動の上からフタをしている大きな障害になっていると思うのですがいかがでしょうか? ☆小出裕章氏の回答 日米原子力協定は破棄すべきものと思います。 しかし、破棄したところで、「第16条 3 いかなる理由によるこの協定又はその下での協力の停止又は終了の後においても、第1条、第2条4、第3条から第9条まで、第11条、第12条及ひ第14条の規定は、適用可能な限り引き続き効力を有する」と規定されています。 「日米原子力協定」は全部で16条ですので、ほぼすべての条項が、永続的に効力を停止できずに残ります。 日米安全保障条約も破棄し、日本が米国の属国である状態を抜け出さない限り、原子力の世界でも、日本は米国に支配され続けます。 質問6 ◎福島第一原発事故後、人形峠にウラン鉱床があったことを知りました。小出先生がご研究されていたことも知った次第です。(中略) 海外(米国)に持ち出された?!日本の原発の廃棄物と廃炉のゴミ、どうお考えでしょうか。(中略) 最近もロシアでは、原子力推進のミサイル事故や、船に原発を乗せるというニュースが流れています。世界レベルでの核利用拡大、どうしたものでしょうか。 ☆小出裕章氏の回答 かつて日本では岡山県と鳥取県の県境にある人形峠でウランを採掘したことがありました。 10年近い試掘を繰り返し、総量で85トンのウランが取り出されました。 100万キロワットの原発の場合、1年間運転するためには約180トンの天然ウランが必要ですので、1基の原発を半年運転するにも足りない量でしかありませんでした。 そして、人形峠のウラン鉱山は、品位が低すぎて採算に合わないということで閉山されました。 しかし、1988年になって、鉱山周辺に残土と呼ばれるウラン混じりの汚染土が43万立米も環境に野ざらしで捨てられていることが発覚しました。 住民の長い闘いでそのうちの290立米分は、国が撤去するという判決が最高裁で確定しました。 その裁判の過程で、国は撤去しろと言われても持って行き先がないと言ってきたのですが、最終的にそれを米国先住民の土地にあるWhite Mesa製錬所に持って行きました。 国は商業的な取引だと言いましたが、製錬されて取り出されるウランはせいぜい100万円程度の価値しかありませんし、人形峠からWhiteMesaまでの輸送費用はたしか6億円を超えていました。 日本がやったことは自国では処分できないごみを他国に捨てに行ったということです。 もともと、原子力をやってしまえば、核分裂生成物と呼ばれる放射性物質を作ってしまいます。 人間には放射能を消す力がありません。 自分で始末できない毒物を生む行為は、ただそれだけの理由で禁じられるべきと私は思います。 質問7 ◎たんぽぽ舎アドバイザーの槌田敦先生は、福島第一原発の3・4号機は水素爆発ではなく、臨界事故だと仰られています。アメリカのサンディエゴで「硫黄35」が検出された事等がその理由です。(塩水+中性子→硫黄35)小出先生のご見解を伺いたいと存じます。 ☆小出裕章氏の回答 槌田さんの臨界事故説には賛同できません。 4号機に関しては使用済み燃料プールに沈んでいた燃料が取り出され、共用燃料プールに移されました。 もし、臨界事故が起きていたとすれば、燃料が大きく破損したはずで、容易に確認できますし、おそらく移動すらできなかったはずです。 東京電力がすべてを隠しているというのであれば、ありえますが、そこまで隠ぺいすることはできないだろうと私は思います。 3号機については、核爆発説を唱える人がいて、それを完全に否定する根拠を私は持っていません。 ただ、3号機の爆発が1号機に比べて大きかったのは、格納容器底部に落ちた熔融炉心と格納容器床の反応で発生した爆発性のガスが加わったためだろうと私は思います。 硫黄35が米国で検出されたとのデータについては、聞いたことがある程度で、数値をきちんと確認していません。 でも、塩水に中性子が当たってできるとの説は、量的に無理だろうと思います。 そして、私は今この議論の結論を出すことに、あまり興味がありません。 臨界事故であったかどうかは、3号機の使用済み燃料プールから燃料を移動させる作業が始まれば、自動的に決着するからです。 質問8 ◎再生可能エネルギーについて 1.どの位、頼っていいのでしょうか? 2.デメリットはないのでしょうか? ☆小出裕章氏の回答 石炭、石油、天然ガス、そしてウランも、地球が46億年の歳月をかけて地殻に濃縮して来た資源です。 でもそれらは掘ってきて使えばなくなってしまう資源です。 それを再生不能エネルギー資源と言います。 使えばなくなる以上、いずれ枯渇してしまいます。 そのため、人類が今後もエネルギーを必要とするのであれば、再生可能エネルギー資源に移行する以外にありません。 再生可能エネルギー資源は基本的に太陽エネルギーです。 太陽は、地球上の再生不能エネルギー資源の総量の10倍以上のエネルギーを1年ごとに、地球に届けてくれています。 ただし、それは人間のために届けてくれているのではなく、地球の生態系の全てもそれに依存しています。 人間が勝手にいくらでも使っていいというものではありません。 問題はすでに人間がエネルギーを大量に浪費しすぎていて、生態系を破壊していることです。 際限のないエネルギー消費の拡大ではなく、エネルギー消費を抑制しながら、再生可能エネルギー資源に移行していく必要があります。 質問9 ◎タンクに回収されなかった汚染水は、どのような経路で毎月どれくらいの量が港湾から海へ流出していますか? (後略) ☆小出裕章氏の回答 申し訳ありませんが、正確なデータを持っておりません。 また、申し訳ありませんが、今現在、正確な情報を入手するだけの余裕がありません。 |
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